この記事を読んでわかること
・すべり症がもたらす後遺症や症状がわかる。
・神経圧迫によるしびれや筋力低下のメカニズムがわかる。
・重症化した場合の歩行困難や排尿障害のリスクがわかる。
すべり症は、脊椎の骨が正常な位置からずれてしまう疾患であり、主に腰椎で発生します。
この疾患は、進行するとさまざまな後遺症を引き起こす可能性があり、患者の生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあります。
本記事では、すべり症による後遺症とその症状、さらには重症化した場合のリスクについて詳しく解説します。
すべり症による後遺症とその症状とは?
すべり症とは、(脊椎すべり症)は、脊椎の一部が前方にずれてしまう状態を指します。
原因によって、以下の5つに分類されています。
(参照サイト:脊椎すべり症 – 06. 筋骨格系疾患と結合組織疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版)
- Type I,先天性:生まれつきの関節の変形
- Type II,分離:関節突起間という部位の欠損(脊椎分離症)が原因
- Type III,変性:変形性関節症に併発する場合などの関節の変性が原因
- Type IV,外傷性:骨折,脱臼,またはその他の損傷が原因
- Type V,病的:感染症,がん,またはその他の骨の異常が原因
脊椎すべり症は通常、腰椎のL3-L4,L4-L5、L5-S1の脊椎に発生し、L5-S1に最も多く発生します。
Type II(分離)やIII(変性)が最も一般的とされています。
若い成人のアスリートなどの怪我によって、Type II(分離)がよくみられます。
また、Type III(変性)は、60歳以上の変形性関節症の方で生じることがあります。
この場合、女性が男性よりも6倍多くみられます。
特に高齢者に多く見られる「腰椎変性すべり症」は、椎間板や関節が加齢により劣化することで起こりやすく、腰部脊柱管狭窄症と同じような症状が現れます。
例えば、立ったり歩いたりしているとお尻や太ももに痛みが生じ、歩くことが難しくなります。
一方で、少ししゃがみ、休めば楽になり、また歩くことができるようになります。
全く腰痛がない患者さんもいます。
(参照サイト:脊椎すべり症 – 06. 筋骨格系疾患と結合組織疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版)
(参照サイト:「腰椎変性すべり症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる)
この疾患は進行するとさまざまな後遺症を伴い、患者の日常生活に大きな影響を与えることがあります。
以下では、すべり症による具体的な後遺症とその症状を解説します。
腰痛や下肢痛が慢性化する原因
すべり症の代表的な症状として挙げられるのが腰痛と下肢痛です。
この痛みは、椎骨のずれによって神経が圧迫されたり、周囲の組織に負担がかかることが原因で引き起こされます。
腰痛は、腰椎の動きが不安定になることで慢性化しやすく、安静時でも痛みを感じることがあります。
下肢痛は坐骨神経痛のような鋭い痛みが特徴で、特に立ち上がったり歩行したりする際に強く現れることがあります。
このような痛みが日常生活に支障をきたし、長期間続く場合は後遺症として残る可能性があります。
神経圧迫によるしびれや筋力低下のメカニズム
腰椎には、馬尾神経を入れた硬膜管が通っている孔があり、これを脊柱管と呼びます。
なお、馬尾神経(ばびしんけい)とは、脊髄の末端から伸びる神経の束の事です。
下半身の運動や感覚を司る重要な神経となります。
すべり症では、腰椎がずれることによって脊柱管が狭くなってしまい、馬尾神経や神経根が圧迫されることで、これは、神経が持つ信号伝達の機能が妨げられることにより発生します。
神経の圧迫によって、以下のような症状が現れることがあります。
(参照サイト:「腰椎変性すべり症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる)
- 足先やふくらはぎにかけての感覚異常(しびれ、チクチク感)
- 足首やつま先の筋力低下による歩行不安定
- 長時間の立位や歩行での痛みや疲労感
これらの症状が放置されると、徐々に神経の機能が回復しにくくなり、日常生活における動作に深刻な影響を与えることがあります。
重症化した場合の歩行困難や排尿障害のリスク
腰椎すべり症が重症化すると、歩行障害や排尿障害がおこる可能性があります。
特に、馬尾神経が強く圧迫されると、「馬尾症候群」という症状を引き起こし、以下のようなリスクが高まります。
- 歩行困難:足の筋力低下や感覚異常により、スムーズな歩行が困難になります。
- 重度の場合、杖や歩行器が必要になる場合もあります。
- 排尿障害:膀胱や腸をコントロールする神経が圧迫されると、尿意を感じにくくなったり、排尿をコントロールできなくなったりする可能性があります。
このような症状が現れた場合、早期の治療が必要不可欠です。
(参照サイト:馬尾症候群 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版)
すべり症の治療としては、保存療法と手術療法があります。
痛みやしびれ感が強い場合、特に手術療法が有効であるとされています。
(参照サイト:腰部脊柱管狭窄書診療ガイドライン2021(改訂第2版) p64)
手術後の痛みや後遺症について不安を感じるかもしれません。
成人の脊椎分離症や分離すべり症に対する手術の後に神経障害が起こる頻度は、4〜35%程度とされています。
この中には、一時的な症状であり自然に回復するものもありますが、中には麻痺が残ってしまう場合も含まれています。
(参照サイト:成人における第 5 腰椎分離すべり症術後の 一過性下肢神経痛の検討.J.Spine Res.2023;14:31-37.|J STAGE)
しかし、近年の医療技術の進歩により、症状の改善や機能回復を目指した安全性の高い手術が提供されています。
過度な心配は不要と言えるでしょう。
まとめ
すべり症は、適切な治療を受けずに放置すると、腰痛や下肢痛の慢性化、神経圧迫によるしびれや筋力低下、さらには重症化による歩行困難や排尿障害といった後遺症を引き起こす可能性があります。
近年では、ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
こうした治療によって、症状の改善や神経機能の回復が期待されています。
特に、ニューロテック®で提案されている狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療リニューロ®治療は、骨髄由来間葉系幹細胞や同時刺激×神経再生医療®を組み合わせることで、損傷した神経の再生を促進する効果が確認されています。
すべり症による後遺症を最小限に抑えるためには、早期の専門的な診断と適切な治療が重要です。
気になる症状がある場合には、整形外科や神経内科を受診しましょう。
さらに、すべり症に対する再生医療についてご興味がある方は、ぜひ当院ニューロテックメディカルまでご相談くださいね。
よくあるご質問
- 変性すべり症の原因は?
- 加齢による椎間板や椎間関節の変性が主な原因です。
これにより、脊椎の安定性が失われ、椎骨が前方へ滑りやすくなります。
特に腰椎(L4/L5)や腰椎と仙椎のレベル(L5/S1)に多く発生し、女性や高齢者に多いのが特徴です。 - 分離すべり症の原因は?
- 過度なスポーツや反復する腰の負荷により、椎弓(脊椎の後方部分)に疲労骨折が生じることが原因です。
若年層に多く見られ、疲労骨折が治癒せずに椎骨がずれることで分離すべり症が発症します。
(1)脊椎すべり症 – 06. 筋骨格系疾患と結合組織疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版:https://www.msdmanuals.com/
(2)「腰椎変性すべり症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:https://www.joa.or.jp/
(3)馬尾症候群 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/
(4)腰部脊柱管狭窄書診療ガイドライン2021(改訂第2版) p64:https://minds.jcqhc.or.jp/
(5)成人における第 5 腰椎分離すべり症術後の 一過性下肢神経痛の検討.J.Spine Res.2023;14:31-37.|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspineres/14/1/14_2022-0012/_pdf/-char/ja
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