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脳幹出血とその影響

           

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この記事を読んでわかること

脳幹出血の原因がわかる 
脳幹出血の症状がわかる
脳幹出血で視力低下するメカニズムがわかる


中脳・橋・延髄で構成される脳幹は担っている機能が多彩であるにも関わらず、脳出血の好発部位でもあります。
一度出血を起こすと、麻痺やしびれはもちろんのこと、動眼神経や舌咽神経などの脳神経も障害を受けるため、その影響は大きく注意が必要です。
そこで、この記事では脳幹出血の原因や症状について詳しく解説します。

まず脳幹出血とは何か

まず脳幹出血とは何か
脳幹出血とは、その名の通り脳幹における脳出血であり、脳出血全体の約5〜10%を占めます。
脳幹とは大脳と脊髄の間に位置する脳の一部で、上から順に中脳・橋・延髄で形成されている非常に重要な部位です。
大脳からの運動の刺激は脳幹→脊髄→末梢神経→筋肉と伝達されていき、逆に身体からの感覚の情報も末梢神経→脊髄→脳幹→大脳と伝達されるため、脳幹が障害されれば運動機能や感覚機能に与える影響は甚大です。
脳深部での出血であることから予後不良であることが知られています。
神経学的にみて、脳の中でも非常に重要な部位であるため、出現する症状も多岐に渡ります。
では、具体的にどのような症状が出現するのでしょうか??

脳幹出血の一般的な原因と症状

ここでは脳幹出血の原因と症状を解説します。

脳幹出血の原因

脳幹出血の主な原因は下記の通りです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • 肥満
  • 喫煙

長期的な高血圧や喫煙によって血管内皮細胞が損傷すると、糖尿病や高脂血症、肥満によって動脈内に多く含まれるLDLコレステロールが血管壁内に侵入します。
その結果、血管壁は硬く脆く変性し、これがいわゆる動脈硬化です。
動脈硬化が進行して脆くなった血管に対して、急激な血圧の変化などが加わることで血管壁が破綻し、脳出血を引き起こすと考えられています。
そのため発症予防のためには上記のような生活習慣病や肥満を予防する必要があり、継続的な食事管理・運動習慣が必要不可欠です。
また、そのほかに海綿状血管腫などの血管奇形などが背景にある場合も脳幹出血のリスクは高くなります。

脳幹出血の治療

実際に発症した場合、脳幹が担う神経機能は多岐にわたるため、出現する症状も非常に多彩です。
具体的には下記のような症状が挙げられます。

  • 嘔気嘔吐
  • 頭痛
  • めまい
  • 麻痺
  • しびれ
  • 呼吸障害
  • 自律神経障害
  • 意識障害
  • 脳神経症状

上記のうち、嘔気嘔吐、頭痛、めまいなどの症状は比較的早期に出現する症状であり、閉鎖空間である頭蓋内での出血によって頭蓋内圧が上昇することに伴う症状、これを頭蓋内圧亢進症状といいます。
さらに頭蓋内圧亢進症状が進行すれば脳全体が圧迫を受け、意識障害に至る可能性もあります。
また、先述したように脳幹内部には大脳から身体への運動の刺激や、身体から大脳への感覚の情報が伝達されるため、頭蓋内圧亢進症状とともに麻痺やしびれなどの症状も出現します。
さらに、脳幹の延髄には呼吸中枢が位置しているため、脳幹出血によって呼吸障害、最悪の場合呼吸停止して死に至る可能性もあるため、注意が必要です。
次に、脳幹出血で特徴的な点は脳神経症状をきたす点です。
人体に備わる12対の脳神経のうち、10の脳神経は脳幹から分岐するため、脳幹が障害されることで各脳神経の機能にも障害が生じます。

  • 中脳から分岐する神経:動眼神経・滑車神経
  • 橋から分岐する神経:三叉神経・外転神経・顔面神経・聴神経
  • 延髄から分岐する神経:舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経

上記のどの部位が障害されるかによって出現する症状も異なります。
例えば、動眼神経・滑車神経・外転神経は目の動きに関わる神経のため、眼球運動障害の原因です。
三叉神経が障害されると顔面の知覚が、顔面神経が障害されると顔面の運動が障害され、聴神経障害は聴覚の異常を招きます。
舌咽神経や迷走神経、舌下神経が障害されれば、咽頭部や喉頭部の運動機能が障害され、構音障害や嚥下障害などの重篤な後遺症を引き起こします。
以上のように、脳幹のどの部位がどのように障害されるかで出現する症状も異なるため、注意が必要です。

視力低下を引き起こすメカニズム

先述したように、脳幹出血では眼球運動に関わる下記の3つの脳神経がそれぞれ、もしくは同時に障害される可能性があります。

動眼神経
上斜筋や外側直筋以外の外眼筋の調節、もしくは瞳孔の調節
滑車神経
上斜筋の調節
外転神経
外側直筋の調節

上記の神経はそれぞれ記載の筋肉を調節して、左右の眼球運動を調節しています。
また動眼神経は瞳孔の収縮に関与し、眼球に入る光量の調節を行なっているため、これらの神経の機能が障害されることで視力低下を引き起こすわけです。
視力低下以外にも、視界のぼやけ、複視、視野狭窄などの症状が出現するため、日常生活に支障をきたします。

まとめ

今回の記事では、 脳幹出血とその影響について詳しく解説しました。
脳幹は脳の部位の中でも非常に多くの機能を司っている部位のため、出血によって障害された場合に出現する症状も多彩です。
特に、中脳・橋・延髄それぞれに位置する脳神経の機能が障害されると、嚥下障害・構音障害・顔面麻痺・眼球運動障害など特徴的な症状をきたし、その後の生活に与える影響も大きいです。
現状、これらの後遺症に対してはリハビリテーションによる機能の維持・改善が治療の第一選択ですが、根治には至っておりません。
一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、脳幹出血後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

脳幹出血のその後はどうなりますか?
脳幹出血は出血部位が脳の深部であり、手術で血腫を除去するにはあまりにもハイリスクであるため、通常手術適応にはなりません。運良く命が助かったとしても麻痺やしびれなどの重篤な後遺症が残る可能性が高く、長期的なリハビリが必要となります。

脳幹出血による視覚障害とは?
脳幹出血による視覚障害は、脳幹から分岐する3つの脳神経、動眼神経・滑車神経・外転神経が障害されることで生じます。これらの神経が障害されることで眼球運動や瞳孔の動きが障害され、複視など視覚障害が出現します。

<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf/-char/ja
・日本脳卒中学会:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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