この記事を読んでわかること
・脊髄腫瘍の種類
・脊髄腫瘍の症状と治療
・脊髄腫瘍に対する再生医療
腫瘍とは何らかの原因で異常な細胞が増殖し、塊を作った状態のことです。
腫瘍は体の中のどこにでも発生する可能性があり、脳や脊髄などの神経組織も例外ではありません。
日本では10万人あたり年間約20人に脳腫瘍が発生すると言われ、脊髄腫瘍はその10分の1程度と考えられています。
頻度が高い病気ではありませんが、発生すると生活に影響する症状を引き起こすため重要な病気です。
この記事では、脊髄腫瘍について解説します。
脊髄腫瘍の種類
脊髄は脳から続く神経の束であり、背骨の中を頚部から腰のあたりまで通っています。
脊髄の周りには硬膜という強い膜があり、中は髄液という液体で満たされています。
脊髄や硬膜に発生するのが脊髄腫瘍です。
脊髄腫瘍には硬膜の外に発生する硬膜外腫瘍、硬膜の中で脊髄の外に発生する硬膜内髄外腫瘍、脊髄の中に発生する髄内腫瘍があります。
硬膜外腫瘍には背骨から発生する脊椎腫瘍や、他の臓器で発生したものが飛んでくる転移性腫瘍があります。
硬膜内髄外腫瘍で頻度が高いのは神経鞘腫、髄膜腫という腫瘍です。
髄内腫瘍には上衣腫や星細胞腫という腫瘍があります。
神経鞘腫や髄膜腫は原則として周囲組織を破壊したり他の臓器に転移したりすることのない良性腫瘍ですが、星細胞腫や転移性腫瘍は悪性腫瘍です。
悪性腫瘍は治療が難しく、決定的な治療が無いケースも少なくありません。
脊髄腫瘍の症状と治療
脊髄腫瘍の症状は、脊髄の神経が障害されることによる症状です。
脊髄の神経には運動、感覚、自律神経があります。
運動の神経が障害されると筋力の低下や麻痺を起こします。
感覚の神経が障害されると手足がしびれたり、感覚が鈍くなったりします。
自律神経が障害されると排尿や排泄のコントロールが不十分になる、血圧の維持が不安定となり立ちくらみを起こしやすくなるなどの症状が発生します。
腫瘍が発生する場所により症状が異なり、脳に近い場所で発生するほど広範囲に症状が起きることになります。
良性腫瘍では手術により全て摘出できる可能性が高い一方で、悪性腫瘍は周囲の組織に入り込み境界がはっきりしないことからきれいに取りきるのが難しいケースがあります。
特に星細胞腫は治療が難しく、5年生存率(5年後に生存している方の割合)は62%だったという報告があります。
脊髄腫瘍の後遺症
脊髄腫瘍により周囲の正常な神経が障害される状況が長期間になったり、程度が強かったりするとたとえ治療を行ったとしても症状が改善せず後遺症として残ることがあります。
神経の障害が確定してしまうと、圧迫の原因を解除しても神経の自然回復が不十分となるためです。
また、腫瘍を摘出するために行う手術にも一定のリスクがあるのが事実で、それによる後遺症が残ることもあります。
悪性腫瘍では正常な神経と腫瘍の境界を判別するのが難しく神経を傷つけてしまう可能性があり、良性腫瘍でもできる場所によっては正常な神経をよけて処置を行う必要があり、それによる障害が起こることがあります。
腫瘍そのものや治療にともなっておこる脊髄腫瘍の症状は、一度確定すると回復は困難であり、生涯続く後遺症となります。
脊髄腫瘍に対する再生医療
神経そのものを治療する方法がない現在、脊髄腫瘍の後遺症に対して決定的な治療はありません。
本人の自然回復力に頼るしかないのです。
神経の障害に対する新たな治療法として、再生医療が発展してきています。
再生医療で使用するのは、神経の元になる「幹細胞」です。
幹細胞が分泌する神経保護作用のある因子の効果や、細胞が成長して神経となり機能する、つまり神経が再生することが期待されています。
脊髄損傷に対して保険適応が認められている治療であり、効果が認識されるとともに治療実績が積み重ねられています。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脊髄腫瘍による症状に対しては、「神経再生医療×同時リハビリ™」という再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脊髄腫瘍の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
脊髄腫瘍の種類、症状、後遺症、治療について解説しました。
まれな病気であり症状が特徴的とは言えないため、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどと診断されることも多い病気です。
MRI検査を行うことで診断可能となるため、症状が長く続いている場合には一度精密検査を受けると良いでしょう。
<参照元>
・「脊髄腫瘍」日本医事新報4968, 2019
・「脊髄星細胞腫の治療成績」脊髄外科29(3), 2015
・「脳腫瘍の分類と疫学」日本臨床79(1)増刊号1, 2021
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