この記事を読んでわかること
・錐体路と錐体外路の障害について
・錐体外路障害の原因
・薬剤性パーキンソニズムとは?
ご存知の通り、人の体を動かしているのは脳です。
脳からの指令はある神経回路を通って体に伝わります。
その回路には錐体路、錐体外路という名前がついておりそれぞれに役割があります。
脳卒中など脳の病気では錐体路、錐体外路どちらも障害される可能性があります。
この記事では、錐体外路障害について解説します。
錐体路と錐体外路の違いとは?運動指令の伝達メカニズム
錐体路の経路と機能
錐体路と錐体外路は体の運動に関わる情報を伝える神経回路です。
錐体路は脳の運動野というところから発生し、脊髄を通って体の筋肉へ達します。
自分の意思で体を動かそうとする時は、運動の指令は主に錐体路を通ります。
脳卒中などで体が麻痺して自分の意思通りに動かないのは、錐体路が障害されている状態です。
特に錐体路が損傷した場合、手足の動きがぎこちなくなり、歩行困難やバランスの喪失が見られることが多く、患者の日常生活に大きな影響を及ぼします。
錐体外路の経路と機能
一方、錐体外路は姿勢を維持するための筋肉の緊張や平衡感覚など、体が反射的に行う運動の情報を伝えます。
私達は立ち上がる、歩く、座るなどあらゆる動作で無意識のうちにバランスをとり動作を調整しています。
錐体外路障害ではその神経回路が障害されることで、様々な症状を引き起こします。
錐体外路が障害された場合の症状
錐体外路障害の代表的な症状はパーキンソニズムです。
パーキンソン病で見られるような筋強剛、振戦、動作緩慢が起こります。
また体が勝手に動いてしまうジストニア(不随意運動)、ジスキネジアといった症状も錐体外路障害の一つです。
自分で自分の体を十分にコントロールできなくなるため、日常生活への影響が大きい障害であると言えます。
錐体外路障害の原因
錐体外路障害を引き起こす疾患として代表的なのは脳出血や脳梗塞などの脳卒中です。
脳出血や脳梗塞は脳の中のどこにでも起こる可能性があり、錐体外路のどこかに障害が発生すると錐体外路障害の症状が起こることになります。
パーキンソン病は錐体外路の一部である脳の「黒質」というところで神経細胞が障害され、ドパミンが減少することで錐体外路障害を引き起こします。
統合失調症などの治療に使用される抗精神病薬はドパミンの受容体を遮断する効果があるため、副作用として錐体外路障害を起こすことがあります。
他にも一部の吐き気止めや血圧降下剤、頻尿治療薬などが錐体外路障害の原因になる可能性があるとされています。
錐体外路障害の治療
錐体外路障害による症状が強く日常生活への影響が強い場合、症状を和らげるための薬物治療が行われます。
ドパミンを補充する薬や、ドパミンの作用を強めるための薬(抗コリン薬)が使用されます。
抗精神病薬などの薬が原因と考えられる場合は、原因薬剤を減量または中止することが試みられます。
ただし治療薬の効果には限界があることや、原因薬剤を減量するのが難しいケースがあることなどから治療がうまくいかずに症状が続いてしまう場合も少なくありません。
錐体外路障害のリハビリ方法
リハビリテーションでは、筋力回復や巧緻運動の改善を目指す訓練が行われます。
運動麻痺の回復には、脳と体の神経回路を再活性化するための反復的な訓練が重要であり、リハビリプログラムは患者一人ひとりの状態に合わせて設計されます。
再生医療や神経再生の研究も進んでおり、近い将来、より効果的な治療法が提供される可能性が期待されています。
錐体外路障害に関わる再生医療の可能性
錐体外路障害は神経の障害であるため、治療は簡単ではありません。
神経の障害は一度確定してしまうと、回復を望むことはできないからです。
神経の障害を回復し、再生しようとするのが再生医療です。
再生医療では神経の元になる「幹細胞」を使用して治療を試みます。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
錐体外路障害に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
錐体外路障害の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
錐体外路障害についてのまとめ
錐体外路障害について、解説しました。
パーキンソニズムや不随意運動は脳卒中後のリハビリがうまく進まない原因となりやすい症状です。
再生医療や脳の磁気刺激、ロボットリハビリなど最新の治療による効果が期待されています。
よくあるご質問
治療の副作用としての錐体外路障害とは?
錐体外路障害は脳の病気や血管障害だけでなく、治療薬の副作用として起こる可能性があります。何らかの薬を使用したことで「動作が遅くなった」「声が小さくなった」「表情が少なくなった」などの症状が発生した場合、副作用の可能性を考える必要があります。
薬剤性パーキンソニズムとは?
体内のドパミンが不足して起こるパーキンソン病と同じような症状が薬剤によって引き起こされることがあり、それを「薬剤性パーキンソニズム」といいます。原因として多いのは抗精神病薬など精神科領域の医薬品ですが、他にも一部の吐き気止めや血圧の薬が原因となることがあります。
<参照元>
・「錐体外路症状」薬局67(12), 2016
・「錐体外路障害はなぜ起こるの?」BRAIN NURSING 36(6), 2020
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