この記事を読んでわかること
・脳炎とは
・脳炎にかかると何が起こるのか
・乳幼児の脳炎の症状
脳炎とは、脳に起こる炎症であり、その原因にはウイルスや細菌などの病原体による感染症や自己免疫疾患などがあります。
その症状は発熱や頭痛、全身の筋肉痛や関節痛などインフルエンザのような症状に始まり、意識障害、けいれん、運動や感覚の障害まで進行することがあります。
状況によっては、治療を施しても死に至ることもあります。
脳炎とは?
脳炎とは、脳に起こる炎症のことです。
原因はいくつかあり、ウイルス感染、自己免疫性の炎症、細菌感染、またダニに刺されることが原因になることもあります。
なかには原因がわからないこともあります。
脳炎は、発熱や頭痛など、軽いインフルエンザのような症状を起こすだけで、まったくその他の症状が出ないこともあります。
一方ではインフルエンザのような症状が強く出ることもあります。
それだけでなく、意識レベルの低下、けいれん、または手足の麻痺や視覚や聴覚などの感覚障害を含む、重篤な症状を起こす可能性もあります。
場合によっては、生命を脅かすことがあります。
脳炎がどのように各個人に影響を与えるかを予測することは困難であるため、迅速な診断と治療が重要です。
ウイルス性脳炎と自己免疫性脳炎の違い
脳炎にかかると、どのようなことが起こっているのか、説明をいたします。
ウイルスによる脳炎
ウイルスによる脳炎の場合、ウイルスはヒトからヒトに感染することがあります。
また蚊やダニから感染するタイプのウイルスや、狂犬病ウイルスのように感染した動物に咬まれたり、動物の分泌物に触れたりすることで感染することもあります。
水痘帯状疱疹ウイルスやサイトメガロウイルスなど、一部のウイルスでは免疫不全の状態であって初めて感染し、症状が出現することもあります。
一般的なウイルスによる脳炎では、脳内へウイルスが侵入しますが、侵入口はウイルスによって異なります。
多くの場合、ウイルスは脳外の体内で複製され、血行性に拡散される場合や神経経路に沿った移動によって、脳内に侵入します。
血液脳関門と呼ばれる脳内の関所を通過したウイルスは、神経細胞に侵入することができるようになります。
その結果、細胞機能の破壊、血管周囲のうっ血、出血、脳内に広がる炎症を起こします。
つまり脳細胞や周囲の細胞が傷害を受け、機能を果たすことができなくなってしまいます。
また脳は頭蓋骨に囲まれた空間に脳脊髄液に囲まれた状態で存在していますが、脳炎に伴う炎症により浮腫が起こり、頭蓋内の圧力が異常に上昇してしまうこともあります。
このような状態になることが、脳炎のときにみられる症状と関連しています。
自己免疫疾患による脳炎
自己免疫疾患による脳炎では、病原体そのものが脳細胞に作用しているわけではなく、何らかの原因で活性化された免疫反応が脳炎を引き起こしています。
例えば、感染したウイルスを体内から排除するために活性化された免疫反応が、脳細胞を攻撃してしまうことがあります。
インフルエンザ感染に伴うインフルエンザ脳症が該当します。
この場合、ウイルスに感染した直後に症状が悪化します。
また全身性エリテマトーデス(SLE)と呼ばれる膠原病に伴う脳炎では、自分自身の正常な細胞を攻撃する自己抗体が産生され、この自己抗体の活動が活発になることで、脳細胞が攻撃を受けることが原因となります。
脳炎の症状について
次に、脳炎の症状について説明します。
脳炎の前駆症状
ウイルス性脳炎であれば、まずウイルスが体内に侵入し、体内で複製される過程で熱が出たり、咳や鼻水、また喉が痛くなったり、食欲不振や体の節々が痛くなったりと、軽いインフルエンザのような症状が最初に出ることがあります。
また、下痢や吐き気、嘔吐を引き起こす胃腸炎症状の後に起こることもあります。
そのほかにも一般的な症状として頭痛、筋肉痛、ぐったりした倦怠感なども含まれます。
自己免疫疾患による脳炎であれば、原因となる自己免疫疾患の症状を認めます。
全身性エリテマトーデス(SLE)や血管炎であれば、発疹や関節痛を認めます。
脳炎の症状
ウイルスによる脳細胞への傷害が進むと、手足の麻痺や筋力低下、聴覚や味覚の障害を含む感覚障害を伴うこともあります。
さらに進行すると、意識レベルが低下したり、異常な言動を認めたりすることもあります。
本来見えるはずのないものが見える幻覚が生じることもあります。
また発熱や意識障害に伴って、特に体の一部がけいれんを起こすこともあります。
さらに進行すると、呼吸ができなくなったり、全身の血圧を維持できなくなり、最終的には死に至ることもあります。
乳幼児の脳炎の症状
乳幼児では、以下のような徴候や症状が見られることがあります。
乳幼児でも、発熱や嘔吐などの症状を認めます。
しかし成人とは異なり、乳幼児では頭痛などの症状を訴えることができません。
そのかわり、不機嫌や光や音の刺激に敏感に反応して激しく泣くといった症状がみられます。
またミルクの飲みが著しく低下し、通常の哺乳時間に目覚めなくなります。
また頭蓋内の圧が上昇すると、大泉門の膨張がみられます。
大泉門は1歳くらいまでの乳児の前頭部に存在する、菱形をした柔らかい部分です。
乳幼児でも進行すると意識レベルが低下し、けいれんや麻痺を認めるようになります。
脳炎の診断と治療方法
脳炎の診断には、髄液検査や頭部のMRIやCTスキャン、血液検査などが使われ、原因を特定するための詳細な検査が行われます。
治療には、ウイルス性脳炎であれば抗ウイルス薬(アシクロビルなど)が使用され、自己免疫性脳炎の場合には免疫抑制薬やステロイド療法が行われます。
重症例では、集中治療が必要であり、人工呼吸器のサポートが必要な場合もあります。早期の治療開始が回復の鍵です。
脳炎の症状についてのまとめ
脳炎について、またその症状について少し詳しく説明しました。
脳炎は、疑えば早めに医療機関を受診すべき病気のひとつです。
治療が難しい場合もありますが、早期に治療を開始することで、少しでも予後が改善されることが期待できます。
今回の記事が、脳炎に対する理解を深める一助となれば幸いです。
よくあるご質問
脳炎の初期症状は?
発症したばかりでは発熱、頭痛が多く、ただの風邪と思われることもあります。そして、意識障害、けいれん、中には異常行動や幻覚、妄想、片麻痺(左右の一方の手足が動きにくくなる)、など、脳炎に特徴的な症状が出現します。
脳炎の死亡率は?
日本で2007〜2018年に行われた調査では、急性脳炎のうち約4%(217/5302人)が死亡していました。死亡した中で最も多い原因はA型インフルエンザウイルスの51人でした。
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