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脊髄損傷後の便秘はなぜ起こるのか

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷後に生じる排便の問題
排便のメカニズム
脊髄損傷後の排便トラブルへの対処法


脊髄損傷後の方の長期にわたる問題のひとつに便秘があります。
損傷される神経のレベルにより、排便を適切にコントロールできなくなることが原因です。
放置しておくと身体面だけでなく精神面でも不調の原因となるので、計画的に排便を促進する排便管理プログラムを個人の状態に応じて検討することが大切です。
ただし、場合によっては人工肛門が必要になることもあります。

脊髄損傷後に生じる排便の問題

脊髄損傷後の便秘について
脊髄損傷後は、排便に関係する問題を引き起こす可能性があります。
ここではまず排便のメカニズムを説明した上で、なぜ脊髄損傷で排便に関するトラブルが生じるのかについて、ご説明します。

わたしたちの排便のメカニズム

わたしたちの胃と小腸は、食べたものから栄養分を吸収しています。
吸収した栄養分はわたしたちにエネルギーを与えてくれますが、吸収されなかった残りは、体にとって不要な老廃物となります。
この老廃物は大腸から直腸にかけて便になり、肛門から体外に排出されます。
便が体内を通過して体外に出る過程は、「腸の蠕動運動」として知られています。
この運動をわたしたちは無意識に行っていますが、主に自律神経が関与しています。
排便する際、わたしたちは便意を感じ、意識して肛門括約筋を緩め、腹筋や骨盤の筋肉を収縮させて腹部の圧力をあげ、便を排出しています。
なお便を排出するのが困難となる状態は「便秘」、また便を出すタイミングをコントロールできなくなる状態は「便失禁」と呼ばれています。

脊髄損傷後、なぜ排便に関するトラブルが生じるのか

脊髄損傷を起こすと、直腸、肛門括約筋、骨盤底の筋肉のコントロールが困難になることがあります。
コントロールがうまくできなくなる程度は、損傷の重症度や損傷を受けたレベルに関係しています。
脊髄損傷の発生レベルが下部胸椎であるT11/T12レベル以上であれば、肛門括約筋と骨盤底筋が過度に収縮してしまい、便秘になる可能性があります。
逆に脊髄損傷がT11/T12レベル以下であれば、これらの筋肉が弛緩してしまうことがあり、便失禁の原因となります。

脊髄損傷後の排便トラブルへの対処法

脊髄損傷後は、計画的に排便をコントロールする必要があります。続けて脊髄損傷後の排便トラブルへの対処法を説明します。

排便管理プログラム

排便管理プログラムは、排便をコントロールするのに役立ちます。
腸管管理プログラムとは、規則的な排便ができるように身体を再教育する行動計画ですが、個人の健康状態や生活習慣、腸の状態などに応じて、個別に考える必要があります。
排便管理プログラムの目標は、毎日または一日おきに便を出すこと、また予定外の排便を防ぐことにあります。
そのため、できる限り毎日同じような量の排便ができ、残便を解消できるように、食事のタイミング、内容や量などを考えていきます。
そのほかにも薬を使ったり、排便を介助する方法を選択したりすることもあります。
まず腸の健康には、良質な食事と十分な水分の摂取が重要です。
また、便を柔らかくする薬や腸を刺激して排便を促す薬を併用することもあります。場合によっては浣腸も併用します。
ただし、薬になかには便秘を引き起こすものがありますので、注意が必要です。
特に筋肉のけいれんを抑えるため、またはうつ病の治療のために服用する薬のなかには、便秘の原因となるものもあります。
したがって排便管理プログラムがうまく進まないときには、薬を見直すことも大切です。
排便を促し、直腸を空にするために、介護者の助けを借りて排便を介助する方法があります。
例えば指先を直腸/肛門の周囲で小さく、優しく、円を描くように動かすと、直腸/肛門の反射が刺激されます。
これでもうまくいかないときには、介助者の指を直腸内に差し込み、便をかき出します。

腸管プログラムの効果がない場合

全身状態が悪いために、腸管プログラムを実行できない人もいます。また、プログラムの効果が十分に認められない人もいます。
この場合、人工肛門が良い選択肢となるケースもあります。
腹壁に造設する人工肛門は、大腸が外部につながる窓口です。
この穴には袋が取り付けられ、便は直腸を通らず袋の中に入ります。
そして定期的にバッグを交換します。
人工肛門を造設した人の多くは、そのまま継続して使用することを望むことが一般的です。
それは、人工肛門を利用することで良好な排便を促し、、便失禁や予定外の排便を防ぐことができ、自分自身や介護者の負担を減らすことができるからです。
また精神的なストレスも軽減されるため、外にでて積極的に活動できるようになります。
場合によっては、直腸や人工肛門から逆行性にカテーテルを入れ、ぬるま湯を注入して腸内を洗うこともあります。
定期的に洗腸することで、想定外の排便を防ぐことが期待できます。

自律神経過反射について

自律神経過反射とは、第6胸椎(T6)レベル以上の脊髄損傷者において、心拍数の低下に伴う血圧の危険な上昇を伴う危険な状態です。
放置すると、脳卒中をはじめ、重篤な健康問題につながる可能性があります。
この過反射は、身体への刺激に対して過剰に反応してしまう状態ですが、排便管理の手技を行うことで誘発されることがあります。
したがって処置をするときは、全身状態を注意深く観察しておく必要があります。

まとめ

脊髄損傷後の便秘は、普段普通にできていたことができなくなることから、自尊心の低下を招き、生活の質を低下させる可能性があります。
しかし計画的に管理することで、ある程度は改善が期待できるものでもあります。
主治医ともよく相談の上、対応をご検討ください。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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