この記事を読んでわかること
・高次脳機能障害となった時にはリハビリテーションについて
・高次脳機能障害のリハビリはどんなことをする?
・高次脳機能障害のリハビリ期間は?
高次脳機能障害とは脳血管障害や変性疾患、頭部への外傷などにより、記憶障害、注意障害、遂行障害、社会的行動障害などを日常生活に大きく影響する脳への障害のことです。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害や脳炎や脳腫瘍、交通事故や転落などの影響で頭部外傷による脳のダメージから、高次脳機能障害は引き起こされてしまいます。
高次脳機能障害になったらどのようなリハビリテーションをするのでしょうか?この記事では高次脳機能障害のリハビリテーションについてまとめていきます。
高次脳機能障害のリハビリテーションの目的は?
高次脳機能障害となった時にはリハビリテーションが元の生活に近づくための鍵を握っています。
特に脳がダメージを受けてからできるだけ早く開始することが望まれます。
高次脳機能障害の症状に合わせたリハビリテーションは、その症状を回復することが知られていますが、脳へのダメージから時間が経ってしまうとその機能を回復することが難しくなってしまうからです。
高次脳機能障害のリハビリはどんなことをする?
それでは高次脳機能障害のリハビリテーションは一体どのようなことをするのでしょうか?
この記事では国立障害者リハビリテーションセンターの公開する高次脳機能障害者支援の手引き(改定第2版)を参考に医学的リハビリテーションプログラム、生活訓練プログラムについてご説明します。
医学的リハビリテーションプログラム
この3つのプログラムは脳へのダメージのきっかけとなった疾病の発症や外傷の受傷から社会復帰までの時間経過とともにプログラムを進行していきます。
まずは脳へのダメージの出来事が起きてすぐには、医学的リハビリテーションがメインとなります。
このプログラムは医師の指示によって次のようなことが行われます。
記憶障害に対するリハビリテーション
記憶の障害と言ってもその症状は多岐に渡ります。
まずは記憶がどのように障害されているのか、具体的には、どのくらいの時間覚えていられるのか?言葉や経験などの何を忘れてしまうのか?言葉の記憶と見た記憶に違いはないか?などのことを明らかにします。
どこが障害されているかが明らかとなれば、言葉やイラストなど覚えたものの手がかりを示すなどをしながら、反復して思い出す過程を訓練します。
注意障害に対するリハビリテーション
落ち着きがなくなってしまったり、逆にボーっとししまうような症状を注意障害と言います。
注意障害がある場合には、少しの刺激で作業への集中が途切れてしまうので、リハビリテーションとしては、刺激の少ない場所で行われることが多いです。
例えば、個室であったり、決まった職員が対応するなど、なるべく本人の集中を妨げるような原因を減らして訓練を始めます。
訓練の内容としては、パズルやゲームなどから始まり、より生活に即した実践的な内容として、パソコン作業などができるように目指します。
遂行機能障害に対するリハビリテーション
決められたことを途中で投げ出してしまう症状を遂行機能障害と言います。
例えば、計画通りに仕事をこなすことができない、途中で投げ出してしまうなどのことが問題となります。
遂行機能障害のリハビリテーションでは、解決方法や計画を補助してもらいながら立てたり、マニュアルを利用して手順通りに作業する訓練をします。
社会的行動障害に対するリハビリテーション
社会的行動障害の症状としては、食欲や性欲など欲求のコントロールが難しくなり、思い通りにならないと大声を出す、暴れるなどの社会的に望ましくない行動が見られるようになります。
社会行動障害に対しては、生活空間をなるべく静かに整備して、症状を抑えられた時には褒める、症状が抑えられなかった時には、担当者が一旦距離をおくなどして、症状出現時の行動を調整することで、症状を安定化させることを目指します。
生活訓練プログラム
生活訓練プログラムは日常生活や社会で生活できる能力を回復し、社会復帰ができることを目的として行われます。
医学的リハビリテーションプログラムが主に患者さん本人のプログラムであったのに対して、生活訓練プログラムでは、本人のみならず、家族を含めてより多くの人が関わるプログラムとなります。
具体的には家族と協力しながら、生活リズムの確立、日常生活での日課管理、買い物などの地域に出ての活動、対人コミュニケーションができるように生活訓練を行います。
患者さんの障害は家族にとって非常に精神的にショックを受ける出来事であるため、患者さんのみならず、家族に寄り添った支援が必要とされています。
職能訓練プログラム
生活訓練プログラムにて日常生活に必要な能力を回復できれば、さらに社会と関わるためにも、職表生活に復帰するための職能訓練を行います。
高次脳機能障害は見た目ではあまり障害されている程度が判別できないため、職能訓練を通して何ができて何ができないのかを明らかにすることが有効とされています。
また、職場でどのようなことができるのかをしっかりと認知してもらい、その人が働きやすい環境を整えることも非常に大切なことです。
まとめ
この記事では高次脳機能障害についてリハビリテーションを中心にまとめました。リハビリテーションを通して大切なことは、患者さんの症状にあったリハビリテーションをすることと、また、患者さん本人のみならず、ご家族の方、そして、関わる職場の人の心にも寄り添って一緒に社会復帰への道を探していくということです。
よくあるご質問
高次脳機能障害のリハビリ期間は?
高次脳機能障害を改善するために必要なリハビリの期間は「約1年」です。
厚生労働省の調査によると、訓練によって高次脳機能障害が改善した割合は6ヶ月以内は74%、1年以内は97%と報告されています。
すべての期間、入院してリハビリをするのではなく、実際の生活や就労支援を受けながら高次脳機能障害の改善を目指していきます。
高次脳機能障害の回復方法は?
高次脳機能障害を回復させる方法は大きく分けて3つあります。
・高次脳機能訓練
・代償手段獲得訓練
・環境調整
まずは、高次脳機能評価を行い「どのような高次脳機能障害を呈しているか、重症度はどのくらいか」を評価し、リハビリの訓練内容を決定していきます。
症状に合わせて「メモを取る習慣をつける」など障害されていない機能を代償手段として使う練習や環境を調整を行って高次脳機能障害の回復を図っていきます。
<参照元>
・国立障害者リハビリテーションセンター:高次脳機能障害者支援の手引き
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