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脳梗塞と遺伝の関係について

           

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この記事を読んでわかること

脳梗塞について
脳梗塞が遺伝すると考えられる背景
脳梗塞の発症に関わる遺伝子・環境要因


脳梗塞は脳を栄養する血管がなんらかの原因で閉塞し、脳細胞が壊死してしまう病気です。
欧米人と比較して日本人では特に脳梗塞の発症率が高いことが知られており、発症においてなんらかの遺伝的な要因が関与していることが疑われています。
そこでこの記事では、脳梗塞と遺伝の関係について解説していきます。

脳梗塞が遺伝すると考えられる背景

脳梗塞と遺伝の関係について
脳梗塞を含む脳卒中は日本人における死因第4位の疾患であり、厚生労働省の報告によれば平成28年の患者数は111万5,000人、医療費は1兆8,085億円と驚くべき数字でした。
さらに、脳卒中の中でも脳梗塞の患者数は最も多く、日本人にとってもはや国民病とも言える病気です。
国際的に見ても、1960年代の日本は世界中でダントツに脳卒中の患者数が多く、これまでその理由についてさまざまな議論がなされてきました。
脳梗塞発症の主な理由は環境要因と遺伝要因の両方が挙げられ、特に環境要因はこれまでのさまざまな研究によって、ある程度明確な原因が解明されています。
一方で、海外と比較しても日本では脳梗塞の発症者が多かったことから遺伝要因も疑われていましたが、遺伝子解析の技術が未発達であったことなどから、原因となる遺伝子の特定には至っていませんでした。
しかし、近年では遺伝子解析の技術も向上し、脳梗塞の発症に関わる遺伝子も特定され始めています。

脳梗塞の発症に関わる遺伝子とは

2019年、国立循環器病研究センターの猪原らが発表した研究結果は驚くべき内容でした。
過去に行われた京都大学・小泉グループとの共同研究で「RNF213遺伝子」を改変した動物で脳梗塞を起こしやすいという報告があり、猪原らはこの「RNF213遺伝子」に目を付けました。
中でも、「RNF213遺伝子」がコードするタンパク質の4810番目のアルギニンがリジンに変わる多型である「RNF213 p.R4810K多型」(以下、「本多型」)が脳梗塞の発症に関与していると考えたのです。
そこで、猪原らは日本人46,958名(脳梗塞17,752名、対照29,206名)を対象に調査したところ、「本多型」保有者の場合、アテローム性血栓性梗塞のオッズ比を3.58に高めることが明らかになりました。
オッズ比とはある疾患へのかかりやすさを比較した数値で、1の場合は両郡同程度、1以上の場合はよりかかりやすいことになります。
さらにこの研究では、男性よりも女性の「本多型」保有者の方が脳梗塞を発症しやすく、非保有者より発症が4歳以上若いことも明らかとなりました。
一方で、欧州人を対象にした INTERSTROKE研究では対象患者から本多型は観察されず、脳梗塞発症における人種差を明らかにしました。

脳梗塞の発症に関わる環境要因とは

脳梗塞は大きく3つの病型に分類され、それぞれ発症要因が異なります。

  • ラクナ梗塞
  • アテローム性血栓性梗塞
  • 心原性脳梗塞

心原性脳梗塞の環境要因

心原性脳梗塞は心臓のリズムが乱れることで心臓内の血流が滞り、心臓内に血栓が形成され、心臓の拍出とともに脳に血栓が飛ぶ病気です。
主な原因は心房細動と呼ばれる不整脈であり、アルコールの過剰摂取が原因となることが多いです。
他にも精神的ストレス、睡眠不足、カフェインの過剰摂取などで心房細動を発症します。

ラクナ梗塞・アテローム性血栓性梗塞の環境要因

ラクナ梗塞やアテローム性血栓性梗塞の場合、長期的な高血圧や糖尿病・高脂血症などの生活習慣病や、喫煙習慣による動脈硬化が原因です。
動脈硬化によって徐々に血管が細くなり、脳の細い血管が閉塞する病気をラクナ梗塞と呼びます。
動脈硬化によって生じたアテロームと呼ばれる血管内のコブが破綻し、急速に血栓が生じて比較的太い動脈が閉塞する病気をアテローム性血栓性梗塞と呼びます。
どちらの疾患も食生活が密接に関わっており、高塩分、高脂質、高糖質な食事が背景にあります。
またこれらの環境要因は、家庭での食事で子供にも同じような食事を摂取させてしまうことから遺伝要因にもなり得る点で注意が必要です。

まとめ

今回の記事では、脳梗塞と遺伝の関係について解説しました。
脳梗塞はこれまで塩分の過剰摂取に伴う高血圧や喫煙、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が長期化して生じる動脈硬化や不整脈が主な原因と考えられてきました。
しかし、世界的に見ても特に日本人の脳梗塞発症者が多かった背景から、遺伝要因も疑われてきました。
近年では、遺伝子解析の技術向上に伴い、アジア人に特有の遺伝子「本多型」がアテローム性血栓性梗塞の発症に強く関係していることも判明し、遺伝・環境要因ともに脳梗塞の発症に寄与していることが明らかとなりました。
また治療の分野でも「脳梗塞に対する再生医療」という革新的な技術が進んでいます。
脳梗塞によって損傷を受けた脳細胞が再生医療によって回復すれば、様々な機能が改善する可能性もあり、現在のその知見が待たれるところです。

Q&A

脳梗塞の家系はある?
脳梗塞の発症には家族歴が大きく関わります。
親や兄弟姉妹に脳梗塞の発症者がいる場合、いない場合と比較して2〜4倍も脳梗塞の発症リスクは上昇すると言われています。
また、原因となる遺伝子の一部も特定されています。

どんな人が脳梗塞になりやすい?
脳梗塞になりやすい人の特徴は、塩分の過剰摂取、脂質や糖質の過剰摂取、喫煙・アルコールなどの常習者が挙げられます。
特にラクナ梗塞やアテローム性血栓性梗塞は動脈硬化が、心原性脳梗塞は心房細動などの不整脈が原因となります。

<参照元>
・ Smajlovic D, et al. Five-year Survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci. 2006; 6(3): 17-22
・国立循環器病研究センター:https://www.ncvc.go.jp/pr/release/190108_press-2/
・日本生活習慣病予防協会:https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/cerebral-infarction/



貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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