この記事を読んでわかること
・急性壊死性脳症の原因がわかる
・急性壊死性脳症の後遺症がわかる
・急性壊死性脳症の予後がわかる
急性壊死性脳症とは、何らかの感染症の発症を契機に、視床をはじめとする脳の重要部位を後半に破壊される病気であり、非常に予後不良な疾患です。
破壊される部位に応じて出現する症状もさまざまですが、多くの場合、何らかの後遺症を残します。
この記事では、急性壊死性脳症の後遺症とその影響について詳しく解説します。
急性壊死性脳症の原因と後遺症
急性壊死性脳症とは、何らかの非特異的なウイルス感染を契機に急激な脳浮腫をきたし、両側の視床を含む特定部位が左右対称性に壊死する病気です。
最も最初に報告されたのは1979年であり、それ以前には病気そのものが存在しなかったのか、もしくは画像検査が普及しておらず診断できていなかったのか、そこについては不明です。
ただし、頭部CT検査や頭部MRI検査の普及に伴い、急性壊死性脳症の報告は相次ぎ、1995年には水口らがその疾患概念を提唱したことで新たな病気として認識されました。
この病気を発症する方には、性差はなく、家族歴や既往歴にも特別共通するものがある訳ではありませんが、これまでの世界的統計から、東アジアエリアで多発していることは間違いなく、一方で欧米では報告に乏しい点から、地域性のある病気と考えられています。
では、何が原因で発症するのでしょうか??
発症者全員において共通しているのは何らかのウイルス感染症がきっかけで発症している点です。
インフルエンザウイルスA型・B型、コクサッキーウイルスA型・B型、突発性発疹などのウイルス感染による発熱から半日〜3日以内に、そのまま脳症を発症することがほとんどです。
一方で、これらの感染症に対して解熱剤を使用した症例でより多く発症が見られた点から、解熱剤が発症の危険因子になっている可能性についても示唆されています。
また、これらの感染症は冬に感染しやすいことから、急性壊死性脳症の発症自体も冬に多い点が特徴的です。
いざ発症すると急激に脳が破壊され、視床・大脳基底核・大脳白質・小脳・橋・中脳などの重要な部位が左右対称性に広範に障害されます。
発症早期は意識障害や痙攣・嘔吐などを伴い、24時間以内には昏睡状態に陥ります。
最悪の場合、血圧低下・全身麻痺・心肺停止の可能性もあるため、発症早期から注意が必要です。
驚くべきことに、これらの急激な神経症状による死亡率は33%にまでのぼると報告されています。
一方で、急性期を乗り越えた人のほとんどは生存し、その後の再発や再燃も認めません。
ただし、急性期に脳が強く障害されたことにより、下記のような後遺症を残します。
- 重症例:四肢麻痺・重度精神遅滞・てんかん
- 軽症例:片麻痺・言語障害・企図振戦・失調・外転神経麻痺・顔面神経麻痺
障害される部位に応じて、残存する後遺症も異なります。
身体的・精神的後遺症の具体的な影響は
急性壊死性脳症の厄介な点は、子供に発症する病気という点です。
国内での報告例では、発症年齢は生後5ヶ月〜11歳であり、半数以上が1歳前後での発症であるため、後遺症を残した場合、その後の人生に多大な影響を与えます。
麻痺などの運動機能障害は、移動や歩行、体位変換などの基本的な日常動作に大きな支障を与えます。
幼少期からの麻痺によって関節は拘縮し、幼少期に獲得すべき運動能力も獲得できないため、重篤な運動機能障害が残る可能性もあり、注意が必要です。
さらに、幼少期に重度精神遅滞や言語障害などの後遺症を抱えてしまうと、他者とのコミュニケーション能力の向上も見込めません。
言語を習得できなければ、親子間で会話することすらままならない可能性もあります。
後遺症のリハビリテーションと管理について
急性壊死性脳症のような激烈な脳の破壊が起こる疾患の場合、仮に一命を取り留めたとしても、その後の人生においては長期的なリハビリテーションが必須です。
出現する症状によって行うリハビリテーションも異なりますが、主に実施されるのは運動機能障害に対する理学療法です。
またその際に実施する装具やリハビリの強度は、後遺症の重症度によっても異なるため、理学療法士と相談して内容を決める必要があります。
さらに、急性壊死性脳症ではてんかんを併発する子供が多く、リハビリの回復期にはてんかん発作を生じることも稀ではないため、投薬によるてんかんのコントロールも必要となります。
一方で、てんかんの治療薬は筋力低下を招き、過量投与はリハビリの弊害にもなるため、より良いリハビリのためには投薬の種類や量の細かな調整も必要です。
急性壊死性脳症の後遺症についてのまとめ
今回の記事では、 急性壊死性脳症の後遺症とその影響について詳しく解説しました。
急性壊死性脳症によって脳を破壊された場合、急性期を乗り越えたとしてもその後さまざまな後遺症を付き合っていく必要があります。
後遺症に対しては現状リハビリテーションが唯一の対応策ですが、最近では新たな治療法として再生医療が非常に注目されています。
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また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、 急性壊死性脳症による神経学的後遺症のさらなる改善が期待できます。
よくあるご質問
- 急性脳症の後遺症は?
- 急性脳症では脳が強く障害されるため、発症者の約70%で何らかの後遺症を残すことが知られています。
運動麻痺や言語障害・てんかん・重度の精神遅滞・眼球運動障害などが主な後遺症です。 - 急性壊死性脳症とはどんな病気ですか?
- 急性壊死性脳症の原因は現在の医療レベルでもはっきり解明されていません。
現状では、何らかのウイルス感染に伴う過剰な炎症性サイトカインの分泌に伴い、血管透過性が亢進して脳に浮腫をきたす疾患であると考えられています。
<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/19/4/19_661/_pdf/-char/ja
・日本リハビリテーション医学会:https://www.jarm.or.jp/wp-cntpnl/wp-content/uploads/2017/05/member_publication_isbn9784307750387.pdf
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