この記事を読んでわかること
・脳梗塞とはどのような病態か
・血栓溶解薬の投与方法
・血栓溶解療法の注意点
血栓溶解療法とは、心筋梗塞や脳梗塞の主な原因である血栓を分解・溶解する作用を持つ薬剤を使用する治療法です。
血栓を溶解することで、血管を開通させることができ、血流が途絶したことで傷害を受けた脳組織を回復させることができます。
一般的には発症後4〜5時間以内に治療することで、後遺症を最小限にすることが期待できます。
脳梗塞とはどのような病態か?
脳梗塞は、脳内あるいは脳へ向かう動脈が何らかの原因で閉塞する病気で、脳卒中の一種です。
虚血性脳卒中とも呼ばれます。
脳梗塞には、大きく分けると血栓性脳梗塞と塞栓性脳梗塞があります。
血栓性脳梗塞について
血栓性脳梗塞は、脳に血液を供給している動脈に血栓ができることで血管が閉塞し、脳細胞に栄養や酸素を供給する血流が減少または完全に停止することによって、脳の一部がダメージを受ける状態です。
血栓は、コレステロールやその他の物質が固まってできたもので、プラークとも呼ばれます。
動脈硬化により、このプラークの形成が促進されます。
血管内では、プラークの蓄積を傷とみなし、凝固因子が反応します。
凝固因子が反応することで血栓を形成されるようになります。
血栓が十分に大きくなると、動脈を塞いでしまいます。
塞栓性脳梗塞
脳梗塞のもうひとつのタイプは、塞栓性脳梗塞です。
塞栓性脳梗塞では、塞栓と呼ばれる血栓が体の別の場所で形成されます。
それが血液と一緒に脳の動脈まで移動し、脳内の血管で詰まって、動脈を塞いでしまうものです。
例えば心房細動などの不整脈があると、心臓内に血栓ができやすくなります。
この血栓が何らかの原因で脳内に移動すると、塞栓性脳梗塞となります。
血栓溶解薬について
血栓溶解薬は、脳梗塞や心筋梗塞の急性期に使用する治療薬として承認されています。
血栓溶解療法に最もよく使われる薬は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)です。
脳梗塞を発症してから病院に到着後、できるだけ早急に、できれば最初の30分以内に血栓溶解薬を投与するのが理想的です。
血栓溶解薬は、血栓を分解して動脈を開通させるので、脳組織に再び血液が流れ込むようになります。
血栓溶解薬の投与方法
血栓溶解薬の投与方法についてもご説明します。
一般的に、脳梗塞の治療として血栓溶解薬を使用する場合は、太もとの付け根にある大腿動脈に細い管(カテーテル)を挿入し、カテーテルの先端を脳内まで通すことによって、血栓のある部分に直接血栓溶解薬を注入することができます。
血栓が頸動脈(首の部分)や中大脳動脈の最初の部分(脳の部分)にある場合、血栓溶解薬による治療を行った後に、機械的に血栓を除去する処置を行うこともあります。
機械的に血栓を除去したあとは、動脈に挿入したカテーテルを使って、動脈を開いたままにするための血管の形に合わせて作られた管(ステント)を留置します。
これは、将来の脳梗塞の再発を予防する意味もあります。
なおステントを用いるこの方法は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)が使えない場合、また使用が推奨されない場合にも実施されることがあります。
血栓溶解療法の効果
血栓溶解療法を実施する際、良い結果を得るためには、適切な治療を迅速に受けることが重要です。
脳の一部に血液が行き渡らなくなると、わずか数分で細胞が死滅し始めます。
動脈が再開通すると、傷ついた脳組織に再び血液が供給され、傷ついた組織の治癒が始まります。
一般的に脳梗塞の治療が数時間以内に成功すれば、完全な回復が十分に期待できます。
脳梗塞の症状が発現してから少なくとも4〜5時間以内に血栓溶解薬による治療が開始されたたら、比較的良い結果が得られる可能性が非常に高くなります。
血栓溶解療法の注意点
血栓溶解療法は血栓を溶かすことから出血するリスクがあります。
そのため、事前の評価も重要です。
例えば、脳出血を発症していないことを確認するために、頭部CTスキャンを必ず最初に行います。
脳内に出血している人に血栓溶解薬を投与すると、脳出血が悪化し、生命に関わる状態になることもありえます。
そのほかにも、血栓溶解薬の投与に適しているかどうかを判断するために、年齢(高齢者では合併症のリスクが高くなります)、病歴(心筋梗塞の既往、高血圧や糖尿病など)を確認します。
一般的に、最近頭部を怪我した、胃潰瘍など消化管出血のある可能性がある、最近手術をしたなどの場合は、血栓溶解薬の投与ができないことがあります。
まとめ
脳梗塞における血栓溶解療法についてご説明しました。
何よりも、早期に治療を開始することが大切であることがお分かりいただけたのではないかと思います。
ろれつが回らない、麻痺が出たなど、脳梗塞を疑う症状を認めたら、速やかに救急車を呼び病院で受診しましょう。
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