この記事を読んでわかること
・アルツハイマー型認知症とは
・アルツハイマー型認知症の症状
・アルツハイマー型認知症の原因
アルツハイマー型認知症とは、脳の一部にアミロイドβなどの異常タンパクが集積することで脳細胞が破壊され、萎縮していく変性疾患です。
主に記憶障害、行動障害などの症状が出現し、進行すれば日常生活にも大きな支障をきたします。
そこでこの記事では、アルツハイマー型認知症の原因や症状に関して詳しく解説していきます。
アルツハイマー型認知症とは
思考力や記憶力などの認知機能や行動能力が、日常の生活や活動を妨げる程度にまで失われる状態を認知症と言います。
認知症の原因は様々ですが、アルツハイマー型認知症が最も多い原因であり、次いで脳梗塞や脳出血の後遺症に伴う脳血管性認知症が挙げられます。
アルツハイマー型認知症のルーツは古く、1906年、アロイス・アルツハイマー博士が、死亡した女性患者の特殊な脳組織の変化に気付いたことが始まりでした。
記憶障害、言語障害、予測不可能な行動を伴って死亡した女性患者に対し、アルツハイマー博士が死後に患者の脳を調べたところ、脳細胞に多数の異常な凝集体と、線維のもつれを発見したのです。
以降、認知症に対して様々な研究がなされ、今では認知症の病態がかなり解明されてきました。
結論から言えば、アルツハイマー型認知症はなんらかの原因で脳細胞に「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれる異常タンパクが不可逆的に集積し、脳細胞を破壊、変性させる病気です。
アミロイドβやタウが脳細胞内に集積して形成した凝集体は、顕微鏡所見ではアミロイド斑や老人斑、神経原線維変化と呼びます。
やがて、これらの変化は脳内で記憶を形成するのに必要不可欠な、「海馬」と呼ばれる部位に広がり、認知機能障害を引き起こします。
具体的にどのような症状を引き起こすのでしょうか?
アルツハイマー型認知症の症状
発症初期には、迷子になる、物忘れが多くなる、判断力が低下する、人格が変化するなどの症状を認めます。
発症中期には、家族も認識できなくなる、新しいことを覚えられなくなる、幻覚や妄想などの症状を認めます。
最終的には、完全にコミニケーションが取れなくなる、寝たきりになる、排尿障害、嚥下障害などの症状を認め、死に至ります。
アルツハイマー型認知症の進行速度
アルツハイマー型認知症は、時間をかけてゆっくりと進行していく、比較的進行速度の遅い変性疾患です。
個人差もありますが、一般的には、発症してから3年ほど経過した後に認知症の症状が顕著となることで診断され、そこから6年の経過で死に至るケースが多いようです。
とは言え、異常タンパクの集積は不可逆的な変化であるため、アルツハイマー型認知症の発症率は加齢とともに増加していきます。
実際に、日本人の65歳以上の認知症患者数は2020年で約600万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています。
では、なぜアルツハイマー型認知症が発症してしまうのでしょうか?
アルツハイマー型認知症の原因
結論から言えば、現在に至るまでアルツハイマー型認知症の原因ははっきりと解明されていません。
現状では、様々な要因が複雑に重なり合って発症していると考えられています。
ここでは、主に6つの要因をご紹介します。
加齢性変化
前述したように、加齢に伴い異常タンパクが集積していくため、要因の1つと考えられています。
その一方で、65歳未満でも認知症を発症する人もいることから、加齢だけが原因であるとは言い切れないのが現状です。
喫煙
喫煙もアルツハイマー型認知症の原因の1つとして有力視されています。
喫煙による酸化ストレスの発生が動脈硬化のリスクを高め、脳細胞の変性の進行に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。
教育
教育を受けた年数が短いほど、アルツハイマー型認知症の発症率が増加するという報告もあります。
一説では、学校教育によって脳細胞の活動が盛んになり、脳に変化が起こっても対応しやすくなるからだと言われていますが、双方の因果関係は今のところ不明です。
アルコール
アルコールの過剰摂取もアルツハイマー型認知症の要因だと考えられています。
アルコールの過剰摂取に伴い、アルコールの代謝に必要なビタミンB1が体内で大量に消費され枯渇すると、脳内で急速に神経細胞障害が生じ、慢性期には認知症になりやすい傾向になると考えられています。
頭部外傷
頭部外傷も、アルツハイマー型認知症の要因だと考えられています。
遺伝
近年では遺伝子細胞学の発達がめざましく、研究が進めば進むほど、複数の特定遺伝子がアルツハイマー型認知症の発症に関わっていると考えられています。
今後、これらの原因遺伝子の特定が期待されます。
まとめ
今回の記事では、主にアルツハイマー型認知症の原因などについて解説しました。
アルツハイマー型認知症は、脳細胞に異常タンパクが集積していく不可逆的な変性疾患であり、比較的長い経過を経て進行していく病気です。
年々患者数は増加傾向にあり、今後さらなる少子高齢化が予想される日本では、認知症対策が急務と言えます。
そこで、既存の治療はもちろんのこと、近年では再生医療の発達も目覚ましく、注目度が増しています。
再生医療によって、アルツハイマー型認知症で変性した脳細胞が再生できれば、記憶の回復も期待できるため、治療の新たな選択肢になる可能性があります。
よくあるご質問
アルツハイマー型認知症の寿命は?
アルツハイマー型認知症の進行速度や経過には個人差がありますが、進行性の病気であるため、未治療であれば時間の経過とともに症状は確実に進行していきます。
最終的に呼吸器感染症での死亡が多く、平均余命は発症してから8年と言われています。
アルツハイマーかどうか調べるには?
診断のために最も重要な検査は、記憶障害などの認知機能を評価するための問診、診察になります。
そのほかに、脳の萎縮の程度を評価する頭部MRI検査や、脳の血流を評価する頭部MRI・ASL検査、脳血流SPECT検査なども診断に有用です。
脳FDG-PET検査も診断に有用ですが、日本では保険適応ではありません。
<参照元>
・アルツハイマー病情報サイト:https://adinfo.tri-kobe.org/worldwide-alzheimers-information/alzheimers-basics.html
・厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html
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