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脊髄損傷とその後遺症について

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷とその後遺症
胸髄損傷とその後遺症
腰髄損傷とその後遺症
仙髄損傷とその後遺症


脊髄とは脳と末梢神経をつなぐ架け橋のような役割を担う神経細胞の束であり、身体に運動の指令を送り、逆に身体からの感覚的刺激を脳に伝達します。
そのため、なんらかの原因で脊髄を損傷すると、運動や感覚の情報伝達に障害をきたし、さまざまな後遺症を残す可能性があります。
そこでこの記事では、脊髄損傷とその後遺症について解説します。

脊髄損傷の一般的な症状

脊髄損傷による後遺症

脊髄損傷の症状とその影響

感覚障害は、脊髄損傷に伴う主な症状の一つです。
損傷部位に応じて、触覚、痛覚、温度感覚の鈍化や喪失が起こります。
特に、損傷部位以下の感覚が完全に失われる場合があり、しびれやチクチク感、異常な感覚が伴うこともあります。
これらの感覚異常は、日常生活の中でさまざまな不便や危険を引き起こすため、リハビリや医療ケアが重要です。

脊髄損傷の症状の進行と回復期の兆候

脊髄損傷の症状は、急激に進行する場合と徐々に悪化する場合があります。
初期段階では、完全な感覚や運動機能の喪失が見られることがありますが、適切な治療とリハビリによって、一部の感覚や機能が回復することもあります。
回復期には、わずかな筋肉の動きや感覚の戻りが兆候として現れることがあり、早期の治療介入が回復を促進します。

自律神経の影響

脊髄損傷は、自律神経にも大きな影響を与えます。
損傷部位に応じて、排尿や排便の制御が難しくなり、頻尿や尿漏れ、便秘などの症状が現れることがあります。
また、発汗や体温調節機能が低下し、体温が異常に高くなったり、寒さに敏感になることがあります。
さらに、血圧の調整が難しくなり、起立性低血圧や高血圧のリスクも増加します。

頸髄損傷による後遺症

頸髄損傷による後遺症
脊髄は上から順に頸髄・胸髄・腰髄・仙髄に区分され、損傷するレベルによって出現する症状は異なります。
脊髄の中でも特に損傷しやすい部位は頸髄と腰髄であり、上位に位置する頸髄損傷は重症度が高いです。
運動の指令は脳から下位の脊髄に向けて下降性に伝達されるため、上位の頚髄が損傷すると胸髄や腰髄にも指令が届かなくなるためです。
また、感覚の指令は下位の脊髄から脳に向けて上行性に伝達されるため、頸髄を損傷すると胸髄や腰髄にインプットされた感覚の情報も脳に届かなくなります。
これらの理由から、頸髄を損傷すると首より下の全て、つまり上肢・体幹・下肢全体に症状が出現します。
代表的な後遺症は四肢の麻痺やしびれです。
特に、四肢麻痺は歩行や移動、体位変換などの基本的動作にも支障をきたすため、日常生活に与える影響が大きい後遺症です。
さらに、脊髄の中には運動神経や感覚神経以外に、交感神経や副交感神経を含む自律神経が走行しています。
自律神経は交感神経と副交感神経が互いに作用しあい、体温・睡眠・血圧・脈拍・排尿・排便・消化管運動などさまざまな生理機能をコントロールしています。
頸髄損傷によって自律神経に障害が及ぶと、血管拡張や脈拍低下が生じて一気に血圧が低下する「スパイナルショック」を引き起こす可能性があり、注意が必要です。
急性期を乗り越えた後も、自律神経の障害が残ると起立時に血圧低下を引き起こす「起立性低血圧」が後遺症として残る可能性もあります。
さらに、第4頸髄以上の高位で損傷すると、横隔膜の運動を支配している横隔神経が麻痺して、十分な自発呼吸が得られなくなります。
場合によっては、自発呼吸では酸素の取り込みが不十分となり、人工呼吸器無くしては生命維持できない身体になる可能性もあるため、注意が必要です。
麻痺やしびれはもちろんのこと、呼吸や循環動態にも後遺症を残す可能性があるため、頸髄損傷はハイリスクな病態といえるでしょう。

胸髄損傷の主な原因と後遺症

腰髄や頸髄は、身体の可動性を保つために回旋性に富んでいる一方で、不安定性が強く外力によって損傷しやすい部位です。
それに対し、胸髄は肋骨などによって形成される胸郭によって回旋性に乏しく、その分安定性があるため、損傷しにくい部位です。
それでも、交通事故などの高エネルギー外傷では胸髄損傷を引き起こす可能性があります。
胸髄が損傷した場合、体幹以下の麻痺やしびれが出現しますが、特に第6胸髄より高位の損傷では背筋や腹筋の麻痺が生じるため、体幹の保持が困難となりその後の生活に大きな支障をきたします。
また、第6胸髄より高位の損傷では自律神経も障害され、頸髄損傷と同様に起立性低血圧・排尿障害・体温調節障害などさまざまな生理機能が障害されるため、注意が必要です。

腰髄損傷の一般的な原因と後遺症

腰髄損傷の一般的な原因と後遺症
腰髄損傷は、交通事故や転落・転倒によって生じることが一般的です。
また、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによって脊柱管内部を走行する腰髄が圧迫・損傷を受けることもあります。

胸髄損傷による身体機能への影響

腰髄が損傷を受けた場合、上肢や体幹の運動・感覚は保たれるものの、下肢の運動・感覚は障害され、下肢麻痺や下肢のしびれが後遺症として残ることが多いです。
また、排尿や排便は仙髄を通じてコントロールされているため、腰髄損傷でも膀胱直腸障害が残ることがあります。
排尿障害や便失禁など、日常生活に支障をきたすような後遺症が残存してしまいます。

仙髄損傷とその後遺症

稀ですが、交通事故によって仙骨骨折を引き起こすと、同時に仙髄を損傷することがあります。
仙髄から分岐する神経は下肢の運動の一部を司っているため、仙髄損傷でも下肢麻痺が生じます。
しかし、下肢の感覚神経は仙髄ではなく腰髄に伝達されるため、仙髄損傷では下肢の感覚障害は出現しません。
代表的な後遺症としては、前述したように膀胱直腸障害が挙げられます。
膀胱が尿で充満した際の伸展刺激や、脳から膀胱への収縮の刺激は仙髄を経由するため、仙髄が損傷を受けることでさまざまな排尿障害が出現します。
また、肛門括約筋の能動的な収縮が得られなくなるため、勝手に便が漏れ出る便失禁を引き起こすこともあるでしょう。
仙髄損傷は最も下位レベルの脊髄損傷ですが、その後遺症が日常生活に与える影響は大きいため、いかに後遺症を残さないかが重要です。

脊髄損傷とその後遺症についてのまとめ

今回の記事では、脊髄損傷と後遺症について解説しました。
脊髄は脳と身体をつなぐ非常に重要な神経組織であり、身体の運動や感覚・生理機能の調節にも関わっています。
そのため、脊髄損傷によって重篤な神経症状をきたすと、後遺症としてさまざまな症状を残すことになります。
特に、脊髄の中でも上位に位置する頸髄損傷の場合、四肢の麻痺やしびれにより日常生活に支障をきたすだけでなく、循環動態や呼吸機能・膀胱直腸障害など重篤な後遺症を残す可能性があるため、注意が必要です。
脊髄を構成する神経細胞は一度損傷すると自己修復は困難であり、失われた機能は基本的に再生しないため、現状はリハビリテーションでの機能維持が治療の中心です。
しかし、近年では再生医療の発達も目覚ましく、損傷した神経細胞の再生によって機能回復が期待されます。
特に、リハビリテーションとの併用によりリハビリ効果も向上するため、脊髄損傷の新たな治療の選択肢として知見が待たれるところです。

よくあるご質問

下半身不随になるとどうなるか?
脊髄損傷による下半身不随の場合、軽度では階段の登り降りや走ることが困難となり、重症の場合は歩くことや立つこともできなくなります。
また、膀胱直腸障害も併発するため、排尿や排便のコントロールがつかなくなります。

腰椎脊髄損傷の症状は?
腰髄を損傷すると、主に下半身の麻痺やしびれが出現し、歩行などの日常動作に大きく支障をきたします。
また、より下位に位置する仙髄の機能も障害されるため、膀胱直腸障害を併発することもあります。

<参照元>
・日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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