この記事を読んでわかること
脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の違いがわかる。
多系統萎縮症の3つの病型がわかる。
脊髄小脳変性症や多系統萎縮症への治療法がわかる。
脊髄小脳変性症と多系統萎縮症はどちらも進行性に神経細胞が萎縮していく病気ですが、症状の出方や進行速度が異なります。
また、多系統萎縮症は初期症状の出方によって3つの病型に細分化できます。
そこでこの記事では、脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の違いや、多系統萎縮症の病型、治療法などについて詳しく解説します。
脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の違いとは

脊髄小脳変性症と多系統萎縮症はどちらも原因不明に脳細胞の一部が変性し、さまざまな神経機能の働きに支障が出る病気です。
これらの疾患では、主に小脳や脊髄、脳幹などの神経細胞が進行性に萎縮していき、本来それぞれの部位が司っている機能が障害されます。
脊髄小脳変性症はいくつもの原因遺伝子が発見されており、遺伝性の発症が多いですが、中には孤発性(遺伝性ではなく突然変異)に発症するタイプのものもあり、これを多系統萎縮症と呼びます。
つまり、多系統萎縮症は脊髄小脳変性症のなかの1つであり、2つの疾患の違いは主に下表の通りです。
| 脊髄小脳変性症 | 多系統萎縮症 | |
|---|---|---|
| 発症様式 | 遺伝性もしくは孤発性 | 孤発性 |
| 症状 | 小脳失調が主(めまいやふらつきなど) | 小脳失調の他に自律神経障害(起立性低血圧や排泄障害)やパーキンソン病の症状(手の震えや動きが緩慢になる)を認める |
| 症状の進行速度 | 比較的緩徐 | 比較的急速 |
脊髄小脳変性症に対して、多系統萎縮症の初期症状は多彩です。
ふらつきやめまいなどの小脳失調症状以外にも、起立性低血圧や排尿障害などの自律神経障害、もしくは筋強剛(筋肉が硬直する)、無動(動きが鈍くなる)、姿勢反射障害(正しい姿勢を保てない)などのパーキンソン病の症状を認めることがあります。
また、発症してからの進行速度も異なり、多系統萎縮症は脊髄小脳変性症と比較して症状の進行が急速であることが知られています。
多系統萎縮症に含まれる3疾患
先述したように、多系統萎縮症は脊髄小脳変性症のなかでも孤発性で、多彩な初期症状や急速に進行する点が特徴的です。
どの初期症状が顕著に出るかによって、下記の3つの病気に細分化されます。
| 線条体黒質変性症 | 初期症状がパーキンソン病の症状 |
|---|---|
| オリーブ橋小脳萎縮症 | 初期症状が小脳失調の症状 |
| シャイ・ドレーガー症候群 | 初期症状が自律神経障害の症状 |
初期症状の出方が異なるため、以前まではこれらの疾患はそれぞれ別の病気だと認識されていました。
しかし、下記のような共通点をもつことから同系統の疾患であると認識されるに至りました。
- 進行するといずれの疾患も症状が重複する
- いずれの疾患も画像検査で小脳・脳幹・線条体に異常所見を認める
- 組織病理の所見も同様の異常所見を認める
線条体黒質変性症
線条体黒質変性症は多系統萎縮症の中でも初期症状としてパーキンソン病の症状が目立つ疾患です。
筋強剛(筋肉が硬直する)、無動(動きが鈍くなる)、姿勢反射障害(正しい姿勢を保てない)が目立ち、パーキンソン病と見分ける必要がありますが、下記のような相違点もあります。
- 線条体黒質変性症では振戦(手指の震え)は目立ちにくい
- 線条体黒質変性症の方が進行が早く、抗パーキンソン病薬も効きにくい
オリーブ橋小脳萎縮症
オリーブ橋小脳萎縮症は多系統萎縮症の中でも初期症状として小脳失調の症状が目立つ疾患であり、日本人では最も多い病型です。
めまいやふらつきなどの運動失調が目立ち、中年以降での発症が多いです。
シャイ・ドレーガー症候群
シャイ・ドレーガー症候群は多系統萎縮症の中でも初期症状として自律神経障害の症状が目立つ疾患です。
主な症状として勃起障害、睡眠時の呼吸障害、発汗障害などの自律神経症状が目立ちます。
脊髄小脳変性症や多系統萎縮症の治療
残念ながら、現在の医療では根治的な治療を行うことは困難であり、あくまで出現した症状に対する対症療法やリハビリのみになります。
これらの疾患は脳細胞に異常なタンパク質が溜まっていく病気ですが、その原因がわかっておらず、溜まったタンパク質を直接的に除去することも困難です。
そのため、脊髄小脳変性症や多系統萎縮症は一度発症すると徐々に神経症状が悪化し、時間の経過とともに神経症状は悪化していきます。
脊髄小脳変性症であれば症状の進行は非常に緩徐ですが、多系統萎縮症の場合は症状の進行が急速で、発症後平均約5年で車椅子、約8年で寝たきり(臥床状態)となる方が多いです。
まとめ
この記事では、脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の違いや、多系統萎縮症の病型について詳しく解説しました。
どのタイプであっても、時間経過とともに徐々に神経細胞が障害され、症状は進行します。
現状では根治する術はなく、将来的に新たな根治的治療が開発されることが期待されます。
一方で近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
脊髄小脳変性症や多系統萎縮症による神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- 脊髄小脳変性症の完治例は報告されていますか?
- 残念ながら、脊髄小脳変性症の完治例は報告されていません。
進行性に変性する脳細胞の萎縮を止める方法がないため、出現した症状を緩和するような治療が主であり、今の医療では完治は困難です。
- 脊髄小脳変性症は寝たきりになりますか?
- 脊髄小脳変性症の中のどの病型かによっても経過は異なりますが、基本的に最終的には寝たきりになる可能性が高いです。
特に、多系統萎縮症は進行が早いことが知られており、発症から10年以内に寝たきりになる人が多いです。
<参照元>
(1):多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/221
(2):脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4879













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