この記事を読んでわかること
・頚椎症性脊髄症とは
・頚椎症性脊髄症の治療とリハビリ
・頚椎症性脊髄症に対する再生医療
私達の体は脊髄によって脳とつながっています。
脳からの指令が脊髄を通って伝わることで体は動き、体からの感覚が脊髄を経由して脳へ伝わることで感じることができます。
脊髄は重要な神経の伝導経路であり、障害されると様々な症状が発生します。
腰のところで神経が障害される病気には、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などがあります。
この記事で紹介する頚椎症性脊髄症は、頚部で脊髄が障害される病気です。
ここでは頚椎症性脊髄症とその治療、リハビリについて解説します。
頚椎症性脊髄症とは
頚椎症性脊髄症とは、頚椎症が原因となって起こる脊髄症です。
頚椎症というのは、頚部にある脊椎、つまり頚椎が変形することです。
加齢変化などが原因で頚椎と頚椎の間にある椎間板や軟骨が痛み、骨にストレスがかかることで骨の棘ができます。
でっぱった骨の棘や椎間板、肥厚した靱帯などが脊髄を圧迫し症状を発生させます。
脊髄症というのは、脊髄の圧迫によって起こる症状のことです。
頚椎症性脊髄症と似た疾患に、頚椎症性神経根症というものがあります。
これは頚部のところで脊髄から枝分かれした神経が頚椎症により圧迫されるもので、肩から手のしびれが主な症状になります。
それに対して頚椎症性脊髄症は、枝分かれする前の脊髄そのものが圧迫されるため、症状はより広範囲となり重いものになるのが一般的です。
ボタンをかける・外す、お箸を使う、字を書くなど細かい動きがしづらくなります。
脊髄は頚部を通った後下半身へも分布するため、頚椎症性脊髄症では下肢の症状も発生します。
典型的には歩行で足がもつれるような感じがして、早歩きや方向転換が難しくなります。
重症になると立位、歩行が困難になります。
頚椎症性脊髄症の治療とリハビリ
症状がそれほど強くなく画像検査の結果も含めて軽症と判断される場合には、飲み薬などで様子を見られることがあります。
使用される薬には痛み止めやビタミン剤、筋肉の緊張を和らげる薬や血流を改善される薬などがあります。
頚椎の牽引療法もリハビリと呼ばれ実施されることがあります。
ただし軽症である場合も自然に20-60%の方の症状が悪化するという報告もあり、注意が必要です。
症状が重い場合や悪化傾向にある場合は、手術が選択されます。
脊髄の圧迫を解除するため頚椎の骨を削ったり開いたり、場合によっては固定する処置が行われます。
ダメージを受けた神経そのものを処置する方法ではないため、その後の回復は個人差があります。
神経の回復を促すのに重要であると考えられているのがリハビリです。
神経の機能回復を目指して、様々なトレーニングや日常生活動作訓練を行います。
手術後早期からリハビリを行うことでより良い機能が得られると考えられており、早ければ手術翌日から積極的にリハビリを行います。
頚椎症性脊髄症の後遺症
頚椎症性脊髄症は神経の障害であるため、一度進行すると大きく回復するのは難しく、後遺症が残るケースがあります。
特に手足の筋力低下、麻痺が起きている場合や膀胱直腸障害(尿もれや尿が出なくなる)が起きている場合は、神経のダメージが大きく後遺症が残存する可能性が高くなります。
障害高位によりますが、重症では四肢麻痺(両手足の麻痺)となり介護が必要となるケースもあります。
頚椎症性脊髄症に対する再生医療
脊髄は神経の塊であり、強い圧迫を受けると神経は障害されてしまいます。
一度強く障害された神経は回復することなく、生涯残る後遺症となってしまう可能性があります。
手術を行っても神経そのものを処置するわけではないため、術後の回復具合は手術前の状態に左右されてしまいます。
そこで神経そのものを治療する方法が求められており、そのための手法の一つが再生医療です。
再生医療は自分の神経や臓器の失われた機能を、組織の元になる細胞(幹細胞)を使用して取り戻そうとする治療法です。
体内に移植された幹細胞は自分の組織を保護する因子を放出するとともに、自分の神経や臓器を構成する細胞に成長し、その場で機能するようになることが期待されています。
再生医療は自らの回復能力を最大限に引き出そうとする方法であり、リハビリとの相性が良い治療法です。
両者の組み合わせにより、治療効果を高める取り組みが進んでいます。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しています。
頚椎症性脊髄症に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせた治療法を実践しています。
頚椎症性脊髄症の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
頚椎症性脊髄症の治療とリハビリ、再生医療について解説しました。
年齢の影響を強く受ける疾患であるため、患者さんの数は増加していると考えられます。
早期発見、早期治療が重要であるため症状に気づいた場合は早めの医療機関受診をお勧めします。
よくあるご質問
頚椎症の手術のリスクは?
頚椎症性脊髄症の手術は全身麻酔で行うため、高齢の方や持病を持っている方は全身状態が変動するリスクがあります。また神経の近くを操作するため、術後神経の圧迫や出血などが原因で症状が(一時的に)悪化するリスクがあります。
頚椎症性脊髄症のリハビリ期間は?
保存治療(手術を行わない治療)の一つとして行うリハビリについては、期間にはっきりした決まりはなく、症状に合わせて実施期間を調節します。手術後の機能回復を目指したリハビリについては、術後150日までが一つの目安となります。
<参照元>
・「頚椎症性脊髄症」日本整形外科学会ホームページ
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html
・「頚椎症性脊髄症診療ガイドライン2020」
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001232/4/Cervical_spondylotic_myelopathy.pdf
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