この記事を読んでわかること
・一過性脳虚血発作について
・一体どんな状態なのか
・ある程度予防するためのポイント
みなさんは「一過性脳虚血発作」をご存じでしょうか。
脳梗塞の一歩手前の状態であり、早急に対処する必要があります。
生活習慣の改善で対処できるものから、さらに複雑な原因が潜んでいることもあるのです。
繰り返すめまいやふらつき、肩こりに悩まされていないでしょうか。
実はその症状、一過性脳虚血発作であるかもしれません。
この記事で一過性脳虚血発作を知り、最悪の事態を未然に防ぎましょう!
1)この記事で紹介する症状は一過性脳虚血発作に限定されるものではありません。
他の疾患が潜んでいる可能性も考えられます。
症状に心当たりがある場合は、速やかに医療機関へ受診してください。
2)この記事で紹介する予防法で、一過性脳虚血発作を100%防ぐことはできません。
医療機関での、定期的な検査と併せて行いましょう。
一過性脳虚血発作の主な症状
一過性脳虚血発作は「いっかせい のう きょけつ ほっさ」と読みます。
TIA(Transient Ischemic Attack)と呼ばれることもあります。
普段あまり耳にしない言葉かと思います。
一過性脳虚血発作はなぜ起きるのか、進行するとどうなってしまうのか、ここで確認していきましょう。
一過性脳虚血発作の原因とメカニズムを解説
一過性脳虚血発作は脳梗塞の一歩手前の状態であり、原因は大きく2つあります。
❶ 小さい塞栓
小さい塞栓(血液や脂肪などの塊)により脳や眼、脊髄の血管が詰まることで、さまざまな症状を引き起こします。
しかし塞栓は小さいため、線溶系など体の防御反応により溶かされ、血管のつまりが解消されます。
塞栓ができる原因は解決していないために、また塞栓ができる…を繰り返している状態なのです。
塞栓ができる原因とは
生活習慣病や先天性疾患が原因となります。
具体的には
- 高血圧症
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 喫煙
- もやもや病
- 血液凝固異常症 など
❷ 低血圧
血圧とは、血液を細部まで届けるために血管にかかる圧力のことです。
著しい低血圧であれば、血液を届ける力が非常に弱いので、血が足りない状態(虚血発作)となります。
血圧は一定ではありませんので、虚血発作を繰り返す状態となります。
低血圧になる原因とは
- 心疾患
- 肺疾患
- 自律神経障害
- 大量出血
- 脱水 など
従って、塞栓ができる原因、低血圧になる原因はそれぞれ一過性脳虚血発作の危険なリスクになるのです。
「自分は大丈夫」は最も危険!
「脳梗塞の危険はあるけど、まだ大丈夫でしょ!時間があるときに病院に行けばいいや」なんて思っていませんか?
ここでは一過性脳虚血発作を放置すると、どんな結果になってしまうのか見ていきましょう。
❸ 辛すぎる後遺症
一過性脳虚血発作は、脳梗塞やクモ膜下出血に進展する危険性があります。
脳梗塞などで脳が障害されると、障害された部位により様々な後遺症があなたを苦しめるかもしれません。
代表的な後遺症
- 運動障害(麻痺、痙攣、拘縮、嚥下障害など)
- 感覚障害(しびれ、痛みなど)
- 高次脳機能障害(認知症、失語症、空間無視、記憶障害など)
- 視野障害
- 排泄障害
- うつ状態
一過性脳虚血発作が進展してしまうと、生涯これらの後遺症に苦しむことになるかもしれません。
「自分はまだ大丈夫」ではなく「自分はもう一歩手前まできている」のです。
脳虚血発作の再発リスクを減らすためのポイント
一過性脳虚血発作(TIA)の再発リスクを減らすために、生活習慣の改善が非常に重要です。
禁煙、減塩食、アルコールの制限、体重管理に加え、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの基礎疾患をしっかり管理することが大切です。
これらの生活習慣の改善によって、脳への血流を安定させ、発作の予防に繋がります。
また、医師の指導に基づいた薬物療法も重要です。抗血小板薬や抗凝固薬などの薬剤が、血栓の形成を防ぎ、再発のリスクを減らす効果があります。
定期的に医師の診察を受け、血圧、血糖値、コレステロール値などを測定し、必要に応じて薬の調整を行うことが重要です。
さらに、頸動脈エコーや心電図などの検査を定期的に受けることで、早期に病気を発見し、適切な治療を行うことができます。
脳虚血発作と脳梗塞を見分けるポイント
一過性脳虚血発作とはどのような疾患かお分かりいただけたと思います。
一過性脳虚血発作の症状は、脳の虚血部位により片側もしくは両側に現れます。
片側だけ症状が出現している場合でも、反対側に症状が移動することもあります。
また一過性ですので、典型的には短時間(2〜15分)で症状が改善されます。
一過性脳虚血発作の症状
それでは、一過性脳虚血発作にはどんな症状があるのか、そしてあなたに当てはまる症状はないか確認しましょう。
- 視力消失(一過性黒内障)同名性半盲(両目の同じ側が見えなくなる)
- 顔面や上下肢の脱力・麻痺・しびれ
- 失語(話す、聞く、読み書きが上手く行えなくなる)
- 嚥下障害
- めまい、ふらつき
- 肩こり
- 意識消失
以上のような症状にお悩みの方は要注意です。
めまい、ふらつき、肩こりには要注意!
一過性脳虚血発作には放置されがちな症状もあります。
それがめまいやふらつき、肩こりです。
ストレスや疲労が原因だと思われることが多く放置されやすい症状です。
基本的に一過性脳虚血発作は短時間で改善されるため、めまいやふらつき、肩こりが短時間で消失するならば、すぐに医療機関へ受診しましょう。
また短時間で改善するというのは、典型的な場合ですから、少し前と比べてめまいやふらつき、肩こりに悩まされるようになった場合も医療機関の受診を勧めます。
検査の結果、一過性脳虚血発作でなくとも、他の疾患が潜んでいる可能性もあるので1つ1つの症状に疑問を持つことが大切です。
数分の意識消失は異常です!
一過性脳虚血発作の中でも、意識消失が起きる場合は非常に危険です。
多くの場合、一過性脳虚血発作で意識消失が起こることはありません。
しかし脳や眼、脊髄の血管の詰まりが強いと短時間(一過性)でも意識消失することがあります。
また、血管が完全に詰まる脳梗塞では意識消失がみられます。
従って短時間の意識消失がある場合、脳梗塞に近いレベルの一過性脳虚血発作である可能性があるのです。
この場合いつ脳梗塞になってもおかしくない状態です。
あなた自身または周囲の人が、短時間でも意識が消失した時にはすぐに救急車を呼び対応してもらいましょう。
20代でも起こりうる!?若年性脳梗塞とは
脳梗塞は、高齢者の疾患というイメージありませんか?
実は一般的なイメージとは反対に、若い方でも起こりうる疾患なのです。
ですから若い方も他人事とは思わず、一過性脳虚血発作に注意する必要があります。
最近は生活習慣が乱れている若者が多いです。
そのような背景が若年性脳梗塞のリスクを高めます。
また先天的な疾患が原因となることがあるため、今までに以下の先天的疾患を指摘された方は、定期的に医療機関で調べてもらいましょう。
- 血管の壁が弱い(動脈壁の一部「中膜」の形成不全などによる動脈乖離が原因となります)
- 血管攣縮(血管が痙攣し血液の通り道が狭くなった状態です。頭痛持ち「片頭痛」は血管攣縮で起こるともいわれているため、注意が必要です)
- 凝固異常症(血が固まりやすい状態で血管内に血栓ができやすくなっています。ピル服用でも血栓ができやすくなるといわれています)
- 卵円孔開存症
TIAを予防!食事で気を付けるべき3つのポイント
一過性脳虚血発作は生活習慣の乱れが原因となることもあります。
ですから運動や食事に気を付けることで、ある程度予防することができるのです。
特に食事面では以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 寝る2時間前からは食事を取らない(食後まもなく睡眠に入ると、食事で得たエネルギーが脂肪として貯蔵され肥満や脂質異常症のリスクを高めます)
- ビタミン・食物繊維を十分にとる(体の調子を整え、老廃物や余剰な脂質・糖分などを排出してくれます)
- 動物性脂肪・糖分、塩分を摂りすぎない(健康診断や人間ドックを受け、自己管理していくことが重要です)
一過性脳虚血発作(TIA)についてのまとめ
今回は普段あまり耳にすることのない一過性脳虚血発作(TIA)について解説しました。
TIAは脳梗塞の一歩手前です。
今回紹介した症状に当てはまるものがあれば、非常に危険な状態かもしれません。
また日常の何気ない症状が実は、危険信号である可能性もあります。
一過性脳虚血発作に関していえば「短時間で改善する症状」がキーワードになります。
しかし症状は常に決まった型を取るわけではありませんし、他の疾患が潜んでいる可能性もあります。
気になる症状があれば、自己判断せず早めの受診を心がけましょう。
よくあるご質問
一過性脳虚血発作ってどんな症状?
手足や顔面の運動障害や感覚障害、言葉がしゃべりくにいなど、脳梗塞と同じ症状を呈します。
症状が持続する時間は5-10分程度が多く、ほとんどは1時間以内であると報告されています。
一過性虚血症の原因は?
塞栓性:頸動脈などにできた血栓が末梢血管に詰まり神経脱落症状を呈し、血栓が解けると症状が消失します。
血行力学性:脳の主幹動脈に閉塞がもともとあり、一時的な血圧低下などで脳血流が低下し症状を呈します。
心原性塞栓性:心房細動や弁膜症などが原因で心臓内に血栓が生じ、それが脳血管に詰まり症状を呈します。
<参照元>
・日本医科大学第2内 科学教室 山手昌二
「一過性脳虚血発作の病態に関する研究」とくに脳血流動態の面よりの検索
日医大誌 第37巻 第1号(1970)
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