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脳梗塞とまぶたの痙攣

           

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この記事を読んでわかること

脳梗塞後と目に関する症状
脳梗塞とまぶたの異常
眼瞼痙攣の治療


脳梗塞は、運動や感覚の麻痺を起こすだけでなく、目に関係する障害を起こすこともあります。
視野、眼球運動、視覚の障害が一般的に見られる障害ですが、ときにまぶたの動きに影響を与えることもあります。
まぶたの痙攣(眼瞼痙攣)もそのひとつです。
眼瞼痙攣の原因ははっきりとはわかりませんが、大脳基底核が関係している可能性が示唆されています。

脳梗塞後にみられることがある目に関する症状

脳梗塞後にみられることがある目に関する症状
脳梗塞を起こすと、目の機能に影響を与える可能性があります。
まず、よくみられる目に関する障害について、3つご紹介します。

視野欠損

梗塞後の視力が影響を受ける場合、最もよくみられる障害は、視野の一部または全部が失われることです。
視野とは、目を一カ所に固定したときに見える領域全体を表します。
半盲症は、視野の半分が欠けている状態です。
これは両目の視野の中心から左右のどちらかが見えないということです。
例えば、脳の右側が脳梗塞によって障害を受けた場合、両目の左側の視野が侵される可能性があります。
半盲症はすべての視力に影響を与えるわけではありませんが、日常生活において、物の位置が確認できない、人混みで方向感覚を失うなどの問題が生じる可能性があります。

眼球運動の障害

脳梗塞によって、目の動きをコントロールする神経が損傷を受けると、両目が一対として働かなくなることがあります。
これにより、視界がぼやけたり、焦点を合わせたりすることが難しくなります(複視)。
また目で物を追ったり(追視)、物から物へ素早く視線を移したりすることが難しくなることもあります。

視覚障害

脳梗塞の後、視覚情報の処理や見たものを理解する能力に問題が生じることがあります。
最も一般的な視覚処理の問題は、空間的不注意とも呼ばれる症状で、片側にある物に気付かず、周囲の物の知覚に影響を与えることがあります。
この症状は、視野欠損があるときに起こることもありますが、単独で起こることもあります。
体の片側全体がわからなくなることもあります。
片方の皿の食べ物を無視したり、片方の顔のひげを剃ったり、化粧をするのを忘れたりすることもあります。

目の下の痙攣と脳腫瘍の関連性

目の下の痙攣は、様々な原因で起こりますが、その一つに脳腫瘍が挙げられます。
脳腫瘍が脳の特定部位を刺激し、無秩序な電気信号が発生することで、眼瞼や顔面の筋肉が痙攣を起こすことがあります。
しかし、目の下の痙攣の原因として、脳腫瘍は非常にまれであり、通常は眼精疲労、ストレス、カフェインの過剰摂取、ミネラル不足などが原因であることが多いです。
脳腫瘍が原因の場合、目の下の痙攣だけでなく、頭痛、嘔吐、視力障害などの他の症状を伴うことがあります。

脳梗塞とまぶたの異常

脳梗塞に伴い、まぶたに異常が生じることもあります。

まぶたの運動障害

脳梗塞後にまぶたの動きが障害されることがあります。
特にドライアイを伴うような場合、まぶたを動かす神経、顔面神経、まぶたの筋肉が障害を受けている可能性があります。
脳梗塞後は、まばたきの速度が遅くなったり、まぶたを完全に閉じることができなくなったりすることがあります。
まばたきや目を完全に閉じることができないと、目の表面にある角膜の一部が乾燥し、目がゴロゴロして不快に感じられることがあります。
これがドライアイです。

眼瞼痙攣

そもそも眼瞼痙攣は、まぶたの筋肉が不随意に収縮してしまい、ときにまぶたが閉じてしまう病気です。
眼瞼痙攣の原因はよくわかっていませんが、脳の大脳基底核の機能異常が原因である可能性が指摘されています。
なお大脳基底核は、認知や感情に関係するだけでなく、運動の開始と継続を調節する役割を果たしています。
ストレスや疲れ、睡眠不足に伴い、眼瞼痙攣が悪化することもあります。
また、稀に脳梗塞後に眼瞼痙攣を発症することが報告されています。
例えば脳梗塞後に眼瞼痙攣が発生した報告があります。
もともとは両側の視床の梗塞に伴い、麻痺と言語障害を発症していた患者です。
しかし、その後これらの症状に加えて、重度の眼瞼痙攣と眼球運動の麻痺が認められるようになりました。
色々と検討した結果、眼瞼痙攣は視床内核と背内側核の病変に起因するであろうと結論づけられていました。

(出典:Awada A. Blepharospasm caused by bilateral paramedian thalamic infarction. Rev Neurol (Paris). 1997 Feb;153(1):62-4 Abstractのみ)

もうひとつ興味深い報告があります。
14年間も眼瞼痙攣に悩まされた女性が、脳梗塞のためにレンズ核と呼ばれる部位の機能を失った結果、眼瞼痙攣が改善したというものです。
このことから、眼瞼痙攣にレンズ核が関係している可能性も示唆されています。

(出典:Bladen JC, et al. Stroke-induced resolution of primary blepharospasm: evidence for the lenticular nucleus as a control candidate. BMJ Case Rep. 2018;2018:bcr2018224339. doi: 10.1136/bcr-2018-224339)

このように、まだ完全に因果関係は解明されてはいないものの、脳梗塞によって眼瞼痙攣や顔面の痙攣が生じることは、事実として発生していると言えます。

眼瞼ミオキミアと顔面痙攣の違い

眼瞼ミオキミアと顔面痙攣は、どちらも目の周りの筋肉が痙攣する症状ですが、その原因や症状、治療法が異なります。

眼瞼ミオキミア:
まぶたの周りで一時的に起こる軽度の痙攣で、ストレスや疲労、眼精疲労、カフェインの過剰摂取、ミネラル不足などが原因となることが多いです。
通常、数日から数週間で自然に治まります。

顔面痙攣:
顔全体に広がり、徐々に悪化する痙攣で、脳内で顔面神経が血管などによって圧迫されることが主な原因です。
ボツリヌス毒素注射などの治療が必要となる場合があります。

眼瞼痙攣の治療

最後に、眼瞼痙攣の治療についてご紹介しておきます。
眼瞼痙攣の治療には、通常内服薬、ボツリヌス毒素の注射、手術の3種類があります。
このうちボツリヌス毒素の注射は、神経からの信号をブロックして筋肉を麻痺させる作用のあるボツリヌス菌の毒素を利用しています。
ボツリヌス毒素を、目を閉じる筋肉の力を弱めるために利用しており、この注射を行うことで、眼瞼痙攣の患者さんは目をより自由に開けることができるようになります。
これはボトックス注射と呼ばれ、日本でも受けることができる治療です。

脳梗塞とまぶたの痙攣についてのまとめ

脳梗塞後の目に関する問題について、視野、眼球運動、視覚に加え、まぶたの障害についてご説明しました。
私たちは視覚情報に大きく頼って生活しています。
できる限りこのような障害が発生しないように、脳梗塞の予防に努めたいですし、発症したとしても早期に治療を開始することができるよう、些細な症状であっても医療機関を受診するようにしたいものです。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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