この記事を読んでわかること
・脳出血の原因や種類
・脳出血の症状について
・脳出血の5年生存率と平均余命について
当記事では脳出血後の5年生存率や平均余命について詳しく解説しています。
今回の記事を読めば、脳出血の症状や原因、種類など基本的なことだけでなく、平均余命や生存率、脳出血の再生医療に関しても理解することができます。
ぜひ最後までお読みください。
脳出血とは?原因や種類、症状について
そもそも脳出血とはどんな病気なのか、はじめに説明していきます。
脳出血は脳卒中の一種であり、脳出血、頭蓋内出血、または脳内出血とも呼ばれます。
脳内の動脈が破裂し周囲の組織に局所的な出血が起こることで引き起こされます。
脳出血をよりよく理解するには、さまざまな種類を理解することが重要です。
まず、出血が発生する主な脳の領域が2つあり、出血は脳組織の内側で発生する場合と、脳組織の外側で発生する場合があります。
脳組織の内側での出血(脳内及び脳室内出血)
1つ目の種類として、脳組織自体の内部で発生するのが、脳内出血と脳室内出血です。
- 脳内出血
- 脳葉や橋、小脳など脳幹を含む脳組織の出血です。
- 脳室内出血
- 脳脊髄液が産生される脳の特定の領域 (空洞) である脳室で発生します。
脳組織の外側での出血(頭蓋内出血、脳組織外出血)
脳には、頭蓋骨と実際の脳組織の間にある3つの膜層 (髄膜) があり、脳を覆い保護しています。
出血が、硬膜、くも膜、および軟膜の3つの膜の間のどこでも発生する可能性があります。
- 硬膜外出血
- 頭蓋骨と最も外側の膜層である硬膜の間の出血
- 硬膜下出血
- 硬膜とくも膜の間の出血
- くも膜下出血
- くも膜と軟膜の間の出血
脳出血は、頭蓋骨の内側で実際の脳組織の外側にある髄膜内で発生する可能性があります。
脳出血の原因や症状は?
脳出血の危険因子と原因はいくつかあり、最も一般的なものは高血圧です。
長期間にわたって血管壁を弱め、出血の原因となる可能性があります。
そのほかにも外傷による脳出血や動脈瘤が破裂して脳出血を引き起こす可能性があります。
脳出血の症状は、関与する脳の部位によって異なります。
一般的な脳出血の症状には次のようなものがあります。
- 体の片側のしびれまたは麻痺
- 頭痛
- 吐き気と嘔吐
- めまい
- 発作
- 飲み込みにくさ
- 視力低下
- 意識レベルの低下(意識不明)
- 呼吸困難と異常な心拍数(特に出血が脳幹にある場合)
脳出血の5年生存率と平均余命について
では、脳出血の平均余命はどのくらいなのでしょうか?
平均余命とは、脳出血発症後にどのくらい生きられるかを示したものです。
脳出血の5年生存率は約26.7%であり、10年生存率は 24.1%と言われており、平均余命は10-12年程度と考えられています。
また、一度脳出血を起こした人の多くは、次の数年以内に再発することがよくあります。
2回目の脳卒中の後はさらに多くの脳の部位が損傷を受けるため、その後の生存率は低くなります。
どれだけ早く治療を受け、どれだけうまく治療を続けられるかは、余命の長さに大きく関係します。
治療が早ければ早いほど、脳出血後の余命を延ばすことができるのです。
脳出血の5年生存率に関わる要因はある?
また、脳出血の5年生存率には以下のような要因が生存率に関与することがわかっています。
- 発症年齢
- 脳出血の重症度(意識レベルなど)
- 脳出血の種類
- 基礎疾患の有無
特に脳出血の重症度と患者の年齢は、脳出血後の生存の可能性を予測する上で最も重要な2つの要因です。
どのように関わるのか、それぞれ詳しくみていきましょう。
①高齢になるほど5年生存率は低くなる
1997年から1998年の間にボスニアヘルツェゴビナで行われた研究では脳卒中を起こした836人の患者を分析したところ、1か月後に患者の36%が脳出血により死亡したというデータがあります。
この調査によると、50歳以下の生存率は57%ですが、70歳以上の生存率は9%と大幅に低くなっています。
年齢が脳卒中後の長期生存にとって重要な要素であり、高齢の患者の生存率はあまり良くないということがわかりました。
また、カナダの研究では、61歳以上の脳卒中生存者を対象に、高齢者集団の生存率について調査が行われました。
患者の3分の1以上(38%)は80歳以上であり、このグループは入院中の死亡率も24.2%と比較的最も高くなっていました。
一方で、59歳未満の死亡率は5.7%であり、60〜69歳は8.6%、70〜79歳の死亡率は13.4%でした。
②意識レベルの程度によって生存率が変わる
脳出血後の症状として意識レベルの低下が挙げられますが、生存率にも影響すると言われています。
脳出血の意識レベルは主にGCSという指標を用いE(開眼)、V(言語反応)、M(運動反応)の3つの項目で調べます。
このうちMの運動反応の度合いによって、生存率が変わるという結果があります。
- 運動反応が全くないM1の死亡率が86%
- 異常な伸展反応があるM2の死亡率が76%
このように、来院時のGCSのM1、M2群では、死亡率が高くなるという結果になりました。
③脳出血の種類や部位によって変わる
また、脳卒中の種類が脳出血後の平均余命にも影響を与える可能性があることが報告されています。
まず、脳出血の出血部位のうち6〜10%が脳幹にあると報告されています。
脳幹出血は、脳出血の中で最も死亡率が高く、報告された死亡率は47%〜80%程度となっています。
④基礎疾患などのリスク因子の有無
1997年1月1日から1998年12月31日までにボスニアへルツェゴビアにあるトゥズラ神経科に入院した303人の脳出血患者を対象として脳出血のリスク因子と長期生存率に関する調査が行われました。
この研究によると、長期生存率の予後は、高血圧、アルコール摂取、糖尿病などの基礎疾患のない若年の患者で有意に優れているという結果が出ました。
最も頻度の高いリスク因子は高血圧で83%、続いて心臓病の病歴が60%、喫煙が23.8%、糖尿病が8.5%、一過性脳虚血発作の既往がある方が8%アルコール摂取が4.3%となっています。
脳出血の5年生存率を改善するために再生医療の活用も
脳出血の治療として、再生医療の導入も近年目を見張るものがあります。
特に幹細胞による再生医療は、脳出血によって誘発された神経細胞の欠陥を治療し、改善することが可能です。
再生医療では損傷された組織に分化する能力を持つ幹細胞を使用しており、他の系統の神経細胞に分化する可能性があります。
この幹細胞を体内に注入することで、損傷された神経を保護したり、修復することが可能です。
ニューロテックメディカル株式会社では脳卒中や脊髄損傷による神経障害に対する幹細胞治療の基盤特許を取得しているため、再生医療の効果を最大限に活かすことができます。
脳出血後の予後や生存率を改善する再生医療に興味がある方は、是非ご相談ください。
まとめ
今回の記事では脳出血の5年生存率や平均余命などを中心に詳しく解説しました。
脳出血は、出血の場所、損傷の程度、年齢、および全体的な健康状態によっては、脳出血による持続的な影響が出てしまい、生存率も変わってしまいます。
ただし、脳出血の発見が早ければ早いほど、治療の決定を早く下すことができ、早期治療が早ければ早いほど、生存率が高くなります。
また、近年では再生医療の応用も浸透してきており脳出血後の後遺症に対する再生医療で機能の回復が期待できるでしょう。
よくあるご質問
脳出血はどのぐらいの割合か?
脳出血は、全ての脳卒中の中で2番目に多く、6.5%〜19.6%を占め、死亡率が高い病気として知られています。
脳出血は、脳組織と頭蓋骨の間や脳組織自体の中で出血が起こることで、脳の損傷を引き起こし生命を脅かす可能性があります。
適切な治療を行なっても後遺症が残ってしまうため、5年後、10年後にどの程度生存率があるのか気になる方もいるかと思います。
脳出血にならないよう気をつけることは?
日本人は昔から味噌汁や漬物など塩分摂取の多い文化があり、それに伴う高血圧の影響で脳出血に罹患しやすいと言われてきました。
近年では血圧管理が向上し脳出血の罹患率は格段に低下していますが、他には喫煙や飲酒量の多い方、そしてストレスにも気を付けられると良いでしょう。
<参照元>
Stroke Survival Statistics: 9 Sobering Facts We Should All Be Aware Of:https://www.saebo.com/blog/stroke-statistics/
Incidence and 10-Year Survival of Intracerebral Hemorrhage in a Population-Based Registry:http://dx.doi.org/10.1161/STROKEAHA.108.523209
International Trends in Mortality From Stroke, 1968 to 1994:http://dx.doi.org/10.1161/01.STR.31.7.1588
Incidence and 10-Year Survival of Intracerebral Hemorrhage in a Population-Based Registry:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.108.523209
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