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癒着性くも膜炎について

           

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この記事を読んでわかること

癒着性くも膜炎の概要がわかる
髄液循環の重要性がわかる
髄液循環障害の影響がわかる


脊髄は髄液という液体の中に浮いています。
髄液は脳や脊髄を保護し、神経の水分量を調節したり、形を保ったりする役割を担っています。
髄液は脳や脊髄の周りを循環し、恒常性を保っています。
髄液の循環が何らかの原因で障害されると髄液が脊髄の周りで過剰になり、脊髄内にたまることで脊髄が障害されてしまいます。
髄液の循環障害の原因となる疾患に癒着性くも膜炎があります。
この記事では、癒着性くも膜炎について解説します。

癒着性くも膜炎とは

脊髄空洞症と癒着性くも膜炎
脊髄は外側から硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜に覆われています。
癒着性くも膜炎とは何らかの原因により硬膜、くも膜、軟膜が癒着してしまい、そこで髄液の循環が障害される疾患です。
髄液の循環が障害されると脊髄の内部に髄液がたまり始め、脊髄が障害されます。
髄液のたまりにより脊髄の障害が起きる状況を脊髄軟化症や脊髄空洞症と呼びます。
造影剤を使用したCT検査やMRI検査により、髄液のたまりや癒着部を明らかにすることで診断することができます。

癒着性くも膜炎の原因

癒着性くも膜炎の原因は、大きく分けて感染性と非感染性があります。

感染性
ウイルスや細菌が脊髄周囲に感染する「髄膜炎」が発生すると、炎症が原因となり癒着が起こります。
結核が原因となることもあります。
・非感染性
脊髄の検査のため脊髄周りに注入される造影剤や、手術の時に行う硬膜外麻酔(脊髄周りに局所麻酔薬を注入する)、神経痛などの治療のため脊髄周りに注入されるステロイドなどの化学物質が癒着を引き起こすことがあります。
また脊髄近くに操作が及ぶ手術や、脊椎や脊髄の損傷を伴うけがなどが原因で癒着性くも膜炎となってしまうケースがあります。

癒着性くも膜炎の症状と治療

癒着性くも膜炎が発生すると脊髄周りにたまった髄液が神経を圧迫し、血流を阻害して脊髄障害を引き起こします
頻度が高い症状には下肢の神経痛、痙性麻痺(足がつっぱってしまいうまく動かすことができなくなる)、感覚障害、異常感覚(しびれやジリジリする灼熱感、冷感など)があります。
髄液の循環を回復させるためには手術を行いますが、難度が高い手術になります。
髄液がたまらないように流出経路を作る手術、癒着を剥離する手術があります。
しかし作成した流出経路がすぐ詰まってしまう、剥離した部分がまた癒着してしまう、手術操作で脊髄を損傷してしまうなどの問題が発生する可能性があります。

癒着性くも膜炎による脊髄障害と再生医療

癒着性くも膜炎は稀な病気であるため診断が難しく、治療が遅れてしまうケースも少なくありません。
対応が遅れると脊髄の障害が進み、神経の症状が確定してしまいます。
神経は一度強く傷つくと、元通りに回復することはできません。
神経は繊細な組織であるため、回復力には限界があるのです。
神経の障害そのものは手術を行っても治療することはできず、後遺症が残ることになります。
後遺症は生涯残るものとなり、一生付き合っていくしかありません。
打つ手がない状況の中、新たな治療法が求められています。
そこで神経の機能を回復させるために組織を再生しようという試みが、再生医療です。
再生医療では神経など様々な組織の元になる「幹細胞」を使用します。
移植された幹細胞は体内で増殖し神経や血管などの組織に成長し、その過程で組織を保護する因子を分泌します。
また、神経細胞に成長した幹細胞は、その場に定着し神経として機能するようになることが期待されています。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
癒着性くも膜炎による脊髄障害に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脊髄障害の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。

まとめ

まれな病気である癒着性くも膜炎について解説しました。
医療行為による合併症としても起こることのある疾患です。
検査や手術の後など何か異常な自覚症状がある場合には、早めに担当の先生に報告してください。

よくあるご質問

癒着性くも膜炎の原因は?
ウイルスや細菌が脊髄周りに感染する「髄膜炎」、脊髄近くに注入される造影剤やステロイドなどの化学物質、脊髄近くに操作が及ぶ手術や脊椎の損傷が起きるケガなどが癒着性くも膜炎の原因になります。

癒着性くも膜炎の症状は?
脊髄の障害がどこに起きるかによりますが、頻度が高いのは下肢の症状です。下肢の痙性麻痺(足がつっぱってしまい思い通りに動かない)や感覚障害、異常感覚(しびれや過敏など)が起こります。

<参照元>
・「脊髄空洞症(キアリ奇形、癒着性くも膜炎)」大西脳神経外科病院ホームページ
http://www.onc.akashi.hyogo.jp/sick/sekizuikudousyou.html
・「脊髄癒着性くも膜炎」臨床画像33(11), 2017

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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