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脊髄損傷における回復例について

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷とは
脊髄損傷における回復例
脊髄損傷からの回復例


脊髄損傷は回復しない。
そんなイメージが先行しているかもしれませんが、症状や所見次第で機能が回復する可能性もあります。
手術やリハビリ以外に近年では再生医療の分野も進歩していて、脊髄損傷への対抗策も増えつつあります。
そこで今回は脊髄損傷における回復例について解説していきます。

脊髄損傷とは

脊髄損傷による損傷レベル

人の感覚や運動神経を司る『脊髄』にダメージが加わると、様々な後遺症が生じます。
脊髄は部位によってレベルが分かれており、レベルが上であるほど症状も重くなります。
リハビリだけで完全な回復は難しく、再生医療との並行で後遺症を最小限に抑えることが可能です。


脊髄とは脳からの指令を体に送りなんらかの動作を取らせたり、逆に体からの熱さや痛みなどの感覚を脳へ伝える、体と脳の架け橋のような機能を持っています。
脊髄は細い神経がたくさん集まって束状になった一本の太い幹のようなものです。
頸部、胸部、腰部、仙骨部の脊髄をそれぞれ頸髄、胸髄、腰髄、仙髄と呼び、それぞれ上肢、体幹、下肢、膀胱や直腸の運動や感覚をコントロールしています。
外傷やなんらかの病気により脊髄が損傷した場合、感覚をうまく脳へ伝えられず痺れなどの感覚障害が、運動の指令をうまく体へ伝えられず麻痺などの運動障害がそれぞれ症状として出現します。
脊髄損傷の程度により、時間が経つとある程度機能が回復してくる不全損傷と、時間経過に関わらず全く回復の見られない完全損傷の2つに分類されます。
特に受傷後8週間以上経過しても完全損傷のままであればその後の機能回復はほとんど見込めません。
完全損傷の多くは脊髄がひどく損傷、もしくは断裂してしまい仮に手術しても神経そのものを直すことができないので機能回復は非常に稀です。
逆に不全麻痺であれば脊髄の損傷は一部に留まり、手術や再生医療、その後のリハビリテーション次第で機能回復の可能性があります。
では、具体的に回復する事例について解説していきましょう。

脊髄損傷における回復例

脊髄損傷における回復例
脊髄損傷からの回復と言っても、何を持って回復と定義するのかによって回復率も異なります。
例えば、自宅での生活への復帰を回復とするよりも、職場への復帰を回復と定義する方が回復率は低くなるはずです。
現状で報告されている、元々就労していた人の脊髄損傷後の復職率は概ね40%程度と言われています。
その内訳ですが、受傷後の転職や同じ職場内での配置転換などの対応が必要であった人が80%程度で残りの20%の人は受傷前と同じ仕事に復帰できています。
つまり脊髄損傷後に受傷前と元通りの生活ができる人は約8%程度の確率なのです。

筆者が実際に経験した脊髄損傷からの回復例①

筆者の勤める病院には日頃から交通外傷の患者さんがたくさん搬送されてきていました。
ある日、自転車に乗っていた40代の男性が対自動車の交通事故に巻き込まれてしまったとのことで搬送されてきました。
病院到着後、両足の麻痺を認め肛門に指を入れると反射が減弱していて腰髄の損傷を強く疑う所見でした。
緊急でMRIを撮影すると腰椎の圧迫骨折と腰髄損傷の診断でした。
今後さらなる脊髄損傷を避ける目的で緊急手術を行いました。
この患者さんは受傷してから数時間で手術を受けることができたため、不可逆的な神経損傷に至らず術後に下肢の機能や膀胱直腸障害も改善したのです。
もちろん術後のリハビリも大きく影響したとは思いますが、術後に大きな後遺症を残すこともなく日常生活への復帰を果たしました。
こちらは、緊急手術を適切に行なえ、十分なリハビリを受けることが出来た一例と言えます。
脊髄損傷に至った患者さんが医療により実際に後遺症無く日常に復帰出来るんだ、という貴重な経験を見ることができました。

筆者が実際に経験した脊髄損傷からの回復例②

もう1つ症例をご紹介します。
骨に転移した末期の前立腺がんを罹患されていた60代の男性患者さんがいました。
元々は、介護は不要でご自身の力で日常生活を営んでいましたが、ある日腰痛とともに歩けなくなってしまい救急搬送されました。
診断結果前立腺がんの腰椎転移に伴う腰髄損傷でした。
主治医の判断により、脊椎に骨転移を認めることより、手術適応にはならず、急性期を過ぎても、動作をともなうリハビリも見送られることになってしまいました。
座位をとったり、一般の車いすにのるのも、主治医から禁止されてしまいました。
積極的なリハビリをしないと寝たきりになってしまうことが明らかであり、リハビリ科医として、疼痛が出現しない程度でベッドアップをしたり、リクライニング車いすにのってもらったり、コルセット着での座位保持訓練などを強く提案しました。
しかし、骨折のリスクに関してご家族らの同意を最後まで得ることが出来ませんでした。
その後、寝たきりの状態となり、呼吸器感染症や尿路感染症を繰り返すことになってしまいました。
こちらは、病状のため、手術を行なえず、積極的なリハビリを受けることが出来なかった一例と言えます。
例えどんな状態であっても、出来る限りのリハビリをすることを推し進める重要性を痛感した症例でした。

脊髄損傷に対する再生医療の可能性

上記のように病状により、治療の適応となるケース、治療の適応とならないケース、運良く症状が改善する患者さんもいますが、効果が得られない患者さんもたくさんいます。
そこで、手術やリハビリ以外の選択肢として、近年注目を浴びているのが再生医療分野です。
再生医療分野は未だ発展途上ですが、その中でも2013年に札幌医科大学が開始した治験は素晴らしい結果でした。
患者さんから抽出し培養した間葉系幹細胞を患者さんの体に点滴注射し、損傷した脊髄や神経細胞に定着させ機能回復を図る治療法です。
札幌医科大学の治験に参加した20〜60代の重症患者13人のうち、なんと12人に5段階ある機能障害の尺度で1段階以上の改善を認めたのです。
この結果は再生医療分野の臨床への進出に大きな影響を及ぼしました。
コストや安全性や長期的有効性についてはまだまだ課題がありますが、脊髄損傷の患者さんにとっての希望になる可能性は十分あります。

まとめ

脊髄損傷は症状の程度次第で2度と回復することのない機能障害を負う可能性があります。
しかし、再生医学の進歩で改善する可能性があります。
具体的には骨髄の中にある幹細胞を取り出し、培養したものを点滴投与する方法です。
幹細胞には損傷した細胞を再構築する能力があるからです。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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