この記事を読んでわかること
・虫歯ができるメカニズムがわかる
・虫歯によって脳梗塞が生じるメカニズムがわかる
・虫歯による脳梗塞の予防法がわかる
甘いものをたくさん摂取したり、不十分な口腔ケアを継続すると、口腔内の虫歯菌が酸を分泌して虫歯を発症します。
口の中だけの病気を思われがちですが、実は虫歯が進行すると全身の血管に悪さをして、脳梗塞の発症リスクを高めることが知られています。
この記事では、虫歯と脳梗塞の関係性やその予防方法について詳しく解説します。
虫歯を放置すると脳梗塞リスクが高まる理由
虫歯は多くの方が経験する病気の1つであり、簡単に治療できるからか、つい軽視されがちな病気でもありますが、放置するとさまざまな重症疾患を招く可能性があり、決して侮れません。
そもそも虫歯とは、「ミュータンス連鎖球菌」などの口腔内常在菌が口腔内の糖分を栄養にして増殖し、糖分から作り出した乳酸を周囲に分泌することで歯が溶けてしまう病気です。
「甘いものを食べると虫歯になる」と言われる理由もこのためです。
歯は表層をエナメル質で覆われ、その内側に象牙質、そのさらに内側に神経が存在していますが、ミュータンス連鎖球菌の分泌する乳酸でエナメル質に穴が空いた状態を「虫歯」と呼びます。
その後、虫歯はエナメル質を超えて象牙質、さらに神経に到達し、神経が障害されることで激しい痛みが出現します。
やがて神経が障害されると虫歯菌は血管に侵入し、そうなると全身に広がって炎症を引き起こし、これが虫歯による脳梗塞の原因です。
実際に、Senらの報告によれば、1つ以上の虫歯がある人は、脳卒中のリスクが約40%高くなることが示されています。
口腔内の細菌が血管を傷つける!脳梗塞リスクを高めるメカニズム
では、具体的に虫歯はどのような機序で脳梗塞リスクを高めるのでしょうか?
血管内に侵入した虫歯菌は、その後血流に乗って全身に広がり、血管壁において炎症を引き起こします。
血管における炎症によって血管内皮細胞が損傷すると、血液中を流れるLDLコレステロールが血管内皮細胞の損傷部位から血管壁内に侵入し、血管壁を硬く・脆く変性させ、いわゆる動脈硬化が進展します。
脳の血管でも同じような変性が進み、動脈硬化が進展すると血管内腔が狭くなることで血栓が形成されやすくなり、脳梗塞を発症させるわけです。
虫歯の早期治療で脳梗塞を予防する方法
虫歯菌が血管内に侵入するまで進行すると脳梗塞の発症リスクが上がるため、脳梗塞予防のために重要なことは虫歯を進行させないことであり、虫歯の早期治療が脳梗塞予防の鍵となります。
実際にSenらの報告によれば、定期的な歯科治療を受けている人は、一時的な歯科治療を受けている人と比較して、虚血性脳卒中の発生率が約23%も低下するそうです。
虫歯を進行させないためには、下記のような方法が挙げられます。
- 虫歯菌を減らす
- 虫歯菌の活動性を抑える
- 歯を丈夫にする
虫歯菌を減らすためには、歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシを使って歯に付着した虫歯菌を入念に除去することが重要であり、極力、虫歯菌に糖質を与えないように、食後早期の実施がおすすめです。
また、虫歯菌の活動性を抑えるためには、過剰な糖質の摂取や歯に残りやすいガム・キャンディーなどの摂取は控えましょう。
特に、寝る前にこれらの食事を摂取すると、その後口腔内での舌などの運動が減るため、虫歯菌がより糖質を吸収しやすくなり、活性化しやすい状態となるため、就寝直前の糖質摂取は控えるべきです。
歯を丈夫にするためには、歯が損傷するような硬すぎる食事(せんべいなど)は控え、健康的でバランスの良い食事や、ストレスの少ない生活を送ることで丈夫な歯を作ることができるため、食事内容を十分意識してみると良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、虫歯が脳梗塞を引き起こすメカニズムや、その予防法について詳しく解説しました。
虫歯菌が歯の内部に侵入すると、血管に到達し、全身の血管に炎症を引き起こすことで動脈硬化を進展させます。
長期的な動脈硬化は脳血管における血栓形成を促し、脳梗塞の発症リスクを増加させるため、注意が必要です。
虫歯による脳梗塞を予防するためには、虫歯そのものを予防することが重要で、適切な口腔ケアと、規則正しい食事摂取が何よりも大切です。
一度脳梗塞を発症して嚥下障害や構音障害などの後遺症が残れば、口腔内の運動が減って、より虫歯菌が繁殖しやすい環境が作られてしまい、さらに脳梗塞を再発するリスクが上がってしまいます。
現状では、嚥下障害や構音障害を根治する術はなく、嚥下訓練などのリハビリテーションが唯一の改善策ですが、近年では再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
再生治療によって口腔内の麻痺が改善すれば、歯に付いた虫歯菌を洗い流し、新規の虫歯形成を予防できます。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、虫歯による脳梗塞後の後遺症改善が期待できます。
よくあるご質問
- 口腔ケアで脳梗塞を予防するにはどうしたらいいですか?
- 口腔ケアで脳梗塞を予防するには、脳梗塞の原因となる虫歯菌を歯からしっかり除去する必要があります。
定期的かつ適切な歯磨き、歯科の定期受診など、日常的なケアが必要です。 - 歯周病になると脳梗塞になる理由は?
- 歯周病になると菌が身体の中に侵入しようと歯肉組織を破壊し、炎症を引き起こします。
その際、炎症によって出てくる毒性物質が血管内から全身にわたり、血管の動脈硬化を進展させることで脳梗塞の発症リスクを増大させます。
<参照元>
日本歯科医師会:
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index02.html
AHA/ASA Journal:
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.123.042528
日本歯科医師会:
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index02_02.html
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