この記事を読んでわかること
・脊髄が梗塞するとは
・脊髄梗塞の症状
・脊髄梗塞の予後について
皆さんは脊髄梗塞という病気を聞いたことがあるでしょうか?
この記事では脊髄梗塞に特徴的な症状から診断方法や治療方法に至るまでわかりやすく解説いたします。
脊髄が梗塞するってどういうことか?
脊髄梗塞とは脊髄に酸素を運ぶ血液が途絶えてしまう虚血という状態になってしまうことで起きます。
神経の通り道である脊髄は血液の流入が限られているので、虚血に対してとてもダメージを受けやすく、急激に症状が現れてしまいます。
脊髄梗塞の症状
脊髄梗塞の症状は主に、突然の背中の痛みとそれに伴う両側の筋肉の弛緩と感覚障害です。
これらについて詳しく説明してみましょう。
突然の背中の痛み
一般的に脊髄梗塞の症状は突然の背中の痛みから始まります。
突然の症状というのは血管が詰まったり破裂してしまうような病気の特徴で、脊髄梗塞の場合には突然脊髄を栄養する動脈に何らかの障害が生じて、突然の痛みの発生となります。
背中に生じる痛みは肩など周囲に広がるという特徴もあります。
両側の手足の筋肉の弛緩
突然の背中の痛みから約数分以内というとても早い経過で両方の手足に力が入らない弛緩という状態になってしまいます。
両側の感覚がなくなる
さらに、脊髄を通して身体から脳へと身体の感覚を伝える経路も障害されてしまうので、両方の感覚が障害されてしまいます。
脊髄梗塞の感覚障害の特徴としては、温度や痛みを伝える神経経路が主に障害される一方で、触れている感覚や振動を感じる感覚、また、手足がどこにあるのかという位置感覚を伝える経路は比較的保たれている「解離性感覚障害」という状態になります。
脊髄梗塞の原因とは?
脊髄梗塞の原因には様々なものがありますが、ここでは身体の構造に従って原因を分類してみましょう。
脊髄に血液を運ぶ動脈は脊髄動脈、大動脈や分岐した栄養動脈などがあげられます。
大きく脊髄動脈と大動脈及び栄養動脈に原因を分類してまとめてみましょう。
脊髄動脈の疾患
脊髄は前と後の2方向から血液の供給を受けています。
それぞれを前脊髄動脈、後脊髄動脈と言います。
前脊髄動脈は脊髄の前方3分の2を栄養し、後脊髄動脈は脊髄の後方3分の1を栄養しています。
大動脈や栄養動脈の損傷
大動脈や栄養動脈は脊柱管を栄養する動脈です。
大動脈の動脈硬化や大動脈解離などによってこれらの血管に何らかの損傷をきたしてしまうと、脊髄の組織が虚血状態になってしまい、脊髄梗塞が起きてしいます。
また、中には手術中の手技によりこれらの動脈が損傷してしまうことが原因となることもあります。
脊髄梗塞の発生頻度
さて、脊髄梗塞について説明してきましたが、この病気はどれくらいの頻度で起きてしまうのでしょうか?
実は脊髄梗塞は比較的稀な疾患と言われています。
普段よく耳にする脳卒中と比較するとその頻度は1/50から1/100程度ではないかとも研究されています。
このように脊髄梗塞は稀な疾患であることは診断や治療に大きく関わってきます。
脊髄梗塞の診断方法
さて、脊髄梗塞の診断は主に神経学的診察所見やMRIや髄液検査を用いて行われます。
脊髄梗塞の症状で説明した解離性感覚障害のある患者さんなどが典型的で、MRIでは拡散強調像やT2強調像で脊髄の前半分にて梗塞を示す白く高信号の領域があると診断に繋がります。
また、脊髄梗塞に対する鑑別疾患としては脊髄動静脈奇形、脱髄疾患、脊髄炎、転移性硬膜外腫瘍などがあり、これらとの鑑別をするためにも神経学的診察や髄液検査、MRIが重要なのです。
脊髄梗塞の治療方法
比較的稀な病気である脊髄梗塞の中には、原因不明で発生するものもまだ多く、明確な治療方針は定められていません。
一方で、脊髄梗塞の発生した原因が明らかな場合、例えば、大動脈解離や結節性多発動脈炎などの脊髄へと血液を運ぶ大血管から中血管の病態に起因して脊髄の梗塞が生じた場合には、その原因に対する治療がメインとなります。
一方で、そのような治療可能な原因となる病態がない場合には、支持療法が唯一可能な検査となります。
脊髄梗塞の予後について
最後に脊髄梗塞になってしまった後の予後については、麻痺などの症状が重度である場合や長い間持続してしまう場合には、身体の活動の予後としてはあまり良くありません。
一方で、発症してから比較的早期(1〜2日以内)に改善する場合には身体の運動が比較的よくなることが知られています。
まとめ
この記事では脊髄梗塞の症状の経過や診断方法、治療方法などについてまとめました。
記事の中でも触れたように、脊髄梗塞は比較的稀な疾患で、明確な治療方法が確立している病気ではありません。
また、急激な背中の痛みは脊髄梗塞かどうかに関わらず、とても危険な状態にあるという身体からの信号です。
そんな痛みを感じた時には、すぐにお近くの医療機関に連絡するようにしましょう。
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