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脳出血と消化管出血の関連性について

           

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この記事を読んでわかること

脳出血と消化管出血の関連性について
消化管出血の典型的な症状
脳出血時の消化管出血の予防


脳出血は発症直後から様々な合併症が生じ得ます。
特に消化管出血は脳卒中の8%で生じることが知られており、適切な予防および治療が必要になります。
この記事では脳出血と消化管出血の関連性について、他の合併症も合わせて解説します。

脳出血の影響で起こる可能性のある消化管出血

脳出血の影響で起こる可能性のある消化管出血
脳出血では発症直後(急性期)より様々な合併症に注意しなければなりません。
脳出血では消化管出血、感染(特に呼吸器感染と尿路感染)、痙攣、頭痛、深部静脈血栓症および肺塞栓症、褥瘡などの合併症が起こりえます。
脳卒中全体での消化管出血の合併率は欧米では1.5~3%、アジアでは7.8%とアジアでより多く報告されています。
高齢者、脳卒中の重症度、腎機能や冠動脈疾患、心不全などが危険因子とされています。
近年では高齢化や心筋梗塞治療後などで、アスピリンなどの抗血小板薬、ワーファリンや直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)を内服している方も多いです。
これらの薬剤も消化管出血のリスクになります。
脳出血ではストレス刺激が視床下部に働き、その結果下垂体からACTHというホルモンの分泌が起こります。
ACTHにより副腎皮質ホルモンの分泌が起こり、胃壁細胞、主細胞を刺激し胃酸を多く分泌させます。
また、自律神経の以上により胃の筋層に局所のけいれんが起こり、血流障害が起きているという説もあります。
これらの機序により、胃の粘膜を守る機構を胃の粘膜を破壊する機構が上回ってしまい、消化管潰瘍・出血が起きてしまいます。

脳出血患者に見られる消化管出血の典型的な症状

脳出血患者に見られる消化管出血の典型的な症状
他の急性消化管出血と同様に腹痛、嘔吐が主な症状となります。
しかし、脳出血患者では意識障害を合併していることも少なくありません。
その場合には、吐血、タール便(黒色便)、鮮血便などにより発見されます。
血液検査で、貧血(Hbの低下)があることで見つかる例もあります。
重症になれば血圧の低下や頻脈が起こり、場合によっては失神やショック(全身に酸素を届けられない状態)となります。

脳出血と消化管出血:重症度と予後

脳出血に合併する消化管出血としての予後や重症度についての大規模臨床のデータは明らかになっていません。
対応としては消化管出血としての治療を行うことになります。
大量の嘔吐、吐血の際には気道閉塞・窒息のリスクがあります。
大量吐血によるショック状態(血圧が低下し、全身に酸素を届けられない状態)では緊急気道確保として気管内挿管を行う事があります。
急性の場合で血圧低下がある場合は緊急での補液もしくは輸血(赤血球、血小板)が適応になります。
約80%の消化管出血は自然に止まることがわかっていますが、やはり血圧低下や症状が持続する場合は積極的な治療の適応になります。
治療は内視鏡下の凝固止血やクリップでの止血が多いです。
クッシング潰瘍でも時に穿孔することがあり、時に外科的治療が必要になります。

脳出血時の消化管出血の予防

脳出血時の消化管出血の予防
脳出血時の消化管出血の予防として、プロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor:PPI)が処方されることが多いです。
また、早期の経腸栄養が消化管出血を減らすことも実証されているため、早期の経口摂取も試みられます。
嚥下障害や意識障害で経口摂取ができない場合には経鼻胃管での栄養投与も検討されます。

安静期間とリハビリテーション

消化管出血が起きてしまった場合、検査や治療として絶食期間があり、安静が必要になることもあります。
体は異化亢進(体の組成を作るより壊れる・分解する量の方が多い)状態となりますが、消化管出血が重症になると生命維持にも影響が出るので、必要な安静・絶食です。
消化管出血はリハビリテーションが上手く進まない1つの原因にもなります。
治療が済めば積極的なリハビリテーションを行い、回復期リハビリテーションなどに進んで自宅生活や社会復帰を目指すことになります。
脳出血に消化管出血も加わったことで、後遺症にひどく悩む場合には再生医療も検討されます。
当院では脳卒中を専門として、脳・脊髄の損傷部を同時に刺激する再生医療(ニューロテック®)で『脳・脊髄の治る力(可塑性)』を高め、続いて「再生医療リハビリ®」として集中的にリハビリをおこなうことで、後遺症の軽減を目指しています。
障害を少しでも軽減させることで、その人がその人らしく生きるためのサポートも行っています。

まとめ

この記事では脳出血と消化管出血について解説しました。急性のストレス性潰瘍は時に重篤な結果になることもあります。
薬剤などでの予防で100%防げるものではないので、起こってしまった際には迅速な対応をする必要があります。

よくあるご質問

脳卒中で起こるクッシング潰瘍とはなんですか?
脳卒中や頭部外傷、頭部手術後に生じるストレス性で急性の胃・十二指腸潰瘍のことをクッシング潰瘍と呼びます。1932年に脳外科医のクッシングにより初めて報告されました。

脳出血の合併症にはどういったものがありますか?
脳卒中の合併症には感染(呼吸器感染、尿路感染が頻度が高い)、消化管出血、痙攣、頭痛、深部静脈血栓症もしくは肺塞栓症などがあります。それぞれ予防と早期治療、再発防止(リハビリテーションを含む)が重要です。

<参照元>
脳卒中診療ガイドライン2021
日本内科学会雑誌 第84巻 第6号・特集●消化性潰瘍:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/84/6/84_6_868/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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