この記事を読んでわかること
・脳腫瘍の発症率
・脳腫瘍の種類と余命
・脳腫瘍に対する再生医療
腫瘍とはいわゆる「できもの」のことで、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
良性腫瘍とは周りの組織を破壊して入り込んだり、他の臓器へ転移したりすることがほとんどない腫瘍のことで、いぼやほくろ、子宮筋腫などが含まれます。
悪性腫瘍は肺癌や大腸癌などのことで、進行すると全身に転移して致命的になることもある疾患です。
腫瘍は体中どこにでも発生する可能性があり、脳も例外ではありません。
脳にできる腫瘍にも良性と悪性のものがあり、腫瘍の発生した場所や性質によって病状や治療法は大きく異なります。
この記事では脳腫瘍の分類と余命、後遺症に対する再生医療について解説します。
脳腫瘍の発症率
脳腫瘍という言葉を聞いたことはあっても、どれくらいの方がかかるのかピンと来ないかもしれません。
日本では2016年1月から「全国がん登録」が始まり、がんと診断された全ての人のデータを集計しています。
特に脳腫瘍については良性・悪性とも登録されています。
それによれば原発性脳腫瘍の発生率は人口10万人あたり16.3人となっています。
そのうち悪性は4.2、良性が12.1とのことです。
原発性とは脳から発生した腫瘍という意味で、他の臓器から転移してきた腫瘍は含まれていません。
転移性脳腫瘍は全脳腫瘍の15-20%と言われているので、合計すると脳腫瘍の発生率は概ね人口10万人あたり20人程度と考えて良さそうです。
脳腫瘍の種類と余命
脳腫瘍は様々な種類があり、世界保健機関(WHO)により全部で109種類に分類されています。
その中でも比較的頻度が高いものについて、余命に関するデータとともに紹介していきます。
余命については5年生存率(発症5年後に生存していた方の率)の数値を記載します。
髄膜腫
脳を覆う髄膜から発生する腫瘍が全体の36%を占め、そのうち代表的なのが髄膜腫です。
髄膜は脳全体を覆うため頭蓋内のあらゆるところに発生します。
ほとんどが良性であるものの、大きくなると脳を圧迫しててんかん発作などの症状を起こします。
手術による摘出が有効で、5年生存率は90%以上です。
ただしまれに悪性のものがあり、その場合5年生存率は56.8%となります。
下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫
脳にある下垂体という場所や下垂体近くの頭蓋咽頭管というところから発生する良性腫瘍です。
全体の17.5%を占める頻度の高い腫瘍です。
大きくなると周辺の圧迫による症状や、下垂体腺腫では様々なホルモンを産生する性質を持つことがありそれによる症状を起こします。
5年生存率は97%以上となっており、余命は比較的長い脳腫瘍であると言えます。
グリオーマの種類とその余命
脳の神経細胞を取り囲み、保護や機能を高める役割を担う神経膠細胞(グリア)から発生する腫瘍のことをグリオーマといいます。
神経上皮腫瘍に分類される腫瘍はグリオーマ以外にも数十種類あるのですが、頻度が高いのはグリオーマです。
神経上皮腫瘍は全体の16.4%を占めています。
グリオーマは悪性度や組織型により星細胞腫、乏突起膠細胞腫、膠芽腫など呼び方が変わります。
悪性度はグレード1から4に分類され、最も悪性度が高いのが膠芽腫です。
5年生存率はグレード1で約95%、グレード2で76.9- 91.9%(同じグレードでも組織型によって異なります)、グレード3で43.2- 62.6%、グレード4で16.0%となっています。
グレード4の膠芽腫はかなり治療が難しいことが分かります。
神経鞘腫
神経線維はシュワン細胞という細胞に覆われているのですが、このシュワン細胞から発生する良性腫瘍が神経鞘腫です。
全体の9%程度を占める腫瘍で、手術による摘出が有効です。
5年生存率は98.4%となっています。
リンパ腫・血液系腫瘍
悪性リンパ腫は全身のリンパ系組織から発生する可能性のある血液のがんです。
脳からも発生することがあり、高齢者に多く脳の深部に発生します。
血液系の腫瘍は全体の4.2%を占めます。
脳から発生した悪性リンパ腫の5年生存率は48.2%と予後の厳しい疾患です。
再生医療が脳腫瘍治療に果たす役割
脳腫瘍は周囲の神経を圧迫したり直接入り込んだりすることで、障害を起こします。
脳腫瘍による頭痛や体調不良など、何らかの症状が起きている場合にはすでに神経に障害が及んでいると考えられます。
直接的な治療は手術ということになりますが、手術にも一定のリスクはあり周囲の正常な神経を傷めてしまうかもしれません。
また悪性腫瘍の場合は正常な神経に入り込んでいるため、全てを取り除くのは難しく手術の難度が非常に高くなります。
そのようにして発生した神経の障害は、後遺症となって症状が残る可能性があります。
神経の後遺症は治療が難しく、有効な手立てがない場合も少なくありません。
そこで、新たな神経の治療法として期待されているのが、再生医療です。
再生医療は、グリオーマ治療において今後の希望として注目されています。
再生医療では神経の元になる細胞を治療に応用します。
神経を保護し修復する作用とともに、神経を再生する効果が期待されています。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
これにより、脳腫瘍の再発リスクを軽減し、患者のQOL(生活の質)向上が期待されています。
脳腫瘍やその治療による後遺症にお悩みの方やご家族の方はぜひご相談ください。
脳腫瘍の余命についてのまとめ
脳腫瘍の分類と余命、後遺症に対する再生医療について解説しました。
体のどこにでもできる可能性のある腫瘍ですが、脳にできた場合の症状や後遺症は生活への影響が非常に大きいものになります。
早期発見が重要なため、気になる症状がある場合には早めに医師へ相談しましょう。
よくあるご質問
良性脳腫瘍の余命は?
良性脳腫瘍は手術による摘出が有効なため、5年以上の生存率は90%以上と言われています。
脳腫瘍が大きくなると、脳を圧迫することによりてんかん発作などを発症することがありますので、注意が必要です。
<参照元>
・「脳腫瘍の分類と疫学」日本臨床79(1), 2021
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