この記事を読んでわかること
・シャルコーマリートゥース病とは
・シャルコーマリートゥース病の原因
・シャルコーマリートゥース病の症状
シャルコーマリートゥース病とは、末梢神経が障害されることで筋力低下や感覚低下を引き起こす遺伝性疾患です。
発症すると、主に下肢の筋力低下を認め、症状は時間の経過とともに緩徐に進行し、稀に寝たきりになる方もいます。
この記事では、シャルコーマリートゥース病の症状や原因・治療法などについて解説していきます。
シャルコーマリートゥース病とは
シャルコーマリートゥース病とは、「Charcot」「Marie」「Tooth」ら3人によって報告された遺伝子変異による末梢神経疾患の総称です。
通常、運動の刺激は脳の大脳皮質から起こり、脳幹→脊髄→末梢神経→筋肉の順に伝達されます。
逆に、感覚の刺激は皮膚→末梢神経→脊髄→脳幹の順に伝達され、最終的に大脳皮質へ届きます。
つまり末梢神経とは、脊髄から分岐して各筋肉にまで運動の刺激を伝達する運動神経や、皮膚の痛みや温度などの刺激を脊髄まで伝達する感覚神経の総称です。
そのため、なんらかの原因で末梢神経が障害されると、筋肉に運動の刺激が伝達されにくくなり筋力低下を認め、感覚神経が障害されることで痛みやしびれを自覚することがあります。
発症者に男女差はなく、発症年齢は0〜20歳と50〜60歳の二峰性を呈し、欧米では2,500人に1人、日本でも10,000人に1人と稀な病気です。
シャルコーマリートゥース病の原因
シャルコーマリートゥース病の原因は、遺伝子の変異です。
原因遺伝子はすでに100種類以上明らかになっており、中でも「PMP22」というタンパク質をコードしている遺伝子の変異は最も多く、このタイプの病型は発症者の約40%を占めるほどです。
遺伝形式はさまざまであり、常染色体優性遺伝・常染色体劣性遺伝・X染色体性遺伝など多様で、親から子供に100%遺伝するわけではありません。
末梢神経はまるで電線のような形態であり、周囲を絶縁体の役割を果たす髄鞘と呼ばれる鞘で囲まれ、内部を軸索と呼ばれる神経細胞が走行しています。
遺伝子変異によってシャルコーマリートゥース病を発症すると、軸索や髄鞘が破壊され、うまく運動や感覚の電気信号が伝達できなくなることでさまざまな症状を発症します。
シャルコーマリートゥース病の症状
シャルコーマリートゥース病の主な症状は、四肢の遠位部(足や下腿・手・前腕など)に優位な筋力低下や感覚低下です。
幼少期から軽度の症状を認める方も多く、時間の経過とともにゆっくり進行していきます。
特徴的な症状として、下記の2つが挙げられます。
- 凹足:足の筋力が不均衡な状態が続き、土踏まずの部分が通常よりも凹んでしまう状態(扁平足と逆)
- 鶏歩:足関節の筋力低下に対し、大腿の筋力が維持されるため、歩行時に鶏のように大げさに太ももを挙上する状態
下肢の症状が出現し、さらに進行すると手や前腕の筋力低下を認め、その後、感覚低下が生じるのが一般的です。
末梢神経は手足のみならず頭部にも走行しているため、人によっては視神経や蝸牛神経に支障をきたし、目が見えにくい・音が聞こえにくいなどの症状を合併することもあります。
シャルコーマリートゥース病の治療
結論から言えば、遺伝子の変異を止める術がないため、シャルコーマリートゥース病を根治できる治療法はありません。
そのため、現状行われている治療は下肢症状に対する装具療法や、筋力増加のためのリハビリテーションなどの理学療法です。
長期間の下肢の筋力低下によって下肢が変形することも多く、装具療法によるフットケアが日常生活の大きな手助けとなります。
一方で、筋力増加のためのリハビリテーションや作業療法は、仕事や日常生活の大きな手助けとなります。
場合によって、下肢の変形が高度な場合は整形外科手術を行うこともあります。
また、シャルコーマリートゥース病は末梢神経のみの障害であり、脳や脊髄などの重要な神経組織に影響を与えないため、致死的な疾患ではありません。
そのため、食事や運動に気をつけて、太りすぎないように日々を過ごせばある程度日常生活を楽しく維持できます。
実際に、多くの発症者は自力歩行または杖歩行が可能ですが、車椅子を使用される方は約20%、寝たきりになる方は1%とされています。
まとめ
今回の記事ではシャルコーマリートゥース病について解説しました。
シャルコーマリートゥース病は難病指定されている末梢神経疾患であり、ある特定の遺伝子の変異によって幼少期から発症しやすい病気です。
運動や感覚を伝達する末梢神経が障害されると、発症してから緩徐に筋力低下や感覚低下が進行していきます。
しかし、現状の医療をもってしても損傷した神経細胞を再生する術はなく、病気と付き合っていくための装具療法や理学療法が行われているのが現状です。
そこで、近年では再生医療が非常に注目されています。
遺伝子変異によって破壊された末梢神経の軸索や髄鞘などの神経細胞を再生医療によって再生すれば、緩徐に進行する末梢神経症状を食い止められる、もしくは改善できる可能性もあります。
現在その知見が待たれるところです。
よくあるご質問
シャルコーマリートゥース病の特徴は?
シャルコーマリートゥース病の特徴は、下肢の特に遠位側に症状が強く出現することです。
具体的に言えば、足や下腿の筋力低下が顕著であり、足底の土踏まずの部分が大きく凹む凹足や、太ももを大きく挙げて歩く鶏歩などの症状が代表的です。
シャルコーマリートゥース病の初期症状は?
シャルコーマリートゥース病の初期症状は主に下肢の筋力低下から始まり、それに伴い足や足の指の変形、足の筋力低下が引き起こります。
その後、足の感覚低下、手や手首の筋力低下が生じ、徐々に日常生活が円滑に送れなくなっていきます。
<参照元>
・難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/3773
・MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/09-脳、脊髄、末梢神経の病気/末梢神経疾患/シャルコー-マリー-トゥース病
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