この記事を読んでわかること
・シャイドレーガー症候群とは
・シャイドレーガー症候群の症状
・シャイドレーガー症候群の治療
自律神経、小脳、錐体外路などを構成する多くの神経細胞が同時に変性していく病気を多系統萎縮症といいます。
その中で、初期症状が自律神経症状であるものをシャイ・ドレーガー症候群(SDS)と言い、進行すれば基本的な日常動作に大きな支障をきたす難病です。
この記事では、シャイ・ドレーガー症候群や多系統萎縮症について詳しく解説していきます。
シャイドレーガー症候群とは
シャイドレーガー症候群とは、多系統萎縮症の中の病型の1つです。
多系統萎縮症とは国の指定難病の一つであり、主に3つの病気の総称とされています。
- 線条体黒質変性症
- シャイドレーガー症候群
- オリーブ橋小脳萎縮症
どの病気も自律神経、小脳、錐体外路の神経細胞に変性をきたす事で多系統の神経機能が障害され、様々な神経症状をきたす疾患です。
中でもシャイドレーガー症候群は、発症早期の症状として自律神経が障害される病型とされ、全体の約15%を占めるとされています。
発症は成年期に多く、特に50歳代に多いようです。
シャイドレーガー症候群の原因
結論から言えば、シャイドレーガー症候群の原因は現在に至るまで解明されていません。
しかし、多系統萎縮症全般に共通して、グリア細胞内に嗜銀性の封入体であるGCIが形成されることが判明しています。
この神経細胞の変性が病態であると考えられていますが、なぜGCIが形成されてしまうのかは不明です。
ほかの疾患には認められない病理所見であったことから、シャイドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症は単一疾患としてまとめられました。
シャイドレーガー症候群の症状
シャイドレーガー症候群の症状は自律神経、小脳、錐体外路が障害されることに起因します。
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称で、血圧・脈拍・体温・睡眠・排便・排尿など様々な生理機能をコントロールしています。
シャイドレーガー症候群では発症早期に自律神経が障害されることで、主に立ちくらみや尿失禁が出現します。
起立時にうまく自律神経が機能せず、血管が収縮しないことで脳血流が低下する症状を起立性低血圧と言います。
起立性低血圧の程度が強いと、起立時に急に目の前が暗くなり、強い虚脱感と共に失神します。
シャイドレーガー症候群では、これらの自律神経障害に続いて小脳障害やパーキンソン症状が後から発現します。
小脳は主にスムーズな運動やバランス感覚を司っているため、小脳障害によってバランスが崩れたり手が震えたりします。
錐体外路はスムーズな運動を司っているため、錐体外路が障害されると固縮、姿勢反射障害、振戦などのパーキンソン症状が出現します。
シャイドレーガー症候群の治療
シャイドレーガー症候群は進行性の変性疾患であり、変性した神経細胞を元に戻すような治療は存在しません。
そこで、現在行われている治療は出現した症状に対する対症療法です。
例えば、起立性低血圧や排尿障害、パーキンソン症状について、それぞれの症状を緩和するような薬物療法、リハビリなどの理学療法などを組み合わせて治療を行なっています。
特に排泄能力の低下は、のちに尿路感染症を招く原因となり、最悪の場合死に至るため早期からの介入が必要になります。
多系統萎縮症の他の病型
前述したように、シャイドレーガー症候群は多系統萎縮症の病型の1つであり、他にも2つの病型が存在します。
- オリーブ橋小脳萎縮症
- 線条体黒質変性症
それぞれについて解説します。
オリーブ橋小脳萎縮症
オリーブ橋小脳萎縮症は、多系統萎縮症の中でも発症初期の症状が小脳症状である病型を指します。
小脳の障害が先行するため、ふらつきや振戦などの症状が出現します。
その後、排尿障害、立ちくらみなどの自律神経症状を伴い、病気の進行に伴ってパーキンソン病に似た症状が出現します。
線条体黒質変性症
線条体黒質変性症は、多系統萎縮症の中でも発症初期の症状が錐体外路症状である病型を指します。
錐体外路の障害が先行するため、ふらつきや歩行障害、固縮、振戦などの症状が出現します。
通常は、錐体外路症状に次いで自律神経症状、最後に小脳症状が出現するという特徴があります。
まとめ
今回の記事ではシャイドレーガー症候群を含む多系統萎縮症について解説させて頂きました。
シャイドレーガー症候群は多系統萎縮症の中でも自律神経の障害が先行する病型で、主に立ちくらみや歩行障害、尿失禁などの症状が早期に現れます。
進行性の変性疾患であるため、治療としては出現したそれぞれの症状に対する対症療法が主です。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
再生医療では、幹細胞を体外から注入して損傷した細胞や組織の再生効果が期待されます。
再生医療によって、変性・萎縮した神経細胞の形態や機能が再生すれば、自律神経や小脳、錐体外路の失われた機能を再生できる可能性があり、現在はその知見が待たれるところです。
よくあるご質問
シャイドレーガー症候群の原因は?
シャイドレーガー症候群の原因は現状はっきりと解明されていません。
しかし、シャイドレーガー症候群を含む多系統萎縮症には共通して、グリア細胞内に嗜銀性の封入体であるGCIが形成されることが判明しています。
また発症に遺伝子が関与している可能性もありますが、原因遺伝子などは解明されていません。
シャイドレーガー症候群の寿命は?
シャイドレーガー症候群の寿命は、約9年程度と報告されています。
また国内で行われた230人の患者を対象とした研究では、それぞれ中央値として車椅子使用まで発症後平均約5年、臥床状態になるまで約8年とされています。
<参照元>
難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/61
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