脊髄損傷後のプッシュアップ動作について | 後遺症・神経障害を幹細胞点滴と幹細胞上清液点鼻×専用リハビリ治療

脊髄損傷後のプッシュアップ動作について

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脊髄損傷によって四肢麻痺が生じた場合、歩行や移動、体位変換などの日常動作に重大な影響を与えてしまいます。
しかし上肢の筋力が残存している場合、プッシュアップ動作によって重心の垂直方向の移動は可能であり、脊損患者にとって車椅子を利用しない唯一の移動手段になります。
そこで本書では、プッシュアップ動作に関して詳しく解説していきます。

脊髄損傷におけるプッシュアップ動作とは?

脊髄を損傷すると、脳から体への運動の指令が入らなくなるため麻痺が出現します。
脳からの運動の指令は、脳幹を経由し脊髄を通り、脊髄の中の頸髄から上肢に、腰髄から下肢に到達するため、腰髄や胸髄を損傷すれば下肢麻痺、頸髄のような高位レベルの損傷となると上肢も下肢も麻痺してしまいます。
麻痺の出現は歩行や運動はもちろんのこと、移乗や体位変換などにも支障をきたすため、日常生活が大きく制限される可能性があります。
しかし下肢や体幹、一部の上肢に麻痺があっても、車椅子などを使用しない状況下での唯一の移動手段としてプッシュアップ動作と呼ばれる動作は可能です。
プッシュアップ動作は、座位の状態のまま上肢で臀部を座面から押し上げて、持ち上げる動作のことを言います。
プッシュアップ動作を行えれば、体位変換のみならず、車椅子からベッドやトイレや浴槽などへの移乗も可能になるため、脊髄損傷患者においてまず習得すべき基本的動作と言われています。

実際のプッシュアップ動作の方法

損傷部位や上肢の麻痺がどの程度かによって行える動作は変わってきます。
特に脊髄損傷では頸髄が損傷しやすく、また脊髄損傷は厄介なことに損傷部位だけの症状が出るわけではなく、損傷部位以下全ての神経機能に障害をきたします。
そこで、頸髄のどのレベルの損傷でどのような障害が出るのかを理解する必要があります。
各レベルの頸髄が正常な場合の、支配する筋肉と機能を下記に示します。

  • 第3頸髄→胸鎖乳突筋や僧帽筋を支配し、呼吸を補助する筋肉
  • 第4頸髄→横隔膜を支配し、主に呼吸を司る筋肉
  • 第5頸髄→三角筋や上腕二頭筋を支配し、肘の屈曲や肩の外転を行う筋肉
  • 第6頸髄→橈側手根伸筋を支配し、手関節の背屈などを行う筋肉
  • 第7頸髄→上腕三頭筋や指伸筋を支配し、肘や指の伸展を行う筋肉
  • 第8頸髄から第1胸髄→指屈筋や手内筋を支配し、指の屈曲を行う筋肉

これを見ればわかる通り、第5頸髄よりも下のレベルの損傷であれば肘の伸展と手関節の背屈が行えるためプッシュアップ動作を行える可能性があります。
その反面、第5頸髄以上の損傷であればほぼ全介助になってしまいます。
損傷部位や麻痺の程度によってプッシュアップ動作の方法は異なるため、それぞれのパターンについて解説します。

上肢麻痺が重度の患者のプッシュアップ動作

第6頸髄損傷の患者では肘の伸展動作が不十分です。
その場合のプッシュアップ動作は、大胸筋の力が入らないため座位のまま上肢をやや前方に置いて、前鋸筋の力を利用して脊柱を持ち上げる動作になります。
また肩の外転や肘の屈曲は可能であり、この時、臀部はほぼ垂直に持ち上がるという特徴があります。

上肢麻痺が中等度の患者のプッシュアップ動作

第7、8頸髄損傷の患者では第6頸髄の機能が保たれるため肘の伸展動作が行えます。
その場合のプッシュアップ動作は、大胸筋にもある程度力が入るため、前鋸筋の力と相まって臀部がやや前上方に挙上する形となります。

上肢麻痺が軽度の患者のプッシュアップ動作

第7、8頸髄損傷の患者で、症状が改善してきた場合は上肢の筋肉、特に上腕三頭筋に頼る形で臀部を浮上させることができます。
その場合、上半身はやや前方に傾き、臀部は後方に引き上げる形になります。

プッシュアップによる看護ケア

プッシュアップ動作は、褥瘡予防の観点からも非常に重要です。
まさに睡眠中の寝返りが良い例ですが、本来、人体の特定箇所に圧力が持続的にかかってしまうと、血流が減少し痛みが出現して体位変換を行うものです。
しかし脊髄損傷患者では正常に痛みを感じられず、麻痺のせいで体位変換もままならないため、褥瘡ができやすいという特徴があります。
主に、後頭部、肩甲骨部、仙骨部、足部に圧がかかりやすく褥瘡ができやすい部位となります。
そこで、看護ケアとして2時間毎の体位変換が褥瘡予防には有効です。
また、車椅子に乗れる方であれば20分毎のプッシュアップ動作により褥瘡の予防ができます。
訪問看護が入っている患者であれば、相談してできる限りの褥瘡対策を行うべきです。

まとめ

脊髄損傷における麻痺は、多くの基本的動作に支障をきたすため日常生活に大きな影響を与えかねません。
特に脊髄の中でも損傷しやすい頸髄の損傷は、上肢下肢両方の筋肉へ影響が出てしまいます。
本書で紹介したプッシュアップ動作は、そんな頸髄損傷患者でもある程度の移乗や体位変換を可能にするため、可能であれば習得すべき基本的動作となります。
また近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
再生医療では、自身の骨髄内の自己幹細胞を取り出し、培養して増殖させたものを体に戻すことで損傷した細胞を再構築できる可能性があります。
再生医療により麻痺の程度が軽減すれば更なるリハビリ効果も期待できるため、今後の更なる知見が待たれるところです。


貴宝院 永稔【この記事の監修】
福永記念診療所 再生医療部長 再生医療担当医師

ニューロテックメディカル代表 Dr.貴宝院 永稔

大阪医科薬科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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