この記事を読んでわかること
・脊髄損傷後の支援制度について
・脊髄損傷後の福祉用具について
脊髄は脳と体をつなぐ神経の束であり、非常に重要な役割を担っています。
脊髄の損傷によって、運動神経、感覚神経、自律神経が障害されると、その後多くの後遺症が残ってしまいます。
特に麻痺や痺れは日常生活に支障をきたすため、人的介護や福祉用具が必須になります。
そこで今回は脊髄損傷後にどういった福祉用具を利用できるか解説します。
脊髄損傷後の支援制度について
脊髄損傷後は運動神経が障害されるため麻痺が残存してしまい、感覚神経が障害されることで痺れなどの感覚障害が残存する可能性があります。
さらに交感神経や副交感神経などの自律神経が損傷されることで血圧や脈拍、排尿や排便、体温調節、睡眠など多くの生理機能にも異常が生じます。
そんな中、自宅等で生活していくには日常生活における入浴や排泄、食事などの介護や、それらの行動を補助する補助具が必要になります。
これらの介護もしくは物的サービスを受けるためには、まず最初に市町村に身体障害者手帳の交付を申請する必要があります。
身体障害者手帳を交付されることで市町村の提供する多くの介護サービスや、障害手当金や障害者給付金などの金銭的援助を受ける事ができます。
さらに、病院から離れ自分で生活する上で必要となる補装具や日常生活用具の提供や、住宅改装に対する支援を受けることも可能です。
では、具体的にどういった福祉用具を提供しているのか解説します。
脊髄損傷後の福祉用具について
身体障害者として認定された場合、居住地の福祉事務所や市町村の障害福祉担当課に申請すれば様々な福祉用具の支援を受ける事ができます。
補装具
補装具は障害によって失われた身体機能を補完する道具です。
費用は用具の種類毎に基準額が設定されていますが、原則として1割負担です。
また所得に応じて負担上限月額が設定されています。
主な補装具は、上肢や下肢、体幹に装着する装具、電動車椅子、車椅子、歩行器、歩行補助杖などがあります。
特に上肢、下肢ともに麻痺が出現している方の場合、顎でコントロールする電動車椅子もあります。
日常生活用具
腰髄損傷であれば下肢の麻痺だけで上肢の運動は障害されませんが、頸髄損傷となると四肢麻痺が出現しほとんどの動作に支障をきたします。
障害者が日常生活を円滑に営めるように、必要に応じて各種の日常生活用具の給付もしくは貸付を受ける事ができます。
ここでいう日常生活とは、入浴や排泄、移動などの基本的な行動であり、患者の症状次第でどういった用具が必要か異なります。
それぞれの動作別に解説していきます。
移動
四肢麻痺の場合は体位変換すら自分ではできない人もいるため、褥瘡予防で体位変換器を借りる事ができます。
またベッドと車椅子間の移乗に移動用リフトが利用できます。
歩行の補助としてはT字状もしくは棒状の杖などの歩行支援用具も借りる事ができます。
また自宅内を少しでも安全かつ利便性に優れたものにするように自宅改修を行う場合、自治体によって異なりますが一定額の改修給付金が援助されます。
呼吸
障害が上位頸髄に及ぶ場合、呼吸筋がうまく運動できなくなるため呼吸のサポート器具が必要になります。
ネブライザーなどの加湿吸入器、電気式たん吸引器、酸素ボンベ運搬車などが利用可能です。
排泄
脊髄損傷では膀胱や直腸の機能が障害されやすいため、排尿や排便に対する補助具もあります。
排尿に関しては、紙おむつや収尿器、特殊尿器などを借りる事ができます。
排便に関しては、ポータブル便器、足で操作可能な特殊便器、人工肛門装具などの排便補助用具を借りる事ができます。
特殊尿器は、全介助でも自動で排尿を回収してくれる器械や、ある程度手動で行う器具などいくつかの種類があります。
入浴
上肢運動が可能であれば、入浴補助用具での自己入浴も可能です。
また入浴担架も借りる事ができます。
そのほかにも、シャワーキャリーや浴槽内リフトなど、ほとんど自分で動かなくても座位で入浴可能な器具もあります。
ここまで紹介したものは福祉用具の一部であり、障害部位や程度、所属する市町村によってサービスや物資は異なるため利用する場合は事前の確認が必要です。
まとめ
脊髄損傷における麻痺やしびれ、生理機能の障害は退院後の日常生活に大きな支障を与えます。
家族の介護はもちろんのこと、本書で紹介したような国や市町村の提供する福祉サービスを受けることをオススメします。
障害者手帳の交付を受け、訪問介護などの介護サービスや福祉用具の供給もしくは貸付を受けるべきです。
また、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
再生医療は自分の幹細胞を抽出し増幅させて体内に戻す治療法で、これにより今まで回復困難と言われてきた神経の損傷を回復させる事ができる可能性が高まっています。
特に脊髄損傷における後遺症に対しては、理学的なリハビリテーションと再生医療を組み合わせる事が非常に有効な治療となり得るため、現在その注目が増しています。
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