この記事を読んでわかること
・全身性エリテマトーデスとは
・全身性エリテマトーデスの症状
・全身性エリテマトーデスの治療
あらゆる方面へ応用の可能性が探られている再生医療ですが、近年話題に挙がるのが膠原病など自分の免疫が関わる疾患への応用です。
本来外敵から身を守るための免疫が、何らかの異常により自分の組織を攻撃してしまう状況です。
全身性エリテマトーデスは自分の免疫が関わる膠原病の一種です。
この記事では、全身性エリテマトーデスの初期症状、初期以降の症状、そして再生医療を応用できる可能性について紹介します。
全身性エリテマトーデスとは
全身性エリテマトーデスとは、自分の組織を自分の免疫が攻撃することで炎症を引き起こし、全身に様々な症状を起こす疾患です。
エリテマトーデスとは皮膚に見られる赤い紅斑という症状に由来する用語です。
日本全国に約6-10万人の患者さんがいるとされ、20-40歳の女性に多く男女比は1:9と圧倒的に女性に多い疾患です。
なぜ自分の組織を自分の免疫が攻撃するようになるのか、その原因は解明されていません。
屋外で受ける紫外線の刺激や風邪などのウイルス感染、外科手術や妊娠・出産などが発症の引き金になるケースが報告されています。
全身性エリテマトーデスの初期以降の症状
全身に炎症が起きるため発熱や倦怠感、疲労感などの症状が起こります。
周囲から見て気づきやすい症状に、皮膚の症状があります。
頬にできる蝶形紅斑やディスコイド疹という特徴的な発疹がこの病気を疑うきっかけになります。
関節に炎症を起こすことがあり、手や指、肘や膝など様々な関節が腫れ痛くなります。
そして重要なのは臓器の症状です。
中枢神経や肺、心臓、消化器などあらゆる臓器に炎症を起こし、機能を障害します。
頻度が高いのは腎臓の障害で、ループス腎炎と呼ばれることがあります。
全身性エリテマトーデスの治療
自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気なので、治療には免疫を抑える薬を使用します。
ほとんどの症例に使用されるのが、ステロイドです。
重症度に合わせてステロイドの飲み薬の量を調整しながら使用します。
症状が重い場合には、ステロイドパルスといって多量のステロイドを短期間に投与する方法を行います。
ただし長期のステロイド使用や、ステロイドパルス療法には合併症の危険性が伴うため、慎重に進めていく必要があります。
その他にも免疫抑制薬を組み合わせることで病気の改善を早めたり、ステロイドの量を減らしたりできるよう試みます。
しかし免疫を抑制してしまう分、感染症などにかかりやすいという副作用が常に伴います。
全身性エリテマトーデスと再生医療
北海道大学、札幌医大の研究グループは、全身性エリテマトーデスの臓器障害に、骨髄の自律神経障害が関係していることを報告しました。
動物モデルの骨髄に薬剤を投与し自律神経障害を起こすと、臓器障害が悪化することを見出したからです。
そこで、神経系の再生を期待することのできる骨髄間葉系幹細胞を骨髄に投与したところ、皮膚炎や腎炎などの多臓器障害が改善したというのです。
間葉系幹細胞は様々な細胞に成長することのできる幹細胞の一種で、骨髄などに存在します。
再生医療では幹細胞を体外に取り出し培養して増やしたものを体内に戻すという手法をとり、機能や組織の再生を試みます。
つまり再生医療の手法が全身性エリテマトーデスの症状を改善させる効果が示されたのです。
まだ動物モデルの段階のため実用化にはまだまだ道が続きますが、ステロイドなどの薬剤による副作用を回避するためにも、再生医療は有用な治療になる可能性があります。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
全身性エリテマトーデスへの治療応用についても可能性を探っていきます。
症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
全身性エリテマトーデスは一度発症すると根本的な治療が困難で、多くの場合一生を通して薬を使用せざるをえない疾患です。
薬には副作用がつきものであるため、できれば自分の細胞など自然に近い形で治療できるのが理想的です。
再生医療の治療応用に期待が高まります。
よくあるご質問
全身エリテマトーデスの初期症状は?
発熱やだるさなど全身的な症状が発生します。初期から皮膚症状に気づきやすく、両頬に発疹が出る蝶形紅斑やディスク状に発疹が出るディスコイド疹が知られています。進行すると様々な臓器症状を引き起こします。
エリテマトーデスは指定難病ですか?
全身性エリテマトーデスは指定難病の一つです。治療は長期間に及び、時に高額な医療費が必要となることがあるため、認定基準を満たす場合は医療費の助成を受けることができます。
<参照元>
・「全身性エリテマトーデスマウスに対する間葉系幹細胞治療」
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220510_pr.pdf
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