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進行性核上性麻痺とパーキンソン病の違いと余命

           

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この記事を読んでわかること

進行性核上性麻痺とは
進行性核上性麻痺の原因
進行性核上性麻痺の余命


進行性核上性麻痺とは、大脳基底核、脳幹、小脳などに進行性の変性が生じ、神経細胞が萎縮していく病気です。
初期にはパーキンソン病にも似た症状が出現しますが、パーキンソン病よりも急速な経過を辿る点で異なります。
この記事では、進行性核上性麻痺の原因や治療、余命などについて詳しく解説していきます。

進行性核上性麻痺とパーキンソン病の初期症状の違い

認知症
みなさんは、進行性核上性麻痺という病気をご存知でしょうか?
人口10万人あたり約10〜20人が発症すると報告されている稀な疾患で、発症以降急速な経過を辿る神経変性疾患です。
脳の中でも大脳基底核、脳幹、小脳などの部位に変性が生じ、様々な症状をきたします。
初期症状のうち、動作緩慢や歩行障害などパーキンソン病に似ている症状を認めますが、パーキンソン病の治療薬はあまり有効ではなく、たとえ効いたとしてもその効果は一時的で、症状がより早く進行していくという点でパーキンソン病とは異なります。

進行性核上性麻痺の特有の症状とパーキンソン病との区別点

パーキンソン病と進行性核上性麻痺(PSP)は、初期症状が似ているため、診断が難しい場合があります。
パーキンソン病は振戦(震え)や運動緩慢といった症状が徐々に進行するのに対し、進行性核上性麻痺は垂直性眼球運動障害や姿勢保持困難、頻繁な転倒が急速に進行します。
また、進行性核上性麻痺の患者は早い段階で認知機能障害や抑うつが現れることが多く、これがパーキンソン病との重要な違いです。
正しい診断を受けるためには、専門医による詳細な神経学的検査が不可欠です。

進行性核上性麻痺の原因

進行性核上性麻痺の患者では、タウ蛋白というタンパク質が大脳基底核(黒質、淡蒼球、視床下核など)や中脳、小脳歯状核などの神経細胞内に異常蓄積することが分かってきています。
アルツハイマー型認知症やピック病でも、同じようにタウ蛋白の異常蓄積を認めます。
ちなみに、パーキンソン病は黒質の神経細胞の変性が原因であるため、初期症状が類似してしまうわけです。
なぜこのような変性が生じてしまうのかの原因については解明されていません。

進行性核上性麻痺の症状

ここでは、進行性核上性麻痺の主な症状について解説します。

垂直性核上性眼球運動障害

眼球運動に関与する動眼神経や外転神経の中枢(これを核上と表現します)が変性によって障害を受けると、眼球運動に異常をきたします。
進行性核上性麻痺では、垂直方向、特に下向きへの随意的眼球運動が障害され、下を向くことが難しくなってしまいます。
多くの例では初期に発見されず、症状が進行した2〜3年で発見されることの多い症状ですが、進行すると左右の随意的眼球運動も障害され、最終的には正中位で固定されてしまいます。
障害されるのはあくまで随意的眼球運動、つまり自分で動かそうとした時の運動であり、他者が頭を動かした場合には眼球は動きます。

嚥下障害・構音障害

飲み込みや話し方に関わる神経も障害されるため、進行すると嚥下障害、構音障害が出現します。
特に、嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎は生命予後に関わる合併症であり注意が必要です。

歩行障害

実は進行性核上性麻痺で最も多い自覚症状は「転びやすい」ことです。
半数以上の人は、発症して1年以内に繰り返す転倒がみられるとされています。
これは、パーキンソン病と同様、大脳基底核の変性によってスムーズな運動が障害されるからだと考えられます。
代表的な歩行障害として、足がすくんで前に出にくくなるすくみ足や、歩行がだんだん速くなって止まれなくなる加速歩行などが挙げられます。
他にも、パーキンソン病で見られるような動作緩慢、ジストニア、固縮など、筋肉が硬直してしまう病態が見られます。

認知機能障害

広範な脳細胞の変性に伴い、認知機能障害も出現します。
アルツハイマー型認知症と比較して、認知機能障害は軽度であるという特徴もあります。

進行性核上性麻痺の余命

「進行性」と名前が付くように、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症と比較すると非常に急速な経過をたどる特徴があります。
歩行障害などによって転倒する機会が増加していき、やがては寝たきりになります。
発症してから寝たきりになるまでの期間は約4、5年と報告されています。
最終的には喀痰や誤嚥に伴う呼吸器系合併症によって死に至り、平均余命は発症から5〜9年程度と言われています。

進行性核上性麻痺の治療

進行性核上性麻痺の治療ですが、残念ながら現状では変性の原因を根本から除去するような治療法は見つかっていません。
そのため、治療の主目的は「出現した症状を抑える」ことです。
ここでは、具体的な治療法をご紹介します。

薬物療法

例えば、固縮などのパーキンソン病に似た症状については、パーキンソン病に使用する治療薬の投薬を行います。
具体的には、ドパミン作動薬、三環系抗うつ薬、ノルアドレナリン作動薬、抗コリン薬、塩酸アマンタジンなどが挙げられます。
しかし、これらの効果は限定的、もしくは一時的で、症状の進行を完全に抑え込むことはできません。

リハビリテーション

前述したように、進行性核上性麻痺では歩行障害、嚥下障害、認知機能障害などの症状が出現します。
そこで、これらの症状に対してはリハビリテーションが効果的です。
特に嚥下障害が進行すると誤嚥性肺炎に進展する可能性もあるため、早期からの嚥下訓練が必要です。

進行性核上性麻痺の新薬とは

進行性核上性麻痺に対する新薬の開発は進行しているものの、革新的な特効薬などの開発には至っていないのが現状です。
最新の研究では、神経細胞にダウ蛋白が蓄積する機序の解明や、蓄積したダウ蛋白を除去する治療薬などが開発されていますが、実臨床への応用はまだまだ道のりが長そうです。

進行性核上性麻痺とパーキンソン病との違いのまとめ

今回の記事では進行性核上性麻痺の病態や症状、余命などについて解説させて頂きました。
進行性核上性麻痺はアルツハイマー型認知症などと同様、脳の一部にダウ蛋白が蓄積して機能が障害されていく病気であると考えられています。
特に、急速な経過をたどる点で他の変性疾患と異なり、発症からわずか5〜9年で死亡する可能性が高い、恐ろしい病気です。
現状、根治療法は存在せず、あくまで症状の進行を抑えこむことが治療の目的となっています。
しかし、近年では再生医療が発達しつつあり、変性した脳細胞も再生できるかもしれません。
そうなれば、進行性核上性麻痺によって失われた機能が再び元に戻る可能性もあるため、現在その知見が待たれるところです。

よくあるご質問

進行性核上性麻痺の年齢は?
進行性核上性麻痺は40代以降に発症することが多く、平均発症年齢は50~70代と報告されています。
ダウ蛋白の蓄積が病態と考えられているため、他の変性疾患と同様に加齢は発症のリスクファクターであると考えられます。

進行性核上性麻痺の治療薬は?
根本的にダウ蛋白の蓄積を除去、抑制するような薬は存在しません。
現在行われている治療は、進行性核上性麻痺の発症によって出現した症状を抑えるような対症療法が主です。
主に薬物療法や理学療法などが挙げられます。
関連記事▶︎ 進行性核上性麻痺の治療

<参照元>
兵庫医科大学病院:https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/114
難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4114

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あわせて読みたい記事:核上性麻痺とパーキンソン病の基本的な特徴

外部サイトの関連記事:パーキンソン病と線条体黒質変性症の基本的な違い


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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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