非骨傷性頸髄損傷の病態や症状と治療について | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

非骨傷性頸髄損傷の病態や症状と治療について

           

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この記事を読んでわかること

非骨傷性頸髄損傷とは
中心性頚髄損傷との違いは?
非骨傷性頸髄損傷の原因と症状の説明


非骨傷性頸髄損傷は、脱臼・骨折以外での脊髄の損傷を指し、中心性頚髄損傷の多くを占めます
症状は、頸部の圧迫感やしびれ、手足の麻痺、排尿や排便のしにくさなどです。
治療には、原因疾患の治療やリハビリテーションがありますが、後遺症を残すこともあります。
この記事では非骨傷性頸髄損傷について再生医療と関連させながら解説します。

非骨傷性頸髄損傷とは

頸椎カラー
非骨傷性頚髄損傷は、頚椎の骨傷、つまり脱臼や骨折を伴わずに生じる頚髄損傷です。
高齢者に多い疾患であることから、近年の日本では増加傾向にあります。
日本の調査では、1年間に5000人が脊髄損傷となり、うち2100人が非骨傷性頚髄損傷だったと報告されました。

中心性頚髄損傷との違いは?

中心性頚髄損傷の多くは非骨傷性頚髄損傷であるため、よく混同されます。
中心性頚髄損傷は頚髄の中心部が障害される頚髄損傷の総称です。
非骨傷性頚髄損傷は、頚髄のどこが障害されているかは関係なく、頚髄損傷のうち骨折や脱臼があるかどうかのみでの分類です。
よって、中心性頚髄損傷でもあり非骨傷性頚髄損傷でもある場合もありますし、非骨傷性頚髄損傷ではあっても中心性頚髄損傷ではない場合もあります。

非骨傷性頸髄損傷の原因と症状

原因の説明

非骨傷性頚髄損傷の原因は、衝撃による頚髄の損傷です。
もともと、高齢に伴い脊柱管が狭くなっている人、後縦靱帯骨化症や頚髄症で脊髄の圧迫がある人が、転倒などの外力によって衝撃が加わることで生じます。
圧迫が軽度の場合にはより大きな外力が必要ですが、元から圧迫が高度にある場合はより小さな外力で損傷してしまいます。

症状の説明

主な症状は手足の運動麻痺、感覚障害、しびれ、膀胱直腸障害です。
脳の疾患では左右どちらか一方に症状が出ることが多いですが、脊髄の疾患は左右対称性に症状が出るのが特徴です。
中心性頚髄損傷となった場合は、上肢に強く症状が出て、箸を使ったり、ボタンをとめたりといった細かな運動が行いづらくなります(巧緻運動障害)。
頚髄全体が障害を受けてしまうと、上肢だけでなく下肢にも症状が出てしまい、場合によっては全く動かなくなってしまうこともあります(完全麻痺)。
排尿や排便が上手く出来なくなる膀胱直腸障害も、非骨傷性頚髄損傷では珍しくありません。
高齢者では、ベッド臥床が続いてしまうと肺炎や心不全などの合併症も起こりやすく、後遺症が残らずとも人生に大きな影響を与える疾患とも言えます。

非骨傷性頸髄損傷の診断方法

症状(左右対称に近い手足の運動麻痺、感覚障害など)がある中で、画像検査(CTやMRI)が行われます。
画像検査では骨折・脱臼がないことが必須となります。

非骨傷性頸髄損傷の治療方法

大きく手術療法と保存療法に分けられます。

保存療法(薬物療法、物理療法、手術など)

麻痺が軽い場合(Frenkel分類・AISA分類D以上)は安静や頚椎カラー固定が用いられます。
入院時にFrenkel分類B(損傷部位以下の運度喪失・知覚残存)やC(運動残存[非実用的])で脊髄圧迫が20%以下のうち、1年後にFrenkel分類が1段階以上回復したのは75%、D(運動残存[実用的])まで回復したのは65%でした。
また、脊髄圧迫が20%以上の症例では、1年後に1段階状の改善は94.1%、D以上への改善は64.7%でした。

手術療法

頸椎椎弓形成術など、除圧(圧を逃がして脊髄を保護する)手術が行われます。
手術の時期に関しては専門家の間でも議論されてきましたが、2021年に発表された研究では24時間以内の早期手術が、2週間の待期的な手術と比較して麻痺の回復するスピードが早いということがわかりました。

非骨傷性頸髄損傷と再生医療

神経は再生がほとんどしない組織であり、かつて脊髄損傷は一旦後遺症が残ってしまうと一生残るものとされてきました。
近年では、iPS細胞や肝細胞増殖因子(HGF)、Muse細胞(多能性幹細胞)などの再生医療の研究が進み、効果が期待されています。
その中でも、骨髄間葉系幹細胞を使用した再生医療は実績を最も積んでいる治療法の一つです。
当院ではエビデンスに基づいたニューロテック®として、脊髄損傷の患者様に骨髄間葉系幹細胞の点滴投与を行っています。
骨髄間葉系幹細胞を点滴しながらリハビリテーションを行う、神経再生医療×同時リハビリ™でより高い効果を獲得出来るように努めています。

まとめ

今回は高齢化とともに社会問題にもなりつつある、非骨傷性頚髄損傷について解説しました。
軽微な外力としても、重篤な後遺症が残ってしまう場合があります。
ニューロテック®も含め、更なる治療の発展が望まれます。

Q&A

非骨傷性頚髄損傷は完全に治りますか?
非骨傷性頸髄損傷は、脱臼・骨折以外での脊髄の損傷を指します。Frankel分類で1段階以上改善したのは75〜94%との報告がありますが、必ず完治するとは言えません。

非骨傷性頚髄損傷の原因は?
非骨傷性頚髄損傷の原因について調査した日本の研究では、転倒38%、転落38%、交通事故18%、その他6%と報告されています。作業中の高齢者や飲酒後の受傷が目立って報告されました。

<参照元>
・高齢者における非骨傷性頚髄損傷の検討:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/2/27_161/_pdf/-char/ja
・受傷機転からみた非骨傷性頚髄損傷の検討:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/66/1/66_19/_pdf/-char/ja
・Regenerative medicine for spinal cord injury: focus on stem cells and biomaterials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32421405/


あわせて読みたい記事:日本人に多い後縦靭帯骨化症とは?

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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