この記事を読んでわかること
・多系統萎縮症(MSA)の主な症状と特徴
・MSAの原因と発症メカニズム
・多系統萎縮症と他の神経疾患との違い
多系統萎縮症(MSA)は、進行性の神経変性疾患であり、主に中枢神経と自律神経を障害します。
運動機能の低下や自律神経症状、異常姿勢が特徴です。
平均余命は診断後、5〜10年と予後の悪い疾患です。
現時点では有効な治癒法は無く、症状に応じた対症療法が主となります。
従って、精神的・身体的な支援を含め家族のサポートや医療スタッフとの連携が重要となります。
この記事では、ご家族が知っておきたい多系統萎縮症の基本について3つの観点から説明いたします。
多系統萎縮症(MSA)の主な症状と特徴
初期症状として以下が認められます。
- 歩行の不安定さやバランスの悪さ
- 手の震えや筋肉のこわばり
- 低血圧
- めまい
- 尿失禁
- 便失禁
- 性機能障害
- 声の変化や発声困難
- 嚥下障害
病気が進行すると以下の症状が認められます。
- 筋力の低下
- 歩行困難
- 失神
- 食事や水分の摂取困難
- 栄養不良
- 体重減少
- 呼吸困難
特徴として、進行性の神経変性疾患であり、主に中枢神経と自律神経に影響を与えます。
予後が悪く、平均余命は診断後5〜10年と報告されています。
現在の所、有効な治療法は無く対症療法が主となる難治性疾患です。
MSAの原因と発症メカニズム
原因は正確には解明されていません。
でも、神経細胞内のα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質の異常が原因と考えられています。
また、神経細胞のサポート役割をするグリア細胞の機能異常が関与する可能性も指摘されています。
さらに、環境要因や遺伝的な要因も検討されています。
正確な原因については研究が進行中であり、今後の研究により新たな知見が提供されることが期待されています。
発症メカニズムとして、異常なα-シヌクレインが蓄積することにより、神経の損傷や寿命に影響を与え特徴的な症状が引き起こされると考えられています。
しかしながら、なぜα-シヌクレインが異常になるのか、なぜその影響が特定の神経に影響を与えるかはわかっておりません。
現在、病理学的検討および遺伝的要因から発症メカニズムの検討がなされています。
今後の研究成果が待たれます。
多系統萎縮症と他の神経疾患との違い
MSAの症状は他の神経疾患の症状と似ているため鑑別診断が難しいことが多々あります。
以下が鑑別ポイントとなります。
MSAは進行性の神経変性疾患であり、中枢神経と自律神経を同時に障害します。
一方で、他の神経疾患は特定の部位や系統に影響が限定されることが多い。
MSAの主な症状には、運動機能障害や自律神経障害、異常姿勢、姿勢不安定などが認められます。
これらの症状は、他の神経疾患の中でもパーキンソン病の症状と似ているため鑑別が難しいことがあります。
しかしながら、他の神経疾患と比較して、MSAは自律神経障害が特に顕著であり、低血圧、尿失禁、便失禁などがよく見られます。
MSAの罹患率は他の神経疾患と異なります。
MSAは比較的稀な疾患であり、一般的に1万人当たり1〜9人と報告されています。
他の神経疾患を例にとると、パーキンソン病やアルツハイマー病などは罹患率が高くより多くの人々が影響を受けています。
錐体外路障害(パーキンソン症状)が目立つ場合は、MSA-Pとよばれます。
MSA-Pタイプの方は、最初のうちはパーキンソン病と区別がつきにくく、パーキンソン病と診断されて治療が開始されている患者さんもおります。
その場合、薬剤治療への反応性がパーキンソン病より乏しく、進行がやや早かったりするため、途中で診断が見直されてMSAと診断に至るケースがあります。
まとめ
今回の記事では、ご家族が知っておきたい多系統萎縮症の基本について解説しました。
多系統萎縮症は予後が悪い難治性疾患です。
神経細胞の損傷が進行性に起きる神経変性疾患の1つですが、有効な治療は現在の所、無いのが現状です。
そのため、神経の再生医療は希望をもたらす可能性を秘めています。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって多系統萎縮症(MSA)の新たな治療に光明がさすことを期待したいです。
よくあるご質問
- 多系統萎縮症は家族性ですか?
- 一般的に家族性ではありません。
家族に遺伝することは稀ですが、遺伝子変異についての報告があります。
でも、発症にどの程度関与しているかは不明です。
研究が進むにつれて遺伝的要因が明らかになる可能性があります。 - 多系統萎縮症で寝たきりになると余命はどのくらいですか?
- 寝たきりになると合併症が増加するため平均余命は短くなります。
しかしながら、個々の病状は異なるため余命の予測は難しいです。
総合的な医療ケアと適切なサポートにより患者の生存期間や生活の質を向上させることは可能です。
<参照元>
脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/sd_mst/sd_mst_2018.pdf
難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/221
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