動作リハビリ専門家である理学療法士の必要性

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理学療法士は動作リハビリの専門家であり、高齢化の進む現代において欠かすことのできない職務です。
その実力は病院や診療所ではもちろん、介護関連施設やプロのスポーツチーム、障害児施設など多彩な現場で発揮されています。
高齢化が進む今、介護関連、神経障害に関する理学療法士の専門性と需要が高まっています。
理学療法士の方々は、医療、福祉分野をはじめとしてさまざまな場面で大活躍しています。
リハビリを受けている方は、そのありがたみを日々実感していることと思います。
あまり病院に受診したことのない方も、スポーツ現場など思わぬところでお世話になるかもしれません。
今回は、理学療法士の仕事内容やその実際、作業療法との違いなどについて紹介していきます。

理学療法士とは動作リハビリの専門家である

理学療法士1
理学療法士は1965年「理学療法士及び作業療法士法」により、誕生した国家資格です。
免許がなければ、理学療法士を名乗ることはできません。
毎年1万人程度の理学療法士が誕生しており、現在の有資格者数は18万人を超えています。
高齢化社会を迎えている日本では、理学療法士のニーズは高まる一方で、まだまだ充足されているとは言えない状況です。

さて、理学療法士という言葉はよく聞きますが、具体的にどのような仕事をする方達なのでしょうか?
リハビリを主に担当するというイメージがありますが、実際にはリハビリにもさまざまな種類があり、関わるのは理学療法士だけではありません。
それぞれに得意分野があり、協力してリハビリを行っているのです。

法律の条文では、理学療法とは「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。
やや難しい言葉が使用されていますが、治療が必要な方に「体操その他の運動」を行わせるのが理学療法の中心になります。
運動による治療をより効果的とするためにマッサージや温熱などの手段も用いることができるという位置づけです。

特に理学療法が重要となるのは、身体の障害により日常生活に支障を来している方に対して、体操や運動を通じて機能の回復を図り、立ち上がる、起き上がる、歩く、寝返りをするなど基本となる動作を習得する段階です。
理学療法士は動作の専門家であり、安全性を確保しながら、患者さんの病状や状態に合わせた機能訓練を実施します。
医療・福祉分野において欠かすことのできない職種であるといえます。

理学療法士はどこで働いているのか

理学療法士2
理学療法士の多くは、病院や診療所、クリニックなどの医療機関で働いています。
医療が必要な患者さんが治療前、治療中、治療後すべてにおいて日常生活に必要となる機能を維持回復するためにリハビリを行います。

2000年に介護保険制度が創設されてからは、介護保険関連施設で活躍する理学療法士が増えています。
介護が必要な方の体力を維持するのに、動作の専門家である理学療法士の知識が求められているのです。

中には専門性を生かしてプロのスポーツチームに所属する理学療法士もいれば、障害児施設や養護学校で学校の先生と一緒に治療・訓練を行う理学療法士もいるなど、多彩な働き方が可能な職種です。

リハビリだけではない?広がり続ける理学療法士の役割

理学療法士3
理学療法士の役割は、失った機能を取り戻すためのリハビリテーションだけにはとどまりません。
健康寿命の延伸が社会的な課題となる中、健康を維持する、悪化を予防するといった予防医学においても理学療法は力を発揮します。
ギリギリの状態で生活している方(フレイル、サルコペニアなどと呼ばれます)を発見し体力を増進することで、要介護となる人を減らすことができます。

トップアスリートの体をケアし、傷害を予防しコンディションを整える、スポーツトレーナーとしての役割も理学療法士であれば担うことができます。
患者さんの体に実際に触り、動作や筋肉の状態を日常的に評価する理学療法士は、選手の状態を細かく評価することができます。
傷害の兆候に気づき、医療とアスリートの橋渡しをする役割も期待されます。

健康寿命の延伸とトップアスリートのケア。
大きく異なる分野ではありますが、どちらも理学療法士の守備範囲。
その根底には、人の体、特に筋肉や骨の構造に精通しているからこそ実践できる、理論的な理学療法があります。

分野に特化した理学療法士の専門性と高まる需要

理学療法士の仕事と役割が多様化する中で、理学療法士の中でも専門性が分かれてきています。
特に需要が高まっているのが、フレイルを始めとした介護関連、そして脳梗塞などの神経障害に対するリハビリテーションを行う分野です。

高齢化が進む日本では要介護者の増加が社会的問題となっており、要介護となる前の治療介入が喫緊の課題です。
要介護を防ぐために重要なのは「栄養」と「運動」なのですが、効果的な介入をするためにはフレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームに関する経験と知識が必要です。
単に運動指導を行うだけではなく、個人個人の機能評価やモチベーションの維持、安全をいかに確保するかなど、広い視野で捉える能力が必要です。
今後ますます重要になる専門性と言えるでしょう。

神経障害に対するリハビリテーションは長年の歴史があり、多くの知見が積み重ねられています。
神経疾患特有の機能障害や麻痺、痛みやしびれに対してさまざまなアプローチが考案され、リハビリテーションが実施されています。
中でも近年発展が目覚ましいのが、電気刺激やロボティクスを併用したリハビリテーションです。
電気刺激は頭部に装着した器械から電気を流す方法、麻痺した手足に装着した電極から電気を流す方法があり、運動麻痺に対する効果が見込まれています。
ロボットリハビリテーションでは、手足を動かしてもらうだけではなく、体表の電気信号を感知して動作を補助するため、「自分の意志で麻痺した手足を動かす」練習を行うことができます。

こうした最先端のリハビリテーションに、幹細胞治療などの再生医療を組み合わせることで、本人の回復力を最大限に引き出すことができると考えられます。
発展が著しい分野だけに、特化した理学療法士の需要は今後ますます高まっていくと考えられます。

リハビリの一翼を担う理学療法士と作業療法士の違い

作業療法士との違い
理学療法士と似た職種で、作業療法士があります。
作業療法とは、「身体または精神に障害のある者、またはそれが予測される者に対して、その主体的な活動の獲得をはかるため、諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・指導・援助を行うこと」(日本作業療法士協会)となっています。

これだけ読むと理学療法との違いが分かりづらいのですが、大まかに次のような点で違いがあります。

  • 理学療法では立ち上がる、歩くなどの基本動作を習得しようとするのに対して、作業療法では食事をする、顔を洗う、料理をするなど応用的動作の習得を目指す

  • 理学療法では体の大きな動きを訓練するのに対して、作業療法では手の動作や指の細かい動作などのリハビリテーションを行う

  • 作業療法は精神分野のリハビリテーションもその範囲に含み、精神的な機能についても訓練を通じて回復、維持を図る。精神科の病院で活躍する作業療法士も存在する

理学療法、作業療法ともに治療を受ける人の機能を回復し、生活機能を取り戻すリハビリテーションを行うという意味では目的が一致している治療です。
患者さんの状態に合わせて、どちらか、または両方の治療が行われることになります。

まとめ

ますます重要性を増す理学療法士の多彩な役割、その実際について紹介しました。
理学療法、作業療法とも人々の健康維持に欠かせない職務です。
必要性が高まる現在、さらなる充足が期待されます。

※データ参照元
「理学療法士」老年精神医学雑誌22(11), 2011
「作業の魅力・作業の力」第54回日本作業療法学会学会長講演

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貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表【 Dr.貴宝院 永稔 】
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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