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脊髄損傷後の褥瘡には要注意!

           

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脊髄損傷によって重度の麻痺が生じた場合、歩行や移動はもちろんのこと、寝返りすら打てなくなってしまう可能性があります。
一定箇所に常に圧力がかかってしまうと、皮膚の血流が障害され褥瘡が発生するリスクが高まるため、脊髄損傷患者にとって褥瘡予防は欠かせません。
そこで今回は、脊髄損傷患者における褥瘡に関して詳しく解説していきます。

脊髄損傷患者はなぜ褥瘡になりやすい?

褥瘡の箇所
一度脊髄を損傷すると、受傷直後は呼吸や循環などの生命維持に必要な機能に対する治療が優先されますが、治療によって急性期を脱した後は日常生活に復帰するために麻痺やしびれなどの合併症に対する機能回復を考えなくてはなりません。
しかしながら、脊髄損傷患者の多くは脳から体への運動の指令が入らなくなるため麻痺が出現してしまいます。
麻痺の出現は歩行や運動はもちろんのこと、体位変換にも支障をきたすため、同一部位に持続的な圧迫が起こりやすい状況にあります。
持続的な皮膚組織の圧迫に伴い良好な血流が得られなくなり、徐々に組織障害が始まり同部位の発赤や疼痛を自覚します。
人間が睡眠中、無意識のうちに寝返りを打つのも、持続的な背部の圧迫に伴う疼痛を無意識に自覚しているからです。
しかし、脊髄損傷患者では感覚障害も併発しているため、疼痛を自覚することができず、気付かぬうちに褥瘡が進行してしまうのです。
皮膚の発赤や疼痛から始まり、徐々に黒ずんで行き、排膿や発熱などの症状まで出現すると、最終的に壊死して皮膚がめくれたり抉れてしまいます。
また脊髄損傷患者が褥瘡を発症するタイミングは、退院後の日常生活ではなく、意外にも急性期の入院中のベッドの上がほとんどだと言われており、早期からの予防が重要であることが分かります。
興味深いことに、脊髄損傷患者の褥瘡発生リスクに年齢は関係なく、脊髄損傷の度合い、損傷後の活動性、損傷後の介助の度合いなどが要因として挙げられることが分かっています。

脊髄損傷患者における褥瘡の好発部位とは?

前述したように、褥瘡は同一部位に持続的な圧迫がかかることで発生します。
人間は基本的に仰向けで寝ているため、どうしても褥瘡が発生しやすい部位が限定されてしまいます。
まず最も多いのは、仙骨部、尾骨部、坐骨部など臀部を中心とした体幹部です。
頻度だけではなく、症状の進行度合いも臀部が最も酷くなる傾向にあります。
次に踵部や大転子部も褥瘡が発症しやすく、多くはありませんが肩甲骨部にも発生することがあります。
実際にこれらの部位に褥瘡ができることで再入院となる患者は多く、入院による医療費の増大、休職に伴う経済的損失など様々な問題が発生します。

脊髄損傷後の褥瘡予防の除圧方法

褥瘡に対しては一度罹患してからの治療よりも、早期からの予防、具体的には除圧が最も効果的です。
除圧に関しては、いかに自身の力で自由に動けるかによって方法も異なってきます。
例えば、腰髄損傷に伴う下肢麻痺のみで上肢は筋力が保たれている場合は、自身で寝返りも可能であり2時間毎の体位変換で十分褥瘡予防になります。
また車椅子で座位を保持できる場合、20分毎のプッシュアップ動作により褥瘡の予防ができます。
しかし、頸髄損傷に伴う四肢麻痺がある場合は、綿密な皮膚の観察が必要になり、発赤など認めた際には看護ケアとして最低でも4〜6時間毎の体位変換が褥瘡の予防に有効です。
また排尿や排便に伴う臀部への液漏れによる不潔は褥瘡を悪化させる要因の1つであるため、定期的な清拭も看護ケアとして必須です。
そのほかに作業療法士とともにリハビリを積極的に行い、なるべく筋力低下を予防し、自身での体位変換や除圧を行えるようにしておくことも重要です。
また、そういった人的介護だけでなく、体圧分散クッションなどの物的介護の利用も積極的に導入していくべきです。

まとめ

脊髄損傷における麻痺は、多くの基本的動作に支障をきたすため日常生活に大きな影響を与えかねません。
特に急性期から早急に予防が必要なのは褥瘡対策です。
一度褥瘡に罹患すると、低栄養に陥りやすい脊髄損傷患者ではなかなか治癒しないため、「どう治療するか」よりも「どう予防するか」に焦点を当てた看護計画が必要になります。
ブログで紹介した体位変換による除圧や、リハビリ、クッションの使用など複数の方法があるため、それぞれの症状に見合ったケアを看護計画に組み入れるのが理想的です。
また近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
再生医療とは自身の骨髄から採取した幹細胞を増幅させて、体内に戻すことで損傷した神経細胞を再生させる治療法です。
本来であれば神経細胞は再生しないと考えられていますが、再生医療により麻痺などの後遺症が改善すれば褥瘡のリスクも低下すると考えられ、今後の更なる知見が待たれるところです。

Q&A

寝たきりのリハビリはどれくらいしますか?
リハビリの時間は急性期病院であれば1回20分から60分程度が多いです。退院後は介護保険であれば1週間に2時間ほどが上限になります。寝たきりでもリハビリにより回復する例もあれば、合併症を減らすなどの効果が望めます。


貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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