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大動脈解離から脳梗塞に至るメカニズムを徹底解説

           

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この記事を読んでわかること

大動脈解離の病態やリスクがわかる
Stanford A型の大動脈解離が危険な理由がわかる
大動脈解離で脳梗塞を発症するメカニズムがわかる


大動脈解離とは、全身に血液を供給する太い動脈が解離してしまい、心臓や脳への血流が低下することで十分な酸素供給が行えなくなる病気です。
対応が遅れれば、脳梗塞に陥ったり、最悪の場合心停止して死に至る可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、大動脈解離から脳梗塞に至るメカニズムを徹底解説します。

大動脈解離が脳血流に与える影響とは?

大動脈解離が脳血流に与える影響とは?
私たちの身体が常に活動できたり、寝ている時も心臓や脳が止まらずに活動できているのは、大動脈という太い血管から常に全身の細胞に酸素や糖質が供給されているためです。
大動脈は心臓と一連して繋がり、その後脳や上肢・各種臓器・下肢などに幅広く分岐し、全身に隈なくエネルギーを供給し続けています。
この重要な大動脈は内側から内膜・中膜・外膜の3層構造になっており、従来であれば強い弾性力を持つため非常に丈夫で、損傷を受けにくい構造になっています。
しかし、なんらかの原因で中膜の一部が裂けてしまうと、中膜と中膜の間に血液が流入し、高い動脈圧でどんどん血管が裂けていき、血液の通り道が2つできてしまうわけです。
大動脈が2つに解離したこの状態を、大動脈解離と呼びます。
主な原因は下記の通りです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 高脂血症
  • 喫煙
  • ストレス
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 遺伝

上記のような原因で動脈硬化が進んだり、遺伝的に血管壁が脆弱になりやすい場合、血圧の変動などによって内膜が損傷し、血液が血管壁内に流入して解離を引き起こします。
(国立循環器病研究センター)
大動脈解離は致死的な病気であり、その要因は主に下記の2つです。

  • 薄くなった血管壁が破裂して大出血を引き起こす
  • 解離腔が真腔を圧迫して臓器血流が低下する

解離が生じて菲薄化した血管壁内に、高い圧の動脈血が流入するため、破裂すれば大出血を引き起こして死亡する可能性が非常に高いです。
また、破裂しないにせよ、解離腔がどんどん拡大すると本来の正しい血液の通り道である真腔が圧迫され、その先の臓器に血流が届かなくなってしまいます。
特に、大動脈解離は心臓から分岐した直上2~4cm上の上行大動脈で発症しやすく、ここで解離腔が拡大すると、そのすぐ先にある脳への血管(右腕頭動脈・左総頸動脈など)の真腔が圧迫され、脳血流が途絶してしまいます。
脳は数分の虚血にも耐えられずに壊死してしまうため、大動脈解離によって脳血流が低下している場合は緊急対応が必要です。

Stanford A型とB型によるリスクの違い

Stanford A型とB型によるリスクの違い
大動脈解離は、解離が上行大動脈に存在するか否かで下記の2typeに分類され、これをStanford分類と呼びます。

  • Stanford A:上行大動脈に解離腔あり
  • Stanford B:上行大動脈に解離腔なし

(日本脈管学会)
この2つは、生命を脅かすリスクが異なる点からあえて区分されており、上行大動脈に解離腔を認めるStanford A型の大動脈解離は非常にハイリスクです。
上行大動脈に解離を発症すると、先述したように、その先から分岐する脳血管が閉塞し、脳虚血に陥る可能性があるため、意識障害など重篤な神経症状が残る可能性があります。
また、解離腔が心臓側に広がってしまうと心臓を栄養する冠動脈が圧迫されたり、心臓そのものを圧迫する(これを心タンポナーデと呼ぶ)状態になる可能性があり、そうなると心臓が本来のポンプとしての機能を維持できず、死に至る可能性が非常に高まります。
具体的には1時間に1%ずつ死亡率が上昇することが知られており、上行大動脈に解離の及ぶStanford A型には要注意です。

血管閉塞や血流不全が脳梗塞に直結する理由

脳は体重の約2%ほどの重量ですが、肺で吸収された酸素の約20%をも消費するため、常に心臓から大動脈を介してフレッシュな動脈血を供給されています。
裏を返せば、血管閉塞や血流不全によって脳に動脈血が少しでも届かなくなると、脳梗塞に陥って脳細胞への酸素供給が不足し、すぐに機能が破綻してしまう臓器でもあります。
特にStanford A型の大動脈解離の場合、心タンポナーデや冠動脈狭窄による心機能低下に伴い脳血流が低下したり、拡大した解離腔が物理的に右腕頭動脈や左総頸動脈などの脳血管を圧迫することで、脳梗塞に直結するため注意が必要です。
発症後に大動脈の手術を行い成功しても、重篤な脳梗塞に陥れば意識が元に戻らない可能性があるため、やはり早期治療が肝要です。

まとめ

今回の記事では、大動脈解離から脳梗塞に至るメカニズムについて詳しく解説しました。
大動脈解離、特にStanford A型の場合は上行大動脈に解離腔が及び、急激な心機能の低下もしくは解離腔による直接的な脳血管の圧迫によって脳梗塞を発症するリスクが急激に高まります。
重篤な脳梗塞に陥った場合、仮に大動脈解離の手術に成功したとしても意識状態は元に戻らないため、発症後は早急に手術を行うことが大切です。
もし脳梗塞に陥った場合、麻痺やしびれなどの後遺症を残す可能性があり、現状、唯一の改善策はリハビリテーションですが、それでも神経症状を根治することは不可能です。
一方で、近年では脳梗塞後の後遺症に対する再生医療の効果が大変注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳梗塞後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

大動脈解離になると脳梗塞になるのはなぜ?
大動脈解離になると脳梗塞になる主な理由は、本来の血液の通り道である真腔を解離した部分が圧迫することで、脳への血流が大幅に低下するためです。
また、大動脈解離に伴う重篤な心機能低下によって脳への血流が低下し、脳梗塞に陥る可能性もあります。

脳動脈解離と脳梗塞の関係は?
脳動脈解離とは、脳に新鮮な血液を供給するための脳動脈、主に椎骨動脈が解離することで、十分な脳への血流が得られなくなる病気です。
血流が低下することで脳が虚血に陥り、脳梗塞を発症する可能性があるため注意が必要です。

<参照元>
#1大動脈瘤と大動脈解離|国立循環器病研究センター:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/aortic-aneurysm_dissection/
#2大動脈解離の原因と病態|日本脈管学会:https://j-ca.org/wp/wp-content/uploads/2016/04/4801_4.pdf

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PROFILEこの記事の監修
貴宝院 永稔
貴宝院 永稔 医師
(大阪医科薬科大学卒業)
  • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
  • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
  • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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