この記事を読んでわかること
・血管性認知症とは
・血管性認知症とアルツハイマー病
・血管性認知症の予防と治療
すっかり身近な用語となった「認知症」ですが、認知症には原因などによって分類されるいくつかの種類があります。
その一つが血管性認知症です。
この記事では、血管性認知症の予防と治療について解説します。
血管性認知症とは
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血など脳血管障害によって脳が損傷し、それに関連した機能障害により発症する認知症の総称です。
血管性認知症の診断基準はいくつかありますが、NINDS-AIRENという診断基準(米国国立神経疾患・脳卒中研究所)では、次の項目が挙げられています。
- 臨床的に認知症と診断されること
- 脳血管障害があることが臨床所見と画像診断から裏付けられること
- 両者の関連性があると考えられること
以前は脳の血管に動脈硬化があると血流が減少し認知症を引き起こすと考えられていましたが、現在では小さな脳梗塞が積み重なることで血管性認知症に至ることが多いと考えられています。
血管性認知症とアルツハイマー病
認知症の原因疾患として最も多いのはアルツハイマー病で、全体の70%近くとされています。
次に多いのが血管性認知症で全体の20%程度です。
血管性認知症とアルツハイマー病にはいくつか違う点があります。
アルツハイマー病は記憶障害が初期の症状になりやすいのに対して、血管性認知症では意欲低下や遂行機能障害を来すことが多いとされています。
また歩行が不安定になりやすい、排尿障害、抑うつ、情動失禁といった症状は血管性認知症に特徴的な症状であるとされ、どれも生活への影響が大きい重要な症状です。
血管性認知症は原因がはっきりしている一方で、アルツハイマー病の原因は不明な点が多いというのも大きな違いです。
脳梗塞や脳出血が原因である血管性認知症は、脳血管障害の対策をとることで予防や治療が可能になります。
しかしアルツハイマー病はアミロイドとタウ蛋白という物質が脳にたまることは分かっているもののその原因と対策は十分に解明されておらず、治療は難しい状況です。
(2023年1月アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が話題となり、日本での承認申請が進められています)
ただし両者は必ずしもはっきりと分けられない場合があることや、併存しているケースがあることに注目が集まっています。
血管性認知症の予防と治療
血管性認知症は脳血管障害が原因であるため、脳血管障害に対する予防や治療が重要な対策になります。
代表的な脳血管障害が脳梗塞です。
脳梗塞の主要な原因は動脈硬化であり、動脈硬化を引き起こすのは高血圧や糖尿病などの生活習慣病です。
高血圧や糖尿病の治療をしっかりと受け、動脈硬化が進行しないように日頃の運動や食事など生活習慣を改善していくのが、血管性認知症の予防として重要です。
血管性認知症の症状がすでに出ている場合は、それ以上進行しないように対策するのが治療になります。
脳の障害により失われた認知機能は元通りに改善させるのは難しいからです。
小さな脳梗塞の繰り返しが血管性認知症の原因となるため、脳梗塞の再発予防が必要です。
血液がサラサラになる薬の使用は再発予防に重要な役割を占めます。
日常生活をスムーズに送るためのリハビリテーションを実施することがありますが、認知機能の低下がある場合思うように訓練を行うことができないケースがあり、治療は簡単ではありません。
血管性認知症に対する再生医療
脳の損傷により機能低下を来している場合、その機能を取り戻すのは難しく、治療は「残された機能を使ってどのように生活するか」という点に主眼が置かれます。
神経そのものの治療を行うことはできない、というのがこれまでの常識でした。
その常識に一石を投じることができるかもしれないのが、再生医療です。
再生医療は神経や血管の元になる細胞(幹細胞)を使用して、神経の機能そのものを再生させようとする治療です。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
血管性認知症に対しては、再生医療と同時に刺激する最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
血管性認知症の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
血管性認知症について解説しました。
認知症の予防や対策は難しく一度なってしまうと打つ手がない、という印象があるかもしれません。
しかし血管性認知症は原因がはっきりしており、予防が可能な疾患です。
すでに出ている症状に対しては、再生医療など新たな治療の効果が期待されます。
よくあるご質問
脳血管性認知症 余命は何年?
認知症の余命についてはさまざまな研究が行われており、発症以後の余命は3-12年とされています。進行が緩徐なアルツハイマー病と比較すると、脳血管性認知症の余命は少し短くなると考えられています。
脳血管性認知症の生存率は?
福岡県久山町というところで行われた調査によれば、認知症の10年生存率(10年後に生存していた方の割合)はアルツハイマー病で18.9%、脳血管性認知症は13.2%と報告されています。
<参照元>
・「血管性認知症の概念の成立と変遷」老年精神医学雑誌32, 2021
・「血管性認知症とは」BRAIN NURSING 37(2), 2021
・「Incidence and survival of dementia in a general population of Japanese elderly: the Hisayama study」N Neurol Neurosurg Psychiatry. 80(4), 2009
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