この記事を読んでわかること
・痙縮とは?
・痙縮のメカニズム
・痙縮に対する治療法
髄は脊髄の一部で、首の部分を通る「神経の束」のことです。
頚髄損傷は、脳から手足に伝わる神経回路の中でも上流部分の損傷で、首から下全体の様々な症状が出る障害です。
一度強く受傷してしまうと治療の決め手がなく、新たな方法として再生医療の効果が期待される分野です。
脳から出た指令は、頚髄を通って全身へ伝わるため、頚髄損傷では首から下全身に及ぶ様々な症状が出現します。
以前は、頚髄損傷は交通事故や高所からの転落などで20代に発生することが多かったものの、現在ではそういった事故は減少し、高齢者が転倒して受傷することが多くなりました。
脊髄損傷の患者さんは日本に10万人以上存在し、毎年5000人以上が新たに発生していると考えられています。
ここでは、頚髄損傷の症状、治療について解説していきます。
頚髄損傷と頚椎損傷の違い
頚椎とは、頚髄を通す骨のことです。
脊髄は、首から腰のあたりまで続く40〜45cmの長い神経の束です。
脊髄は大事な神経なので、簡単に障害されないように硬い骨の中を通っています。
脊髄を通す骨が「脊椎」です。
脊椎は首から腰まで骨が縦につながって形作られており、そのうち首の部分のことを頚椎といいます。
頚椎に骨折や脱臼を起こすことを頚椎損傷といいます。
頚髄損傷は、頚髄の神経の障害を起こすことで、頚椎損傷を伴う場合もあれば、頚椎損傷を伴わずに頚髄損傷を起こすこともあります。
頚髄損傷と頚椎捻挫の違い
首の神経損傷には主に頚髄損傷と頚椎捻挫(むち打ち症)があります。
頚髄損傷は、首の脊柱管が損傷され、脊髄が傷つくことによって起こり、手足のしびれや痛み、麻痺、呼吸困難など重篤な症状を引き起こすことがあります。
頚椎捻挫は首の筋肉や靭帯が損傷されることで起こり、頭痛、首の痛み、めまいなどの症状が数日後に現れることがあります。
早期の診断と適切な治療が重要で、症状を悪化させないための早期対応が求められます。
頚髄損傷の症状と重症度による違い
頚髄損傷の症状は、頚髄のどの部位が損傷されるか、どの程度損傷されるかによって異なります。
神経は電線のようなもので、根元で障害されればその先に電気は伝わりづらくなります。
そのため、頚髄の中でも損傷部が脳に近いほど、また損傷の程度が強いほど症状は重くなります。
頚髄の中でも脳に近い部分からは、呼吸に関わる筋肉へ行く神経が出ています。
そこに強い障害が起こると、自分で呼吸することができなくなります。
その場合、手や足も動かすことができないため、気管切開や完全介護が必要な、最も症状が重い状態となります。
頭の中は正常ですから、自分の体が思い通りにならない状態を自覚しており、非常につらい状態といえます。
頚髄の真ん中付近からは、腕や手に行く神経が出ています。
大まかにいうと、脳の近い順に肩、肘、手に指令を出す神経が存在します。
脳に近い部分で強く障害されると肩から先、腕全体がダランとした状態になってしまいます。
障害部位が少し下方になると、肩はなんとか上がるが肘を動かすことができない、さらに下方になると肩、肘は動くが指が動かないというように、症状が出る部位が異なってきます。
障害の程度により、しびれを感じる程度で済む場合もあれば、動かすことができなくなってしまう場合もあります。
足に行く神経は、頚髄を通って腰の部分から分布していきます。
頚髄部分で強く障害されると、足の運動や感覚が障害されます。
足の筋力低下が強い場合には、車いす生活にならざるを得ないことがあります。
腹筋や背筋など体幹を支える部分に関しても、頚髄を通ってきた神経が指令を出しています。
体幹が不安定になる場合は、座っていることが難しくなり、椅子に固定するなどの補助が必要になることがあります。
その他にも自律神経障害による血圧変動や、尿路障害(自分で排尿のコントロールができない)といった症状は頻度が高く、生活への影響が非常に大きい症状の一つです。
頚髄損傷の治療
頚髄損傷を受傷した直後の治療は、神経の障害を悪化させないために、頚部の安静を保つことに尽きます。
点滴の薬を使って、神経の腫れを抑える治療を行うこともあります。
頚椎損傷を伴う場合、頚部が不安定になっているため、手術をして安定化を図る場合があります。
また、元々頚椎の変形などで神経の圧迫がある場合には、圧迫を解除する手術を行う場合もあります。
しかし、神経そのものを修復する方法はありません。
神経周囲の状況を良くする方法はあっても、神経の機能を直接的に治療する方法はないのです。
できる限りの治療を行っても、神経の損傷が強い場合は回復程度に限りがあります。
機能の障害が残ることも多く、残された機能を使って生活するためのリハビリテーションが実施されます。
頚髄損傷の再生医療とリハビリテーション
神経が損傷を受けると、ある程度のレベルまで自然に回復しますが、回復の程度には限界があります。
回復能力を最大限に引き出す方法、それが再生医療です。
再生医療では、損傷した神経細胞の修復を促進し、麻痺の改善が期待されています。
脊髄損傷、頚髄損傷に対する再生医療の試みは以前から行われており、実用化が始まっています。
札幌医大では、骨髄の中にある間葉系幹細胞を培養して点滴投与する方法が行われています。
一定の治療効果と安全性があると認められたこの方法は、ステミラック注として、薬価基準に収載されています。
またiPS細胞から神経のもとになる細胞を作製して移植する、という方法が慶應義塾大学で試みられており、2019年より臨床研究が始まっています。
今後の成果が期待されます。
適切な治療計画とリハビリの組み合わせが、早期回復の鍵となります。
頚髄損傷の症状と治療についてのまとめ
頚髄損傷の症状、治療について解説しました。
症状は非常に多彩で、日常生活に大きな影響のある障害です。
治療方法が限られている現状ですが、新たな方法として再生医療に大きな期待がかかります。
よくあるご質問
頚髄損傷したらどうなりますか?
頸髄には重要な神経が複数走行しており、損傷した場合、上肢や下肢の麻痺(四肢麻痺)やしびれ、膀胱直腸障害、起立性低血圧、呼吸筋麻痺、脊髄ショックなど様々な症状をきたす可能性があります。
中でも四肢麻痺は日常生活に大きな影響を与える後遺症です。
頸椎損傷の後遺症は?
頚椎付近を走行する頸髄が損傷されると、四肢麻痺、四肢のしびれなどが後遺症として残り、日常生活に大きな影響を及ぼします。
また、第4頸髄以上のレベルで損傷すると横隔膜の運動をコントロールできなくなってしまい、呼吸筋麻痺を生じ、自発的な呼吸が困難となってしまいます。
<参照元>
・「頚髄損傷の急性期管理とリハビリテーション医療」Jpn J Rehabil Med 58, 2021
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