この記事を読んでわかること
・大脳皮質基底核変性症の原因がわかる
・大脳皮質基底核変性症の症状がわかる
・大脳皮質基底核変性症の治療法とその効果がわかる
大脳皮質基底核変性症とは、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などと同様に、神経細胞が変性してさまざまな症状をきたす疾患です。
大脳皮質と大脳基底核が進行性に変性・障害されていくため、少しでも早期発見・早期治療が肝要です。
そこで、この記事では大脳皮質基底核変性症の原因や症状・治療について詳しく解説します。
大脳皮質基底核変性症の原因と予兆
大脳皮質基底核変性症とは、その名の通り大脳皮質と大脳基底核に変性が生じることでさまざまな神経症状をきたす疾患です。
神経細胞内に異常リン酸化タウが蓄積することで、その神経細胞が担う機能が障害されることが知られています。
日本国内には人口10万人当たり3.5人程度の発症者がいると推察され、非常に稀な疾患です。
また発症者に男女差はなく、40〜80歳代での発症が多いです。
異常リン酸化タウの蓄積が原因ではありますが、なぜそのような変性が生じてしまうのかの原因は現在でも解明されていません。
また大多数は遺伝的要因を認めずに孤発性で発症しますが、実は診断も難しい病気であるため、遺伝子解析も困難な状況にあります。
最近では遺伝子解析の技術の向上によって「C9orf72」と呼ばれる遺伝子発現が発症に関与していると報告されており、今後さらなる原因究明が期待されます。
ではどのような症状をきたすのでしょうか?
典型的には、最初に大脳皮質が障害されることで失行や運動の遅さを自覚することが多いです。
失行とは、麻痺を認めないにも関わらず、なんらかの行動や作業が行えなくなることを指し、大脳皮質基底核変性症ではまず片方の腕が思うように使えなくなります。
その後、失行症状は左右同側の下肢→左右反対の上肢・下肢にも広がり、思ったように体が動かせなくなります。
他にも、大脳皮質では言語の理解・空間把握・記憶・情動などを司っており、これらが同時に障害されることで、失語症・半側空間無視・認知症・行動異常など、いわゆる高次脳機能障害を併発することがあるため、注意が必要です。
次に、大脳基底核は随意運動をよりスムーズにさせることが主な機能であり、障害を受けることで運動がぎこちなくなったり、振戦が起こります。
他にも、腕がビクッと動くミオクローヌスや、手足に持続的に力が入ってしまうジストニアなどの症状も出現することがあります。
一方で、これらの症状は他の神経疾患でも認められるため、正確に診断することが難しい病気の1つです。
大脳基底核障害による運動機能の低下と失行
大脳基底核障害は、運動機能に大きな影響を及ぼします。
特に、筋肉の硬直や動作の遅さ、歩行障害といったパーキンソン症状に加えて、肢節運動失行や構成失行といった症状が現れます。
これらは、大脳基底核が運動制御に重要な役割を果たしているためであり、障害が進行するにつれて症状が悪化することが多いです。
また、認知機能の低下や、物事を正しく理解する能力の衰えが見られることもあります。
早期に正確な診断を受け、適切な治療を開始することで、進行を遅らせることが可能です。
大脳皮質基底核変性症の薬物療法
では、どのように治療を行うのでしょうか??
同じように神経細胞が変性をきたすアルツハイマー型認知症やパーキンソン病でも、神経細胞の変性を元に戻す術はなく、大脳皮質基底核変性症に対しても根治的な治療法は確立されていません。
そのため、それぞれの症状を緩和するような薬物療法による対症療法が主な治療法です。
大脳基底核の障害に伴う無動・筋強剛は、どちらもドーパミンの機能障害が主な原因であるため、ドーパミンの補充が主な治療となります。
一方で、疾患が進行すれば徐々にその効果も薄れていくため、あくまでその効果は一時的なものです。
そのほか、ジストニアには抗コリン薬や筋弛緩薬、ミオクローヌスにはクロナゼパム(抗不安剤)、認知症には塩酸ドネペジルなどが有効ですが、これらも効果は一定的であり、症状の進行とともに効果は薄れていきます。
再生医療による期待される効果
薬物療法以外に、高次脳機能障害に対してはリハビリテーションも行われ、失われた機能の維持・改善に努めますが、多くの場合は誤嚥性肺炎や栄養不良が原因で死亡する、予後不良な疾患です。
発症から寝たきりになるまで5〜10年と言われており、これはパーキンソン病よりも進行が早いことを意味します。
そこで、近年では再生医療の分野も注目されています。
再生医療では、変性した大脳基底核や大脳皮質の神経細胞の再生を促し、障害された機能の改善を目指します。
ただし、現状では再生医療は患者数が多い脳梗塞や、比較的若年者に多い脊髄損傷に対しての研究が進んでおり、大脳皮質基底核変性症に対する適応や研究については今後に期待がかかります。
大脳皮質基底核変性症についてのまとめ
今回の記事では、大脳皮質基底核変性症の予兆と初期症状について詳しく解説しました。
大脳皮質基底核変性症では大脳皮質が障害されることで生じる失行・失語・認知症などの高次脳機能障害と、大脳基底核が障害されることで生じるパーキンソン病様の症状が主な初期症状です。
これらの症状に対して、現状では対症療法やリハビリテーションなどの理学療法が主な治療ですが、神経細胞の変性を止めることはできず、時間の経過とともに確実に悪化していく病気です。
一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善できなかった大脳皮質基底核変性症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 大脳皮質基底核変性症の予後は?
- 大脳皮質基底核変性症の予後は不良です。
発症してから寝たきりになるまで5〜10年と発症後の経過が早く、その後は飲み込みが悪くなることで誤嚥性肺炎や栄養不良が併発し、死に至ります。 - 大脳皮質基底核変性症は悪化しますか?
- 現状の医療技術では神経細胞の変性を食い止める術はなく、時間の経過とともに確実に悪化します。
神経細胞の変性を止める、もしくは再生させる様な新しい治療の開発が待たれるところです。
<参照元>
・難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/142
・厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089934.pdf
あわせて読みたい記事:大脳皮質基底核変性症とパーキンソン病の違い
外部サイトの関連記事:脳血管障害性パーキンソン症候群とは
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