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くも膜嚢胞の原因や症状とは

           

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この記事を読んでわかること

くも膜嚢胞とは
くも膜嚢胞の原因
くも膜嚢胞の診断


くも膜嚢胞とは、脳の表面を包む3つの膜のうちの1つであるくも膜内に水が溜まってしまう病気です。
症状は軽微な場合もありますが、周辺組織の脳を圧迫して何らかの症状が出現している場合には最悪手術になってしまう可能性もあり、侮れない病気です。
そこでこの記事では、くも膜嚢胞の原因や症状に関して詳しく解説していきます。

くも膜嚢胞の原因

くも膜
くも膜嚢胞の「くも膜」とは、脳の表層を覆っている3つの膜の内の1つです。
脳を保護するため、脳の表面は内側から順に軟膜、くも膜、硬膜の3つの膜に囲まれています。
さらに軟膜の内側には、衝撃を吸収するための脳脊髄液と呼ばれる液体で満たされており、そのプールの中に脳が浮かんでいます。
このくも膜が何らかの理由で2層に分かれ、層と層の間に脳脊髄液が貯留して袋状に広がった病変をくも膜嚢胞と言います。
原因は主に先天性のくも膜の発生異常と考えられていますが、中には後天的な​​外傷、出血、感染後のくも膜の炎症によってくも膜下腔が隔離されて生じるものもあります。
また、あくまで内部に貯留しているものは脳脊髄液であり腫瘍ではないため、経過とともに増大していく訳ではありません。

くも膜嚢胞の症状

くも膜嚢胞は基本的に無症状です。
そのため、多くの場合は頭部外傷などでたまたま頭部CTを撮影した時に発見されます。
しかし、中には嚢胞が拡大し、周囲の脳組織を圧迫することで何らかの症状を引き起こすこともあり、圧迫される脳の部位によっても症状は異なります。
具体的に下記のような症状が挙げられます。

  • 脳や神経を圧迫して生じる麻痺やしびれ
  • くも膜嚢胞によって脳脊髄液の流れが悪くなり、頭の中で脳脊髄液が貯留し、頭蓋内圧が亢進することによる頭痛や嘔気
  • 頭痛、けいれん、発達障害などの非特異的症状
  • くも膜嚢胞が接する頭蓋骨の局所的な膨らみや頭蓋の拡大

くも膜嚢胞の診断

くも膜嚢胞の診断には、頭部の画像検査が必須
くも膜嚢胞の診断には、頭部の画像検査が必須となります。
具体的には頭部CT検査、頭部MRI検査、超音波検査などが挙げられます。
それぞれの検査では共通して、周囲組織と境界が明瞭でくっきりとした嚢胞を見ることができます。
嚢胞の場合、腫瘍などと違い周囲の組織に浸潤する性質は持っていないからです。
しかし、検査によって嚢胞の色などが異なります。
例えば頭部CT検査は、頭部の器質的病変の検索のために最も一般的に行われている画像検査であり、透過性の高い空気や脂肪は黒く、透過性の低い骨や組織は白く写ります。
くも膜嚢胞では嚢胞内に透過性の高い脳脊髄液が貯留するため、嚢胞部分が黒く抜けて写ります。
それに対して、頭部MRI検査(T2強調画像)では液体は白く見えるため、頭の中に白い袋状の構造物として写ります。
どちらの検査であれ、その大きさや部位を評価し、診断や治療方針の決定に役立つことに変わりはありません。

くも膜嚢胞の治療

では、実際にくも膜嚢胞に罹患した場合、どのように治療すべきなのでしょうか?
大きく2つの治療方針が挙げられます。

経過観察

基本的に、くも膜嚢胞があったとしても症状がない場合や、くも膜嚢胞との関連がないと思われる軽微な症状のみの場合には経過観察します。
また方針を決める判断材料は症状だけでなく、嚢胞のサイズや発生部位、患者の年齢、全身状態など全てを含めて総合的に判断します。

手術療法

くも膜嚢胞に随伴するような症状がある場合、基本的には手術療法が選択されます。
手術には主に3つの方法があります。

  • 開窓術
  • 被膜切除術
  • のう胞-腹腔短絡術

手術が必要となるようなくも膜嚢胞であっても予後は良好であり、術前に認めていたような症状も手術によってほとんどが改善します、
しかし、直接頭蓋骨に小さな孔を開けて貯留した脳脊髄液を外に出す開窓術は術式の中でも侵襲度が高く、周囲の血管を損傷すると硬膜下血腫などの合併症を引き起こし後遺症を残す可能性もあります。

くも膜嚢胞とスポーツ

くも膜嚢胞に罹患した方にとって、日常生活への制限があるのか気になりますが、結論から言えば、くも膜嚢胞に罹患しても特別日常生活に制限が加わるわけではありません。
体育の授業や球技大会への参加も可能です。
しかし、頭部打撲の頻度が高いコンタクトスポーツや格闘技では、硬膜下血腫を併発するリスクが増加するため、避けた方が望ましいです。
実際に、キックボクサーとして活躍されていた格闘家、宮城大樹さんはくも膜嚢胞が見つかり、チャンピオンでありながら引退を余儀なくされています。

まとめ

今回の記事では、くも膜嚢胞の原因や症状について解説しました。
くも膜嚢胞は、くも膜が先天的もしくは後天的に2層化して、層と層の間に脳脊髄液が貯留する良性疾患です。
多くの場合無症状で経過しますが、大きさや部位によっては症状をきたすこともあり、その場合は手術療法が選択されることが一般的です。
また、ごく稀に未治療のくも膜嚢胞によって神経が圧迫され、後遺症を残すこともあります。
脳や神経の損傷に伴う後遺症は現状の医療技術でも改善が難しいため、たとえ予後良好なくも膜嚢胞といえど適切に対処するようにしましょう。
また、近年では再生医療の発達も目覚ましく、今後は重篤な神経学的後遺症も改善できる可能性があります。
再生医療では、体外から幹細胞を投与することで損傷した神経細胞を再生できる可能性があり、失われた機能の回復が期待されています。
現在その知見が待たれるところです。

よくあるご質問

くも膜嚢胞の発生率は?
くも膜嚢胞の発生率は、0.1〜0.3%程度と言われています。
また男性に多く、発症患者の大半がくも膜の形態学的異常に伴う先天性の発症であり、全体の75%は小児期に発見されます。

くも膜嚢胞のリスクは?
基本的に無症状であるくも膜嚢胞のリスクは低いですが、稀に出血を併発することがあるため、注意が必要です。
その場合、頭蓋内で生じた出血によって脳実質が圧迫され、後遺症を残す可能性もあります。

<参照元>
・慶応大学医学部医学科 脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/childhood/06.html

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
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