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脳卒中による片麻痺後の歩行の特徴とは

           

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この記事を読んでわかること

脳卒中と片麻痺の関係
脳卒中による片麻痺後の歩行の特徴とは
片麻痺の生活への影響は?


脳卒中によって左右片側の半身が麻痺してしまう片麻痺が生じると、歩行などの基本的動作に問題が生じ、日常生活にも支障をきたします。
そこで、早期からのリハビリが重要となりますが、片麻痺における歩行の特徴を理解した上で行った方が効果的です。
そこでこの記事では、片麻痺の方に共通する歩行の特徴について詳しく解説していきます。

脳卒中と片麻痺

片麻痺とは、身体の左右どちらかの半身に麻痺が生じた状態のことを言います。
主に、脳梗塞や脳出血などの脳卒中によって、左右どちらかの脳が損傷される事で生じます。
本来、歩行などの運動は下に示す錐体路と呼ばれる指示系統で成り立っています。
大脳皮質の中心前回→内包後脚→中脳の大脳脚→延髄の錐体交叉→脊髄の前角→末梢神経
大脳皮質の中心前回から運動の指令が始まり、内包後脚や中脳の大脳脚を通過し、徐々に下降していきます。
延髄の錐体交叉で錐体路は左右反転し、その後頸髄や胸髄、腰髄へと下降していき、それぞれのレベルの脊髄の前角という部位から末梢神経に運動の指令を伝達します。
延髄の錐体交叉で錐体路が左右反転するため、右脳が損傷すると左半身が、左脳が損傷すると右半身が麻痺するわけです。
片麻痺によって歩行などの基本的動作が障害されるため、日常生活に大きな支障をきたします。
だからこそ、片麻痺患者における歩行機能の改善はリハビリテーションにおける重要な目標の1つになります。
片麻痺患者の歩行の特徴を理解しておく事で、より効果的なリハビリを得ることができます。

脳卒中による片麻痺後の歩行の特徴とは

安全な上り下り
では、具体的に片麻痺後の歩行にはどのような特徴を認めるのでしょうか?
それぞれについて詳しく解説していきます。

歩行速度が遅い

片麻痺を認める場合、左右どちらかの半身が自由に動かないため通常よりも歩行速度が遅くなります。
具体的には、健常者の平均歩行速度が約1.3m/sであるのに対し、片麻痺患者では0.23〜0.73m/sと言われています。

歩行周期が長い

片足に着目した時、踵が地面に着いて(踵接地)から足の指先が地面を離れるまでを立脚期と言い、足の指先が完全に地面を離れてから次に地面に接地するまでを遊脚期と言い、この一連の流れを歩行周期と言います。
片麻痺患者では運動が制限されるため、健常者と比較して歩行周期も長くなります。

ストライド長が短く、特に麻痺側から非麻痺側へのステップ長が短い

着地した足の踵から、同じ足が再び着地した時の踵までの距離をストライド長と言います。
麻痺側の下肢では、骨盤を中心とする「振り子運動」が効率よく生じないため前方への推進力が損なわれてしまい、ストライド長が短くなる傾向にあります。
また、着地した足の踵から次の着地した足の踵までの距離をステップ長と言います。
麻痺している足では重心の前方への移動を支えきれないため、どうしても麻痺側の立脚期に非麻痺側の下肢が早く地面に着いてしまうため、ステップ長は特に短くなる傾向にあります。

麻痺側の踵接地が困難であり、つま先あるいは足底全体で接地する

正常歩行では、立脚期に踵から接地し、その後足底全体を接地します。
立脚後期には踵から地面を離れ、最後に足先が地面から離れて遊脚期に入ります。
しかし、麻痺側の足関節は可動域が小さく、特に遊脚期には底屈したままである事が多いため、いざ足を地面に着けようとしても、踵ではなく足先から接地してしまう傾向にあります。

立脚後期に麻痺側のつま先離れが悪く、遊脚期にクリアランスが取れない

歩行時のクリアランスとは「遊脚期における足底部から床面までの距離」であり、歩行中のつまずきやすさを表す指標です。
クリアランスは、股関節や膝関節の屈曲、足関節の背屈によって規定されていて、遊脚期にこれらの運動が起これば十分なクリアランスが確保されます。
しかし、麻痺側ではこれらの関節の可動域が小さくなり、足関節は特に遊脚期に底屈したままである事が多いため、クリアランスが取れなくなる傾向にあります。

立脚期に麻痺側の足関節が内反し、不安定である

麻痺側の足関節は内反してしまい、特に立脚期に不安定になる傾向にあります。
これは、脳梗塞などによって下腿三頭筋(いわゆる、ふくらはぎの筋肉)の筋緊張が亢進するためだと考えられています。

立脚期に麻痺側の膝関節が不安定あるいは過伸展である

股関節と足関節が歩行運動を発生させているのに対して、膝関節はそれに伴う衝撃を吸収する役割を担っています。
片麻痺患者の膝関節は、立脚期において過伸展になるケースと軽度屈曲するケースに分かれますが、これは歩行を維持するために様々な筋肉を駆使した結果であり個人差があります。

まとめ

今回の記事では脳卒中に伴う片麻痺後の歩行の特徴について解説させて頂きました。
麻痺した下肢では立脚期に重心の前方移動を支えきれず、ストライド長やステップ長が短縮してしまいます。
また、遊脚期に足関節が底屈してしまいクリアランスを確保できないため、つまずく可能性が高くなってしまいます。
正常な歩行に近づけるためには立脚期における股関節の伸展と、足関節の背屈が重要であり、リハビリによる訓練が必要不可欠です。
また、リハビリの効果を促進させる方法として再生医療も注目されています。
再生医療は、自身の血液から抽出した幹細胞を増殖して体に戻すことで、損傷した神経細胞の機能を回復する事が出来ます。
脳卒中によって損傷した運動神経の機能が回復すれば、リハビリの効果を増幅させる効果が期待でき、現在その知見が待たれるところです。

Q&A

片麻痺の生活への影響は?
歩行速度が落ちてしまう程度の軽度から、自分では身の回りの動作ができなくなるほどまで様々です。指を使った細かい動作や調理や爪切りなどの道具を使う動作、自動車の運転や復職・就職など多くの場面に影響があります。

<参照元>
・理学療法科学:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/17/1/17_1_3/_pdf


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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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