この記事を読んでわかること
・脳梗塞で救急車を呼ぶべきタイミングがわかる
・脳梗塞の急性期の治療がわかる
・脳梗塞の入院中の過ごし方がわかる
脳梗塞は脳血管障害の中で最も多い病気であり、多くの方が発症後の後遺症に悩まされる病気です。
治療開始までの時間によって治療の選択肢も変わるため、後遺症を少しでも軽減するためには、早期診断・早期治療が最も好ましいです。
この記事では脳梗塞の後遺症を少しでも減らすために急性期にやっておきたいことについて詳しく解説します。
救急車を呼ぶタイミングは?
「頭痛やしびれが突然出現したけど、脳梗塞かも?」「もし脳梗塞じゃなかったら迷惑がかかるから、救急車は大袈裟だしやめておこう」
このように、脳梗塞を疑っても救急車を呼ぶタイミングに戸惑う方も多いでしょう。
結論から言えば、脳梗塞かも?と疑った時点で即、救急車を呼ぶべきです。
脳梗塞は放置すれば治療が遅れ、梗塞範囲が拡大したり、脆弱となった組織に血流が再開すれば脳出血を引き起こす可能性もあるため、極力早期に診断・加療が必要となります。
また、発症から治療開始までの時間によって、受けられる治療の選択肢も変わるため、早期に発見することがとても大切な病気です。
では、具体的にどのような症状が出たら、脳梗塞を疑い救急車を呼ぶべきなのでしょうか?
脳梗塞の初期症状として出現しやすい下記のような症状を認めた場合は、救急車を呼ぶべきです。
- 顔のゆがみ
- 腕や脚を挙上しても水平に保てない
- 短い文章もいつも通り話せない
またこれらの症状が一過性に出現し、すぐに改善した場合でも必ず救急車で医療機関を受診してください。
一過性脳虚血発作とは
一過性に症状が出現しても症状が24時間以内に改善した場合、これを「一過性脳虚血発作:TIA」と呼び、その時点では急性期脳梗塞の症状がなくても、その後脳梗塞を発症する可能性が高い病態です。
これまでのいくつかの研究結果では、TIAのうちの10〜15%が3ヶ月以内に脳梗塞となり、その半数はTIAから2日以内に脳梗塞を発症していることが明らかとなっています。
早期発見・早期治療のためにも、症状が改善したからといって放置すべきではなく、必ず救急車で医療機関を受診するよう心がけましょう。
急性期の治療方法
脳梗塞の急性期治療は主に下記の3つです。
- 血栓溶解療法
- 血管内治療
- 抗血小板薬・抗凝固薬
治療を受けられるタイミングも異なるため、それぞれの治療について解説します。
血栓溶解療法
急性期脳梗塞の治療の1つに、血栓溶解療法が挙げられます。
血栓溶解療法とはその名の通り、血液をサラサラにする強力な薬剤「アルテプラーゼ」を血管内に注入し、原因となる血栓を強制的に溶解する治療法です。
この治療は発症後4.5時間以内という厳しい適応があり、4.5時間を経過すれば受けることができなくなります。
強烈に血液をサラサラにしてしまうため、出血や頭部外傷の既往がある方は使用できず、4.5時間以上経過した後は脳梗塞によって脆弱化した血管から出血するリスクも高まるため、適応外となります。
そもそも実施可能な医療機関も限られるため、自分で病院を選ぶよりも救急車を呼んだ方が治療を受けられる確率は高いでしょう。
血管内治療
急性期脳梗塞の治療の1つに、血管内治療が挙げられます。
血管内治療は、カテーテルという細いワイヤーのようなものを血管内に通して、原因となる血栓を除去する治療法です。
この治療は発症後24時間以内が適応であり、その時間を経過してからは受けることができません。
内頚動脈や中大脳動脈といった、太い血管が詰まっている場合、血栓溶解療法と併用して血管内治療を行うほうが後遺症が少なくなることが分かっています。
血栓溶解療法と同様、実施可能な医療機関も限られるため、病院選びは救急隊に任せる方が無難です。
抗血小板薬・抗凝固薬
急性期脳梗塞の治療の1つに、抗血小板薬・抗凝固薬が挙げられます。
抗血小板薬・抗凝固薬はどちらも血液をサラサラにする薬ですが、「アルテプラーゼ」のように現在ある血栓を溶かす治療ではありません。
脳梗塞の原因となる血栓の新規形成を予防する治療で、あくまで再発や増悪の予防が主です。
また、他にも脳細胞の保護や血圧のコントロールなど、補助的な治療は複数あり、それぞれの患者の状態に応じて適切な治療が選択されます。
入院中の過ごし方のポイントは?
脳梗塞になったからといって、入院中ずっとベッドの上で安静にしているわけではありません。
むしろ、麻痺やしびれなどの後遺症を軽減するために、発症早期、具体的には発症48時間以内からリハビリテーションを行うことが良いとされています。
寝たきりでいると、そのまま筋肉が萎縮してしまい、より日常生活動作の改善が遅れてしまうためです。
具体的には、身体機能の改善のための理学療法、日常生活動作や仕事などの社会生活での動作を行う作業療法、言語障害に伴うコミニュケーション能力低下に対する言語療法などを行います。
早期から始めることでより社会復帰しやすくなるため、医師の指示のもと、積極的に行うようにしましょう。
リハビリと再発予防策
入院中は、体調が安定してから早期にリハビリを開始することが重要です。
運動療法や作業療法、言語療法があり、専門家の指導のもと、徐々に体を動かすことで運動機能の回復を図ります。
脳梗塞は再発のリスクが高いため、血圧や血糖値の管理を徹底し、食生活や生活習慣の見直しも必須です。
禁煙や適度な運動も効果的で、家族や介護者と共に長期的な予防計画を立てましょう。
脳梗塞の急性期にやっておきたいことまとめ
今回の記事では、脳梗塞の急性期にやっておきたいことについて詳しく解説しました。
急性期の脳梗塞では、発症から治療までの時間が短ければ短いほど治療の選択肢が増え、後遺症や予後にも影響します。
救急車を呼ぶことにハードルを感じる方もいるかもしれませんが、治療が遅れればその後後遺症に苦しむ可能性も高くなるため、疑わしい場合は臆さずに要請しましょう。
また脳梗塞の後遺症に対しては、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
これまで、一度損傷した脳細胞は再生しないと考えられていましたが、ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、より効果的なリハビリを行うことができるため、後遺症からの再生を期待できます。
よくあるご質問
脳梗塞の急性期に安静にしなければならない理由は何ですか?
脳梗塞は脳の一部の血流が途絶する病気です。
安静にしないで立ち上がったり座っていると、頭位が高い位置に来てしまいますが、血液は重力によって下肢に多く取られるため、脳血流が低下しやすくなります。
そのため、急性期には安静にしておく必要があります。
脳梗塞の急性期の症状は?
急性期の代表的な症状は、手足のしびれや麻痺、軽度の頭痛や嘔気・嘔吐、顔面神経麻痺に伴う顔のゆがみなどが挙げられます。
また、呂律が回らなくなったり、うまく飲み込めなくなる構音障害・嚥下障害も代表的な症状です。
<参照元>
・日本神経治療学会:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_02.pdf
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