この記事を読んでわかること
硬膜外ブロックの方法や効果がわかる
神経根ブロックの方法や効果がわかる
神経ブロックの効果の持続期間がわかる
硬膜外ブロックや神経根ブロックなどのブロック注射は、整形外科疾患による疼痛や神経障害性疼痛の緩和に有効な鎮痛法です。
ブロック注射で局所麻酔薬を神経周囲に注入することで、局所の鎮痛効果や血流改善効果を得ることができます。
この記事では、腰椎疾患におけるブロック注射の有効性と適応症について詳しく解説します。
硬膜外ブロックの効果と適応疾患
硬膜外ブロックとは、硬膜外腔と呼ばれる空間に存在する痛みに関わる神経周囲に、ステロイドや局所麻酔薬を注入することで痛みを遮断する鎮痛方法の1つです。
この鎮痛方法を理解するためには、痛みに関わる神経の伝達経路を理解する必要があります。
まず、皮膚に存在する侵害受容器が熱さや痛みなどの感覚を検知すると、その領域を支配している末梢神経に痛みの情報が伝達され、末梢神経は中枢方向に向かって、最終的に背中を縦走する脊髄に流入します。
この脊髄は周囲を脊柱管や靭帯、椎間板などさまざまな組織に囲まれて守られており、さらに内側を硬膜・くも膜・軟膜と呼ばれる3つの膜で覆われている構造です。
複数の末梢神経が中枢に向かうにつれて集合していき、最終的に硬膜外腔を通過して脊髄に流入するため、硬膜外腔に局所麻酔薬を注入することで複数の神経の情報伝達を遮断し、脳に痛みや熱さの情報が届かなくなることで鎮痛効果が得られます。
また同時に交感神経の遮断を行うことで、収縮した血管が拡張し、局所の血行が改善することで鎮痛効果を得ることもできます。
実際に臨床の現場で硬膜外ブロックが適応される疾患は主に下記の通りです。
- 帯状疱疹
- 帯状疱疹後神経痛
- 腰下肢痛
- 椎間板ヘルニア
- 血流障害
- 術後瘢痕疼痛症候群
- がん性疼痛など
一方で、注入された局所麻酔薬は時間の経過とともに吸収されてしまうため、その効果は永続的なものではなく、時間の経過とともに症状が再燃する可能性があります。
神経根ブロックの施術方法と効果
神経根ブロックとは、その名の通り脊髄から分岐した直後の神経根周囲に局所麻酔薬を注入する鎮痛法です。
より直接的に神経をブロックできるため、一般的には硬膜外ブロックよりも高い鎮痛効果が得られるとされていますが、その分深部まで針を進めるため、手技の疼痛が強いというデメリットもあります。
また硬膜外ブロックは硬膜外腔に局所麻酔薬を投与するため、その広がり次第でブロックされる神経も異なりますが、神経根ブロックでは狙った神経根を直接透視下でブロックするため、より選択的にブロックすることができます。
一方で、交感神経の遮断効果で言えば、硬膜外ブロックは感覚神経とともに交感神経も遮断できますが、神経根ブロックは感覚神経遮断効果は高いものの、交感神経の遮断効果は硬膜外ブロックよりは弱いです。
主な適応疾患は下記の通りです。
- 神経障害性疼痛
- がん性疼痛
- 頚部痛
- 腰背部痛
- 下肢痛
ブロック注射の効果持続期間と再施術の目安
ブロック注射の効果持続期間は数時間〜数週間とかなりの幅があります。
本来、ブロック注射で投与する局所麻酔薬は注入後に組織に吸収されていくまで数時間なので、その効果が数週間も持続するはずがありません。
しかし、実際に鎮痛効果が数週間持続する方がいる理由は「ブロックによる痛みの悪循環の解除」です。
まず、痛みが局所に走ると交感神経が活性化してしまい、血管が収縮することでその筋肉や組織への血流が低下します。
血流低下によって発痛物質が産生されるため、さらに痛みが増強し、さらに交感神経が活性化して血流が悪化するという悪循環に陥るのです。
そこで、ブロック注射を行えば感覚神経の遮断による疼痛緩和と、交感神経遮断による局所の血流改善、両方の効果を得られることで痛みの悪循環から抜け出すことができます。
その結果、局所麻酔薬が吸収された後も人によっては長期的な鎮痛効果が得られるわけです。
しかし、あくまで原因となる疾患自体は残存しているため、1回の注入で永続的な効果を得られるわけではなく、ある程度反復して再施術が必要です。
1ヶ月の施術回数が4回を超えると保険が適応されなくなるため、1〜2週間に1回程度の施術が目安となります。
まとめ
今回の記事では、腰椎疾患におけるブロック注射の有効性と適応症について詳しく解説しました。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患は、脊髄から分岐した神経を圧迫することで激しい腰痛をきたす可能性がある病気です。
これらの疾患による腰痛の治療の選択肢の1つがブロック注射であり、繰り返すことで比較的長期間の治療効果を得ることができます。
一方で、あくまでブロック注射は疼痛の緩和が主な治療の目的であり、根本的な解決にはならないため、放置すれば麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまう可能性もあります。
現状では重篤な後遺症が残った場合に改善する術はリハビリテーション以外になく、仮にリハビリテーションを行なってもこれらの後遺症を根治することは困難です。
一方で、近年では神経学的後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、神経学的後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 腰部硬膜外ブロックの適応病名は?
- 腰部硬膜外ブロックの適応病名としては、腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・帯状疱疹後神経痛・すべり症・慢性腰痛などが挙げられます。
ブロック注射によってこれらの疾患による頭痛を緩和することができます。 - ブロック注射の効果は腰にどんな効果があるのですか?
- ブロック注射を行うことで、腰部に分岐する感覚神経の疼痛の情報が脳に伝達されなくなるため、鎮痛効果を得ることができます。
また交感神経が遮断され、局所の血流が改善することで発痛物質の産生も抑制できます。
<参照元>
(1):神経ブロックとは|日本ペインクリニック学会:https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keyblock.html
(2):神経根ブロック|日本ペインクリニック学会:https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide04_10.pdf
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