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急性硬膜下血腫の原因について

           

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この記事を読んでわかること

急性硬膜下血腫の原因がわかる
高齢者における急性硬膜下血腫の原因がわかる
急性硬膜下血腫の予防法がわかる


急性硬膜下血腫とは、脳を保護する硬膜と呼ばれる膜の下層において出血をきたし、蓄積した血腫が脳を圧迫する病気のことです。
原因は交通事故や転倒などに伴う頭部外傷であり、場合によっては脳実質そのものも障害される可能性があり、重い後遺症を残す可能性もあります。
この記事では、急性硬膜下血腫の原因や予防法について詳しく解説します。

交通事故による急性硬膜下血腫のリスクは?

交通事故に遭遇した際に頭部を強打
脳は周囲を脳脊髄液と呼ばれる液体で包まれ、さらに軟膜・クモ膜・硬膜と呼ばれる3つの膜に包まれて、最終的に頭蓋骨で保護されています。
しかし、頭部に何らかの衝撃や外傷が加わると、硬膜下に存在する皮質動脈や皮質静脈・架橋静脈などが破綻し、硬膜とクモ膜の間で出血し、急性硬膜下血腫に至ります。
同じような病態で硬膜の外側に出血を引き起こす急性硬膜外血腫という病気もありますが、硬膜と頭蓋骨の間の結合組織は密であり、出血の広がりは限定的です。
一方で、硬膜とクモ膜の間は空間が疎であり、血液が急速に広がりやすい空間のため、血腫も広範囲に広がるという特徴があります。
以上の違いから、急性硬膜外血腫では受傷直後は意識が保たれることが多く、一方で急性硬膜下血腫では受傷直後から意識障害を伴うことが多いです。
原因としては、交通事故や転倒転落に伴う頭部外傷が挙げられ、これらが原因の場合は出血はもちろんのこと、その直下の脳実質に脳挫傷や脳裂傷を伴う可能性が高く、その程度によっては予後不良となります。
特に交通事故による激しい頭部外傷の場合、血腫の量や受傷時の意識障害の程度などが予後に大きく関わるリスク因子であると言われています。

急性硬膜下血腫の発症リスクと重症度

急性硬膜下血腫は、高エネルギー外傷だけでなく、軽度の外傷でも発生する可能性があります。
特に、高齢者、アルコール依存症、抗凝固薬を服用している患者は、発症リスクが高いです。
また、脳の萎縮が進んでいる高齢者では、出血がゆっくりと進行し、慢性硬膜下血腫になることもあります。
症状は、意識障害、頭痛、嘔吐、けいれん、半身麻痺など、多岐にわたります。

高齢者における急性硬膜下血腫の原因とは?

転倒による頭部への打撲が原因で発生
一方で、高齢者の場合、交通事故などの頭部外傷以外でも急性硬膜下血腫を発症する可能性があるため、注意が必要です。
主な原因は下記の2つです。

  • 進行する脳萎縮
  • 抗血小板薬・抗凝固薬

加齢とともに脳が萎縮していくため、高齢者の場合は硬膜下のスペースが成人や小児と比較して、より疎になります。
そのため、通常なら急性硬膜下血腫にまで至らないような微小な血管の損傷でも、高齢者の場合は出血しやすい状態であるため、急性硬膜下血腫に至る可能性があります。
また、近年では生活習慣病に伴う心筋梗塞や脳梗塞の発症予防のために、抗血小板薬・抗凝固薬を内服する高齢者が増加傾向です。
これらの薬は血液をサラサラにする効果があるため、通常なら自然に止血作用の得られる微小出血も止血が得られず、少し頭を壁にぶつけただけでも急性硬膜下血腫に至る可能性があります。
以上の点からも、明らかな交通外傷や頭部打撲を伴わなくても、高齢者の場合は急性硬膜下血腫を発症する恐れがあることに注意すべきでしょう。

急性硬膜下血腫の病態メカニズム

急性硬膜下血腫は、頭部外傷により脳挫傷や脳表の血管(中硬膜動脈、静脈、橋静脈など)が破綻し、硬膜と脳の間に出血が溜まることで起こります。
特に、高齢者やアルコール依存症患者は、脳の萎縮が進んでいるため、軽微な外傷でも出血しやすく、重症化しやすい傾向があります。
出血は時間経過とともに拡大し、脳を圧迫することで、意識障害、頭痛、嘔吐、けいれん、瞳孔異常などの症状を引き起こします。

血管破裂を防ぐための予防策は?

血管破裂を防ぐための予防策としては、交通事故などの派手な外傷はもちろんのこと、自宅での転倒や、頭部をどこかにぶつけないように注意することです。
頭部への刺激が何よりも発症のリスクを増大させるため、可能な限り頭部へ不用意な刺激が加わらないように対策しましょう。
具体的な予防策は下記の通りです。

  • 段差の高い階段は極力避けて、スロープを利用する
  • 自宅の家電製品などは可能な限りコードレス化する
  • 足元がおぼつかないと感じたら、杖や車椅子を使用する
  • バイクや自転車では必ずヘルメットを着用する
  • 抗凝固薬・抗血小板薬の用法用量は守る

以上の予防策を徹底して、急性硬膜下血腫の原因となるような血管の破綻を未然に防ぐことが肝要です。

急性硬膜下血腫の予後と治療成績

急性硬膜下血腫の治療は、手術による血腫除去が一般的ですが、ドレナージや保存療法も選択肢として存在します。
治療のタイミングは予後を大きく左右し、早期の診断と治療が重要です。
しかし、脳損傷の程度や合併症、患者の年齢などによって、予後は大きく異なります。
後遺症としては、意識障害、運動麻痺、感覚障害、認知機能障害などがみられることがあります。

急性硬膜下血腫の原因についてのまとめ

今回の記事では、急性硬膜下血腫の原因について詳しく解説しました。
急性硬膜下血腫は主に頭部外傷や交通事故が原因で発症する病気で、脳の外側の硬膜下と呼ばれる部位で出血し、脳実質を血腫が圧迫してしまう病気です。
発症初期から意識障害を引き起こす可能性があり、二次的な頭部外傷を招く可能性もあるため、注意が必要です。
治療としては外科的に血腫を取り除く手術が挙げられますが、急性硬膜下血腫に脳挫傷を伴う場合、損傷した脳までは元に戻せないため、何らかの神経学的後遺症を招く可能性があります。
現状、麻痺やしびれなどの後遺症に対してはリハビリテーションでの機能改善が唯一の治療となりますが、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで完治の難しかった急性硬膜下血腫の後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

急性硬膜下血腫の救命率は?
有賀らの報告によれば、これまでの複数の研究による結果、脳挫傷を伴う急性硬膜下血腫の死亡率は46〜66%とかなりのバラつきがあるものの、高率であることが報告されています。死亡率が報告によって異なる理由は、血腫量や血腫の発生部位が多発しているかどうかなどによって変わるためです。

硬膜下血腫になりやすい人は?
硬膜下血腫になりやすい人は、高齢者・抗凝固薬や抗血小板薬内服者・激しいスポーツを行う人などです。特に、若年者の場合、ボクシングやラグビーなどの接触スポーツで頭部血管が損傷し、発症する可能性があるため、注意が必要です。

<参照元>
・慶應義塾大学医学部外科脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/other/03.html
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam1990/5/1/5_1_15/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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