この記事を読んでわかること
・ヒートショックの概要がわかる
・寒暖差が血管に与える影響がわかる
・ヒートショックの予防策がわかる
ヒートショックとは、寒暖差によって血管にさまざまな影響がおよび、元々動脈硬化の進んでいる動脈が梗塞や出血・解離を引き起こす病態です。
特に冬場の浴室などは寒暖差が激しく、ヒートショックが起こりやすい環境のため注意が必要です。
この記事では、お風呂が原因で脳梗塞リスクが高まるケースについて詳しく解説します。
急激な温度変化(ヒートショック)が血管に与える影響
皆さんはヒートショックという言葉をご存じでしょうか?
ヒートショックとは、急激な寒暖差によって血圧が変動し、それによって大動脈解離や脳梗塞・心筋梗塞など、命に関わるような重篤な疾患を発症する状態を指します。
では、なぜこのような事象が発生してしまうのでしょうか?
これは、体外の寒暖差によって血管に大きな負担がかかるためです。
冬場のお風呂場でのシーンが最も理解しやすいため、お風呂場における血管の状態の変化を紹介します。
- 暖房の効いた温かい部屋から冷え込んだ脱衣所に行く→血圧上昇
- 脱衣して、さらに寒い浴室へ→血圧上昇
- お湯で温まる→急激に血圧低下
人は寒い時、体温を身体に維持するために血管を収縮させ、逆に温かい環境下では熱を放散するために血管が拡張します。
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そのため、冬場の入浴シーンでは、温かい部屋から温度の低い脱衣場、浴室に行くことで一気に血管が収縮し、血圧が上昇するのです。
一方で、浴室で湯船に入ったり、シャワーで温水を浴びると身体が温まり、血管が急速に拡張して血圧が急降下します。
このような血管への影響は、通常の血管なら耐えられますが、動脈硬化で硬く・脆くなった血管では耐えることができず、破綻して出血や解離を引き起こしたり、逆に閉塞してしまいます。
令和3年の厚生労働省人口動態統計によると、高齢者の交通事故による死亡者数が2,150人であるのに対し、浴槽内での不慮の溺死及び溺水死亡者の数は4,750人とおよそ2倍です。
いかにヒートショックが危険であるかがよく分かります。
(参照サイト:交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!|政府広報オンライン)
冷え性の人がお風呂で注意すべき危険な状況
普段から冷え性の人は特に脳梗塞には注意が必要です。
冷え性の方は血管が持続的にある程度収縮した状態であるため、冷所での血管収縮はそこまで余幅がありませんが、逆に温かい状態になった時の血管拡張の余幅が広く、一気に血管が拡張してしまうリスクを抱えています。
そのため、冷え性の方は入浴中に血圧低下のリスクが高く、血圧が下がれば各臓器への血流も当然低下するため、脳梗塞の発症リスクが上がってしまうのです。
入浴中の安全を確保するための具体的な対策
ヒートショックは気温の寒暖差に伴う血圧の乱高下が原因であるため、具体的に下記のような対策を行うことで予防できます。
- 浴室や脱衣場をエアコンなどで温める
- 入浴中のお湯を過度に熱くしない
- 長湯は控える
- 入浴前の飲酒や大食いは避ける
- 十分水分摂取してから入浴する
- 浴槽から出る時はゆっくり立ち上がる
入浴前後の寒暖差を極力減らすため、浴室や脱衣場をエアコンで温め、お湯はぬるま湯くらいの温度が適切です。
また、入浴前に飲酒や大食いを行うと血管が拡張したり、臓器に血流を多く奪われることで脳血流が低下しやすくなるため、控えましょう。
(参照サイト:冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-|消費庁)
一方で、こういった短期的な予防も重要ですが、長期的には動脈硬化を予防することが最も重要です。
先述したようにヒートショックは本来の弾力・柔軟性を持つ血管であれば起こりにくい病態であり、動脈硬化が進展した血管だからこそ、出血や梗塞が起こります。
動脈硬化を予防するには一時的な対策では困難であり、長期的に普段の食事内容や運動習慣・睡眠習慣を見直す必要があります。
ぜひこれを機に、生活を見直してヒートショックを予防しましょう。
まとめ
今回の記事では、お風呂が原因で脳梗塞リスクが高まるケースについて詳しく解説しました。
お風呂にはリラックス効果があり、温かいお湯に浸かることで血管が拡張しますが、その結果脳血流が低下して脳梗塞に陥るリスクもあります。
逆に、脱衣場が寒いと入浴前後に血圧が上昇し、脳出血や大動脈解離を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
この記事で紹介した予防策を実践し、これらの重篤な疾患の発症を予防しましょう。
もし仮に脳梗塞を発症した場合、対応が遅れれば重篤な後遺症を残したり、最悪死に至る可能性もあります。
現状では重篤な後遺症が残った場合に改善する術はリハビリテーション以外になく、仮にリハビリテーションを行なってもこれらの後遺症を根治することは困難です。
一方で、近年では脳梗塞の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳梗塞に伴う後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 冬の風呂で危険なことは?
- 冬の風呂で危険なことは、脱衣所や浴室の寒冷刺激で血圧が上昇し、くも膜下出血や脳出血を引き起こしやすくなることです。
また、その後浴槽で温まると血管が拡張して血圧が低下するため脳梗塞を発症しやすくなります。 - お風呂上がりに脳梗塞になる可能性はありますか?
- お風呂上がりに脳梗塞になる可能性はあります。
お風呂上がりは血管が拡張しており、また発汗によって脱水傾向であるため、脳血流が低下しやすく、脳梗塞のリスクが高まっています。
十分な水分補給が脳梗塞を予防する上で肝要です。
<参照元>
(1):交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!|政府広報オンライン:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.html
(2):冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-|消費庁:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042
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