この記事を読んでわかること
・脳梗塞の症状について
・どれくらいの人が脳梗塞で認知機能が低下するのか
・血管性認知症とは
脳梗塞の症状は、手足の麻痺や言葉のもつれなど、目に見えるわかりやすい症状ばかりではありません。
脳は様々な機能を担っているため、血流が足りなくなり梗塞が完成すると、様々な症状が発生します。
発症後の生活に大きな影響を及ぼすのが、認知機能です。
脳梗塞と認知機能の低下には強い関係性があります。
ここでは、脳梗塞と認知機能低下について、解説していきます。
認知機能に影響を与える脳梗塞の年代別の症状と進行
脳梗塞や脳卒中について日本の各地で調査が行われていますが、秋田県立脳血管研究センターで行われた研究が有名です。
それによると、脳卒中の既往がない一般住民では、認知機能が低下していたのは約3%であったのに対して、脳卒中の既往がある方では27%もの方が認知機能低下を指摘されました。
認知機能の低下は脳卒中の発症年齢にも強く関係しており、40歳代で脳卒中を発症した場合は5.5%で認知機能が低下していたのに対し、60歳代で発症した方は18.8%、80歳代で発症した場合では53.6%の方で認知機能の低下が認められました。
高齢で脳梗塞などの脳卒中を発症すると、かなりの確率で認知機能の低下が起こることが分かります。
血管性認知症と脳梗塞の関係とリスク
認知は当然脳の機能ですから、脳の血流と認知機能が関係していることは想像できます。
古くから、脳の血流の異常が認知症に関連しているということは想定されていました。
19世紀の終わりには、脳の動脈硬化が認知症の原因になると報告されています。
その後長らく「動脈硬化による脳の血流低下が認知症の原因となる」と考えられていましたが、様々な研究から動脈硬化のみでは認知症にはならず、脳梗塞が認知症の原因となる、という説が唱えられるようになり現在ではそれが一般的な認識となっています。
小さな脳梗塞が積み重なるなどして認知症になることを、血管性認知症といいます。
脳梗塞を発症した後に認知症になってしまった場合や、認知症がある方に脳のMRIなどの検査をして、脳梗塞の跡がある場合に血管性認知症と診断されます。
認知症の原因として最も多いのはアルツハイマー型で、最近の疫学研究では認知症全体の70%近くがアルツハイマー型であるとされています。
血管性認知症は20%程度で2番目に多いと報告されています。
特に、高血圧や糖尿病、心疾患などのリスク要因を持つ人は、脳梗塞後に血管性認知症が進行する可能性が2倍以上になることが研究で明らかにされています。
早期の予防策としては、定期的な健康診断や生活習慣の改善が重要です。
血管性認知症とアルツハイマー病の違いと共通点
アルツハイマー型認知症は、老化などが原因で脳に異常なタンパクが蓄積することで起こる認知症です。
脳の血流や脳梗塞が原因となる血管性認知症とは全く異なる病態といえます。
血管性認知症では、脳梗塞による神経障害により、認知以外にも手足の麻痺やろれつ障害、飲み込みが悪いなどの症状を有していることが多いのですが、純粋なアルツハイマー型ではそのようなことはありません。
アルツハイマー型では認知全体の機能が低下するのに対し、血管性認知症では認知機能の低下にむらがあり、変動しやすいため「まだら認知症」と呼ばれることがあります。
血管性認知症では感情失禁(急に泣き出してしまうなど)や意欲低下、アパシー(自発性の低下している状態)といった症状を示すことが多いという特徴があります。
このようにアルツハイマー型認知症と血管性認知症は症状に違いがあるものの、近年では両者の合併が見られるケースが多いことが注目されています。
高齢の認知症患者さんを対象にした研究では、全体の86%がアルツハイマー型認知症であった中で、22.6%は血管性認知症を合併していたという報告があります。
脳梗塞後の認知症リスクを減らす再生医療とリハビリの可能性
血管性認知症では血流の不足により脳の神経が障害され、アルツハイマー型では異常なタンパクにより脳が萎縮してしまい、どちらも元に戻ることは期待できない病気です。
そのため、予防が重要です。
アルツハイマー型認知症の発生原因は未だに分からないことが多いのですが、血管性認知症(脳梗塞)の発症に関しては生活習慣病が原因となることが明らかになっています。
高血圧の治療や運動習慣、食事内容など対策が立てやすいタイプの認知症であると言えます。
他人事と思わずに、早いうちから対策を講じるのが効果的です。
しかしそれでも予防に失敗し、発症してしまった場合はもう救いはないのでしょうか。
いいえ、そうではないかもしれません。
一度障害されてしまった神経の機能を取り戻す、新しい治療法が注目を集めています。
それが、幹細胞を使用した再生医療です。
再生医療では、脳内の損傷した神経細胞を修復するために幹細胞治療が活用されることが多く、リハビリテーションでは、脳の可塑性を促進し、失われた機能を回復させることが期待されています。
脳梗塞後の早期治療が認知機能の維持に繋がり、長期的な生活の質を向上させる可能性があります。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を最大限に高める取り組みを行っています。
ご家族や周囲の方の認知機能低下にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
血管性認知症と認知機能低下についてのまとめ
脳梗塞、血管性認知症による認知機能低下について解説しました。
認知機能の低下は人としての生活機能に直結する問題であり、早期に予防することが重要です。
発症してしまった場合の治療として、再生医療に期待が高まります。
よくあるご質問
血管性認知症のリハビリは?
アルツハイマー型認知症と比較して歩行障害、転倒、嚥下障害が合併することが多いと報告されています。脳卒中と認知症の両方を意識したリハビリを行う必要があります。
<参照>
・「血管性認知症とは」BRAIN NURSING 37(2), 2021
・「認知症の分類・症候」精神科看護48(5), 2021
・「血管性認知症の概念の成立と変遷」老年精神医学雑誌32, 2021
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