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脳の病気によって起こる共同偏視とは

           

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この記事を読んでわかること

共同偏視とは
共同偏視のメカニズム
視床出血の場合


共同偏視とは、脳が障害されることによって両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことです。
脳梗塞や脳出血、てんかんなどの病気によって出現する非常に特徴的な所見であり、障害される脳の部位に応じて偏視の方向も変化します。
そこでこの記事では、共同偏視の原因やメカニズムなどについて詳しく解説していきます。

共同偏視とは

目
共同偏視とは、脳が障害されることによって両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことです。
本来、眼球は正中に位置していますが、右を見ようとすれば両目とも右に偏り、左を見ようとすれば両目とも左に偏るように、両目が同じ方向を見るようにできています。
このような正常な眼球運動は、運動の指令を出す脳と眼球周囲にある筋肉の収縮、さらには筋肉へ指令を伝える神経によって成り立っています。
例えば左の大脳皮質から出た運動の指令は、左右クロスして右の脳幹を経由して、左目の動眼神経と、右目の外転神経を刺激します。
逆に右の大脳皮質から出た運動の指令は、左右クロスして左の脳幹を経由して、右目の動眼神経と、左目の外転神経を刺激します。
眼球運動に関わるそれぞれの神経と筋肉は以下のような関係性があります。

  • 動眼神経→内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
  • 滑車神経→上斜筋
  • 外転神経→外側直筋

つまり、左を見たい時であれば、右の大脳皮質からの指令が左目の外転神経を刺激し、外側直筋が収縮するのと同時に、右目の動眼神経も刺激されて内側直筋が収縮し、左右両目とも左に偏ります。
このように、普段私たちの眼球運動は脳からの指令をもとに、それぞれの神経が筋肉を収縮させて成り立っています。
では、脳に何らかの異常が生じた場合、なぜ共同偏視が引き起こるのでしょうか?

共同偏視のメカニズム

共同偏視が引き起こるメカニズムは、脳に何らかの異常が生じて眼球運動を制御する神経経路に支障が出てしまうからです。
上記で示したように、眼球運動は大脳皮質から発せられた指令を元に、大脳内→脳幹→各神経→筋肉と指令が伝わって成り立っています。
この経路のどこが障害されるかで、共同偏視の出方も変わってきます。
頻度の多い病気を例に解説していきます。

被殻出血の場合

左右どちらかの大脳の被殻という部位に出血が起こると、大脳から脳幹への運動の指令が途絶してしまいます。
例えば、左被殻出血では左大脳皮質からの運動の指令が脳幹にインプットされない代わりに、右大脳皮質からの運動の指令は左の脳幹にインプットされます。
すると、右目の動眼神経と、左目の外転神経だけが刺激されるため、両目とも左側(患側)を見るようになります。
つまり、被殻出血=患側への共同偏視ということになります。

小脳出血の場合

小脳で出血が生じた場合、前方にある脳幹を圧迫する可能性があります。
例えば、左小脳出血によって左の脳幹が圧迫される場合を想定します。
右の大脳皮質から出た運動の指令は、左右クロスして左の脳幹を経由して、右目の動眼神経と、左目の外転神経を刺激しているため、左小脳出血による左脳幹圧迫によってこれらの神経に刺激がインプットされなくなります。
すると、左目の動眼神経と右目の外転神経だけに刺激が入るようになるため、両目とも右側(健側)を見るようになります。
つまり、小脳出血=健側への共同偏視ということになります。

視床出血の場合

左右どちらかの大脳の視床という部位に出血が起こると、対側の眼球の上方への運動をコントロールしている内側縦束吻側間質核と言われる部位が圧迫されます。
そのため、例えば右視床出血では、右内側縦束吻側間質核が障害され、左眼球が上方へ運動できなくなります。
さらに、左右の視床はとても距離が近いため、同時に反対側の内側縦束吻側間質核も圧迫されてしまいます。
すると、結局左右両方の眼球の上方運動が制限され、両目とも内下方(いわゆる、寄り目)への共同偏視をきたします。
視床出血=内下方への共同偏視ということになります。

まとめ

今回の記事では共同偏視のメカニズムについて解説させて頂きました。
共同偏視は、何らかの原因で脳が障害されることによって両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことです。
共同偏視を認めた場合は脳出血や脳梗塞などの可能性が高く、重大な後遺症を引き起こす可能性もあるため、早期の治療が求められる所見です。
また、これまで脳梗塞や脳出血で損傷した脳細胞は基本的に再生しないと考えられてきましたが、再生医療の発達に伴い損傷した脳細胞が回復する可能性があります。
再生医療では自身の幹細胞を抽出し、増幅させて体内に戻すことで、損傷した脳細胞の機能を再生させる効果が期待できます。
現在その知見が待たれるところです。

よくあるご質問

共同偏視ってどこの障害?
共同偏視とは、脳梗塞や脳出血に伴って左右の眼球がある一方向を向いてしまう症状を指します。
主に、視床出血や被殻出血、小脳出血などに伴い、眼球運動を支配する神経の中枢が障害されることで症状が出現します。

<参照元>
・看護Roo!:https://www.kango-roo.com/word/10703

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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