この記事を読んでわかること
・ギランバレー症候群とは
・ギランバレー症候群の原因
・ギランバレー症候群の治療
ギランバレー症候群とは、感染症などを契機に体内で生成された抗体が末梢神経を攻撃して、麻痺やしびれなど様々な症状を引き起こす病気のことです。
発症した方の多くは症状が改善しますが、中には重症化して重い障害を残したり、最悪死に至る方もいます。
この記事では、ギランバレー症候群の原因や治療などについて詳しく解説していきます。
ギランバレー症候群とは
みなさんは、ギランバレー症候群という病気をご存知でしょうか?
日本では人口10万人当たり年間0.4〜4.0人の発症率をもつ、非常に稀な疾患です。
また、成人男性で発症しやすいと報告されていますが、全ての年齢層で幅広く発症する可能性のある病気です。
多くの場合、なんらかの感染症が発症のきっかけとなり、風邪症状や下痢といった感染症状から1ヶ月程度で麻痺やしびれなどの神経症状が出現します。
神経症状出現から4週間以内に症状がピークになり、その後回復が始まり元の状態に戻っていくのが一般的です。
しかし、中には神経症状が重症化してしまう方もいるため、注意が必要です。
ギランバレー症候群の原因
ギランバレー症候群の原因は、なんらかの感染症に伴い体内で抗体が生成され、その抗体が末梢神経を攻撃してしまうことです。
細菌やウイルスに感染すると、体内では白血球などの免疫細胞によって病原菌を攻撃するための抗体が生成されます。
しかし、この抗体が病原菌以外に、自らの神経も敵と誤認してしまい攻撃してしまうわけです。
原因となる代表的な感染症として、HIVやインフルエンザウイルス、鶏の体内に生息するカンピロバクターなどが挙げられます。
これらの理由から、ギランバレー症候群では神経症状発症の1ヶ月以内に先行感染をきたしていることが多いと言われています。
ギランバレー症候群の症状
ギランバレー症候群の主な症状は下記の通りです。
- 下肢から上肢、顔面へと広がるピリピリ感や脱力感
- 手足の麻痺
- 進行すると呼吸筋麻痺(全体の20~25%)
- 自律神経障害
一言に神経と言っても、「中枢神経」と「末梢神経」の2つに大別できます。
脳や脊髄は「中枢神経」、脊髄から分岐する筋肉へ伸びる神経を「末梢神経」と言いますが、ギランバレー症候群では中枢神経ではなく末梢神経のみ攻撃します。
そのため、脳や脊髄が損傷するわけではなく、手足や顔面に分岐する神経が障害されていきます。
発症当初は四肢の麻痺やしびれが主症状ですが、症状が進行していくと呼吸筋の運動に関わる神経も障害され、呼吸筋麻痺を引き起こします。
その場合、自発的な呼吸では十分な酸素を取り込めなくなってしまうため、一時的に人工呼吸器で生命維持を行うことになります。
場合によって神経症状が残存し、約20%の方で1年後にもなんらかの障害が残ってしまいます。
また、血圧や脈拍、体温など様々な生理機能を調節する自律神経までもが障害を受けると、心臓や血管の機能も乱れてしまい、不整脈や重度の血圧変動が生じます。
主にこれらが原因となり、発症者の約1%が死亡すると報告されています。
ギランバレー症候群の治療法と回復の見通し
ギランバレー症候群の3つの治療についてご紹介します。
支持療法
ギランバレー症候群では自律神経や呼吸筋が障害されることで、全身状態に大きな影響を与えます。
特に、血圧の変動や呼吸能力の低下は命に関わるため、入院して呼吸や循環の補助を行います。
支持療法の主な内容は人工呼吸器による呼吸のサポート、血圧の安定化です。
免疫グロブリン大量静注療法
体外から免疫グロブリンを大量投与することで、体内に発生した自己抗体の働きを抑制する効果が期待できます。
血液浄化療法
血液から直接自己抗体を取り除いて、綺麗にした血液を再び体内に戻す治療法です。
特殊な装置が必要になるため、実施できる医療機関には限りがあります。
ギランバレー症候群において、血液浄化療法と免疫グロブリン大量静注療法の治療効果には優劣がついていませんが、装置が不要である点から免疫グロブリン大量静注療法が選択されることが多いです。
支持療法
ギランバレー症候群の回復期間は数週間から数ヶ月かかることが多く、予後は良好とされています。
ただし、10~20%の患者には長期的な後遺症が残る場合もあります。
早期診断と治療が回復のカギとなり、免疫グロブリン大量静注療法や血液浄化療法などが効果的です。
軽度の患者は自力での回復が見込まれる一方、重症例ではリハビリテーションが長期間必要となることもあります。
ギランバレー症候群の症状と治療についてのまとめ
今回の記事ではギランバレー症候群の病態や症状、治療法などについて解説させて頂きました。
ギランバレー症候群は、先行感染を契機に体内で生成された抗体によって末梢神経の機能が障害される病気です。
一般的には数週間の経過で症状はピークアウトし、特別治療せずとも正常な状態に戻っていきます。
しかし、中には神経症状が重篤化し、呼吸筋麻痺や誤嚥性肺炎、血圧変動などが原因で死亡する方もいるため、注意が必要です。
現行の治療は、体内で発生した抗体の機能を抑える、もしくは抗体の除去です。
しかし、近年では再生医療の発達に伴い損傷した神経細胞が回復する可能性があります。
再生医療がこのまま発達すれば、ギランバレー症候群によって破壊された神経が再生し、後遺症を残さずに完治できる可能性もあるため、現在その知見が待たれるところです。
よくあるご質問
ギランバレー症候群の死亡率は?
ギランバレー症候群の死亡率は、発症者全体の約1~3%です。
主な死因は、神経障害に伴う呼吸筋の麻痺、嚥下障害による誤嚥性肺炎、血液感染症、肺血栓、心停止などが挙げられます。
ギランバレー症候群は何が原因ですか?
ギランバレー症候群の原因は主に感染症です。
HIV、デング熱、インフルエンザ、カンピロバクターなどが代表的で、これらの感染に伴い体内で生成された抗体が神経を破壊してしまいます。
また最近では、ジカウイルスとの関連が報告されています。
<参照元>
厚生労働省:https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/02081158.html
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