前頭葉損傷がもたらす抑制障害と記憶障害の神経学的な課題|脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

前頭葉損傷がもたらす抑制障害と記憶障害の神経学的な課題

           

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この記事を読んでわかること

前頭葉が司る機能がわかる
前頭葉と記憶能力の関係性がわかる
前頭葉損傷に対する幹細胞治療の概要がわかる


前頭葉は運動機能はもちろんのこと、記憶・情動・言語・注意力・判断力など、さまざまな高次脳機能を司っています。
そのため、何らかの原因で前頭葉を損傷すると、抑制障害や記憶障害などのいわゆる高次脳機能障害が出現します。
この記事では、前頭葉損傷がもたらす抑制障害と記憶障害の神経学的な課題について解説します。

神経伝達における前頭葉の役割とその損傷による影響

神経伝達における前頭葉の役割とその損傷による影響
前頭葉は大脳半球の約1/3を占める広範な部位で、さまざまな機能や役割を有していることが知られています。
視覚系の情報処理を後頭葉が行い、聴覚系の情報処理を側頭葉が行い、触覚系の情報処理を頭頂葉が行って、それら全ての情報が前頭葉に集約され、得た情報を統合した上で判断・実行に移していると考えられています。
つまり、前頭葉は複雑な情報処理の最終段階を司っており、注意・集中力の原動力となり、新規情報の取捨選択・判断・記憶し、その上で実行に移す過程に深く関わっているわけです。
また、前頭葉の一部である運動前野は、実際に行動を実行する際の運動機能にも関わっています。
以上のことから、前頭葉が障害された場合、下記のような症状が出現します。

  • 左右反対側の麻痺・筋力低下
  • 無関心・注意力や意欲の低下
  • 言語障害
  • 作業記憶の低下
  • 遂行機能障害
  • 社会的に不適切な言動の増加

前頭葉は左右反対側の運動機能に関わっているため、左前頭葉の損傷であれば右半身麻痺・右前頭葉の損傷であれば左半身麻痺に陥る可能性があり、注意が必要です。
次に、情報を集約して判断・記憶・作業の実行に移す能力も障害されるため、遂行機能障害や作業記憶(得た情報を一時的に保存する記憶)も障害されます。
また、前頭葉には言語の表出に関わるBroca言語中枢が存在するため、損傷することで言語を理解できてもうまく表出できなくなり、文字もうまく書けなくなる、運動性失語に陥る可能性もあります。
また前頭葉には自身の感情や情動を適度に抑える神経回路が存在するため、前頭葉を損傷するとその制御回路がうまく機能せず、暴言・暴力が増えたり、倫理的に逸脱した行為が増加する可能性もあり、注意が必要です。

記憶機能の低下を招く脳内での変化について

記憶機能の低下を招く脳内での変化について
先述したように、前頭葉は記憶能力とも密接に関わっています。
外界から得た視覚や聴覚の情報は前頭葉に集約され、一時的に記憶として保存したり、過去の記憶と照合することで、その後どう行動するかの判断材料とします。
そもそも記憶とは下記のように分類可能です。

  • 陳述記憶:意識の上に乗せることのできる記憶
  • 非陳述記憶:意識の上に乗せることのできない記憶

陳述記憶はさらに、下記の2つに大別されます。

  • エピソード記憶:時間・空間的な文脈を伴った出来事の記憶
  • 意味記憶:学習や経験によって蓄積される、知識に相当する記憶

このうち、エピソード記憶が記名される際は、左の前頭前野が関与していることが明らかとなっています。
一方で、一度記名されたエピソード記憶の想起には両側の前頭前野が関与していることが明らかにされており、エピソード記憶と前頭前野には深い関わりがあるわけです。
次に、意味記憶については、主に側頭葉に保存されると考えられていますが、随意的な想起のためには前頭葉の一部である左腹外側前頭前野の役割が重要であることが知られています。
また、前頭葉は短期記憶の1つである作業記憶にも深く関わっています。
作業記憶とは、さまざまな認知活動を行う際に必要な情報を能動的かつ一時的に保存し、短期的に使用する記憶のことです。
例えば、初めて接する言語を和訳する時、1つ1つの単語の意味を調べて文全体の意味を理解しますが、この時調べた単語の意味は作業記憶として前頭葉にインプットされ、和訳が終われば失われていく情報です。
作業記憶は、前頭葉の中でも前頭前野が深く関わっていることが知られています。

前頭葉損傷による神経障害への幹細胞治療

脳梗塞や頭部外傷が原因で前頭葉が広範に障害された場合、基本的に脳細胞は自身の再生能力だけで機能を元に戻すことができないため、上記で解説したような後遺症が残存してしまいます。
一方で、最近では新たな治療法として幹細胞治療が大変注目されています。
自己複製能と多分化能を併せ持つ幹細胞を投与することで、損傷した臓器の細胞に幹細胞が分化し、自己複製することで臓器の形態や機能の再生を目指す治療法です。
現在、理想的な幹細胞の開発や投与法の検討が進められており、今後の知見が待たれるところです。

まとめ

今回の記事では、前頭葉損傷がもたらす抑制障害と記憶障害の神経学的な課題について詳しく解説しました。
前頭葉は記憶・言語・情動・注意力・判断力など、高次元な脳機能を司っているため、障害されることでさまざまな機能が障害されます。
一度後遺症として残ってしまった場合、現状では各症状に対応するリハビリテーションが唯一の改善策ですが、根治に至ることはほとんどありません。
そこで、近年では新たな治療法として幹細胞を用いた再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であった前頭葉損傷の後遺症のさらなる改善が期待できます。

よくあるご質問

前頭葉損傷による記憶障害とは?
前頭葉では、短期的な記憶の1つである作業記憶や、エピソード記憶・意味記憶などの陳述記憶の記名・想起に深く関わっています。
短期的な記憶が困難となったり、記憶から情報を引き出せなくなります。

前頭前野が損傷するとどんな症状が現れますか?
前頭前野が損傷すると作業記憶の低下・情動の低下による無関心・注意力の低下・倫理的な抑制が障害されることによる社会的不適切な言動など、さまざまな症状が出現します。

<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2009.36.1/0/2009.36.1_122/_pdf/-char/ja
・MSDマニュアル:MSDマニュアル
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/27/3/27_3_222/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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