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脳梗塞後に発症するてんかんとそのリスク管理

           

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この記事を読んでわかること

てんかんとけいれん発作について
脳梗塞後のてんかんの特徴
予防策と予後


脳梗塞に引き続いて発生する合併症のひとつに、てんかんがあります。
脳梗塞後に発症するけいれん発作には、脳梗塞後7日以内に発症する早期発作、それ以降に発症する遅発発作があります。
脳梗塞による神経機能障害の程度が重い、遅発発作であるなどの危険因子があり、かつなかなか有効な抗てんかん薬がないという課題もあります。

てんかんとけいれん発作について

間代発作と強直発作

看護roo!さんよりイラスト拝借


まず、てんかんとけいれん発作について、ご説明します。

てんかんとは?

てんかんは、けいれん発作が繰り返し起す特徴を持つ、慢性的な疾患です。
アルコールの禁断症状や極度の低血糖など、何らかの知られている原因がないけいれん発作が繰り返し起こった場合、てんかんと診断されます。
てんかんの発作は、外傷や脳卒中などによる脳への損傷が関係している場合もありますが、多くの場合、原因は全く不明です。

けいれん発作とは?

けいれん発作とは、てんかんの症状のひとつで、突然脳内で制御不能な電気的異常活動が起こることです。
けいれん発作が起きると、行動、感情、意識レベルが変化することがあります。
多くは手足をバタバタとしたり、逆に引きつったように硬直させたりします。
けいれん発作には多くの種類があり、その症状や程度は様々です。
その種類は、脳のどの部分で異常な電気活動が始まり、どの程度脳内で広がるかによって異なります。
けいれん発作の多くは、30秒から2分程度で終わります。
もし5分以上続く場合は、緊急事態として救急要請すべきです。
ほとんどのけいれん発作はけいれんを止める作用のある薬物を使用することでコントロールできます。
しかしけいれん発作の管理は、日常生活に大きな影響を及ぼしかねません。

脳梗塞後のてんかんの特徴

間代発作と強直発作
次に、脳梗塞後のてんかんの特徴についてご説明します。

発生頻度

脳梗塞後のてんかんは、成人てんかんの約11%を占め、60歳以上のてんかんの45%を占めると報告されています。
また脳梗塞を発症した人たちのうち、てんかんを発症する人は、およそ7%程度にみられると考えられており、脳梗塞を発症した初日と6-12ヵ月後と、2つの時期にピークがあることわかっています。
なお脳梗塞発症後1週間以内のけいれんを早期発作、それ以降に発症するけいれんを遅発発作と呼びます。
アメリカのミネソタ州で行われた研究では、489名の脳梗塞の方をフォローしています。
そのうち7.2%がてんかんを発症していますが、発症から14日以内にけいれんを起こした人が40%で、大多数が最初の24時間以内でした。
またけいれんを起こした残りの人は、脳梗塞発症後に中央値で13.8か月後に発症していました。

(出典:Bryndziar T et al. Seizures following ischemic stroke: Frequency of occurrence and impact on outcome in a long-term population-based study. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2016;25(1):150-6.)

発生の危険因子

脳梗塞後にてんかんを発症する危険因子に、脳梗塞発症初期の神経障害の重症度、若年患者(65歳未満)、てんかんの家族歴などが挙げられています。
特に脳梗塞後の麻痺が強い場合、つまりてんかんを発症する可能性が高くなると言えます。
また脳梗塞後にけいれん発作を起こすタイミングが遅い遅発発作の場合や多彩なけいれんの症状を呈する場合も、その後てんかんを発症する可能性が高くなることが指摘されています。

(出典:Lin R, et al. Risk of post-stroke epilepsy following stroke-associated acute symptomatic seizures. Front. Aging Neurosci. 13 September 2021 | https://doi.org/10.3389/fnagi.2021.707732

なお脳梗塞後のてんかんの診断は、臨床症状から行うことが一般的です。
脳波は異常が検出されにくく、そのほかの画像検査などでも、適切に診断することは困難です。

てんかんの管理

てんかん発作が続く場合、適切な治療が行われなければ、日常生活や余命に影響を与えることがあります。
特に、発作の頻度や重症度によっては、突然死(SUDEP)のリスクが高まるため、定期的な診療と薬物管理が不可欠です。
また、てんかんの管理には、抗てんかん薬の継続使用と、ストレス管理が重要です。

予防策

予防策としては、基本的にけいれんを起こさないようにする抗てんかん薬の内服があります。
しかし残念ながら脳梗塞後のてんかんにおいて、特に効果の認められている抗てんかん薬はありませんので、一種類程度の抗てんかん薬の内服を続けることが一般的です。
なお最近開発されている薬剤のなかに、効果が期待できるものもありますので、今後は治療法が変わっていくかもしれません。
同様に、再生医療も今後期待される治療法のひとつです。
現時点では、てんかん発作に対する再生医療として、骨髄由来間葉系幹細胞の効果を調べる臨床研究が開始されていますがまだ研究段階になります。
しかし、再生医療では傷ついた脳細胞が修復されることから、理論的にはてんかんの予防効果があると考えられます。

てんかん患者の余命と突然死の危険性について

早期発作の場合、比較的予後は良好ですが、遅発発作ではけいれんを何回も繰り返すことが知られています。
なお脳梗塞後のてんかんが、死亡率にどのように影響しているのかについては、まだ一定の見解は得られていないようです。

脳梗塞とてんかんについてのまとめ

脳梗塞とてんかん、けいれん発作について説明しました。
脳梗塞の急性期医療の質が向上し、多くの方が急性期を乗り越えることができるようになると、ますますけいれんを発症する方が増える可能性があります。
少しでも安心して脳梗塞後の生活を送ることができるように、脳細胞そのものの修復を行う再生医療のさらなる進歩が期待されるところです。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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