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脊髄性運動失調と脳卒中の関係

           

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この記事を読んでわかること

脊髄性運動失調のメカニズム
脊髄性運動失調が起こる原因
脊髄性運動失調と脳卒中・多発性硬化症の関係


「目をつぶると立っていられない」このような症状をお持ちの方は、脊髄性運動失調の可能性があります。
脊髄性運動失調とは、麻痺を認めないにもかかわらず円滑な姿勢保持や動作が失われた状態です。
この記事では、脊髄性運動失調の原因や症状について解説します。
脳卒中との関係性についても触れているため、ぜひご一読ください。

脊髄性運動失調とロンベルグ徴候

ロンベルグ徴候
皆さんは脊髄性運動失調という症状をご存知でしょうか?
運動失調とは、麻痺を認めないにもかかわらず円滑な姿勢保持や動作が失われた状態を指し、その原因部位に応じて小脳性・脊髄性・前庭性・大脳性に分類されます。
麻痺とは別の病態であるため、筋肉に力が入らないわけではなく、脳内で思い描く行動を身体が上手に実行できない状態です。
具体的には、字がうまくかけない・コップを持つ手が震える・目を閉じるとうまく立っていられないなどの症状を認めます。
中でも、脊髄性運動失調の症状の1つであるロンベルグ徴候は代表的な症状です。
ロンベルグ徴候とは、両足を揃えて立った状態で目をつぶると、身体が動揺して著しく不安定になり、ランダムな方向に転倒する症状です。
この症状のメカニズムを把握するためには、まず脊髄性運動失調の病態を知るべきです。

脊髄性運動失調の病態

脊髄は脳から連続する神経細胞の束であり、脳からの運動の指令を身体へ、身体からの感覚の情報を脳に伝達しています。
その際、運動や感覚の情報は脊髄内部で走行する位置がおおむね決まっており、脊髄を横断面で見たときの位置で下記のように分類されます。

前索
脊髄前面に位置し、脳からの運動の指令が伝達される部位 
側索
脊髄側面に位置し、脳からの運動の指令を、より下位の脊髄に伝達する部位 
後索
脊髄後面に位置し、身体からの感覚の情報を脳に伝達する部位

このうち、なんらかの原因で脊髄後索を障害されると、四肢の感覚の情報がうまく脳にインプットされなくなるため、自分の身体の動きに対する感覚からのフィードバックがなされず、さまざまな症状をきたすわけです。

ロンベルグ徴候が出現するメカニズム

では、ロンベルグ徴候はどのようなメカニズムで出現するのでしょうか?
なんらかの原因で脊髄後索が障害され、特に深部感覚のインプットが制限されると、自分の身体の位置や姿勢をうまく自覚できないため、動作時や安静時にかかわらず身体が動揺します。
通常、運動失調が出現した際は、視覚からの情報を頼りに身体の動きを制御するため、目を閉じてしまうとさらに身体の状態を把握することができなくなり、動揺が悪化するわけです。
前庭性運動失調の場合は転倒する方向が同じですが、脊髄性運動失調では動揺に伴う転倒の方向がランダムであるという特徴があります。
また、脊髄性運動失調ではロンベルグ徴候以外にも下記のような症状が出現します。

  • 動いているものを見ると動揺が悪化する
  • 膝を必要以上に高く上げてバタンバタンと歩く
  • 指がうまく動かず掴んだものを落とす
  • 字を書くと大きさや位置がバラバラになる

脊髄性運動失調と多発性硬化症の関係

脊髄性運動失調は、前述の通り脊髄後索が障害されることが原因です。
具体的に下記のような疾患が原因となりえます。

  • 脊髄腫瘍・脊髄損傷
  • 脊髄出血・脊髄梗塞
  • 変形性頚椎症
  • 脊髄空洞症
  • 多発性硬化症
  • 末梢神経障害

上部疾患のうち、末梢神経障害は脊髄後索から分岐した感覚を伝達する末梢神経が部分的に障害された場合を指します。
また上記疾患の中でも特に病態がわかりにくい疾患が多発性硬化症です。
多発性硬化症とは、脳や脊髄などの中枢神経系の神経細胞が自己免疫性に攻撃されることでさまざまな神経症状を引き起こす疾患です。
本来であれば体内に侵入した異物(病原菌など)を攻撃する免疫細胞ですが、自分の細胞を敵だと認識してしまうと、誤って攻撃してしまい、これを自己免疫性疾患と言います。
多発性硬化症では、神経細胞の「髄鞘」と呼ばれる部位が破壊されることで、麻痺やしびれなどの症状が出現します。
多発性硬化症の代表的な特徴は下記の2つです。

時間的多発性
再発と寛解を繰り返す
空間的多発性
脳や脊髄のさまざまな部位がランダムに破壊される

多発性硬化症によって、脊髄後索が障害される可能性もあるため、脊髄性運動失調に至る可能性もあります。
また、脳の病気で最も代表的な脳卒中と脊髄性運動失調には直接的な関係は無いものの、脳卒中を発症するような動脈硬化の進んだ人は脊髄梗塞・脊髄出血のリスクもあるため、注意が必要でしょう。

幹細胞治療による脊髄性運動失調への可能性

幹細胞治療とは、体内の損傷した特定の細胞に幹細胞が分化し、失われた機能や形態を再生させる治療法です。
特に、心臓や神経の細胞は自己再生能力が低い、もしくは無いため、幹細胞治療が今後の新たな治療として注目されています。
損傷した脊髄後索の神経細胞が幹細胞治療によって再生すれば、脊髄性運動失調も改善する可能性があり、今後の知見が待たれます。

まとめ

今回の記事では、脊髄性運動失調と脳卒中の関係について解説しました。
脊髄が障害されることで運動失調に至れば、日常生活に大きな支障をきたします。
現時点で根治療法は確立されておらず、現状ではリハビリテーションがおこなわれていますが、今後さらに幹細胞治療などの再生医療が進めば、新たな治療の選択肢となる可能性もあり期待が持たれます。

Q&A

脊髄性運動失調の病態は?
深部感覚の伝達に関わる末梢神経や脊髄後索が障害されることで、脊髄性運動失調が生じます。
深部感覚が失われると、自分の身体の姿勢や動作をフィードバックすることができず、正しい動作を維持できなくなるためです。

ロンベルグ徴候はどこの障害?
ロンベルグ徴候とは、深部感覚が障害されることで生じる運動失調の症状の1つで、閉眼時の下肢の強い動揺を認めます。
主な原因として、脊髄後索や感覚性末梢神経の障害が挙げられます。

あわせて読みたい記事:運動失調症に対するリハビリ
<参照元>
・運動失調に対するアプローチ:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/14/0/14_1/_pdf
・日本神経学会 脳神経内科の病気 運動失調症:https://www.neurology-jp.org/public/disease/ataxia_detail.html
・MSDマニュアル 脊髄伝導路:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/multimedia/figure/脊髄伝導路

貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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