この記事を読んでわかること
・間葉系幹細胞の培養
・細胞培養とは
・培養上清液と培養液の違い
培養のしやすさや安全性の高さから最近さまざまな分野で利用されるようになった間葉系幹細胞。
間葉系幹細胞は、治せなかった病気の治療法として利用できるのではないかと期待されています。
このブログでは、間葉系幹細胞の培養や期待される効果、培養液と培養上清液の違い、他の幹細胞との違いなどをご紹介します。
最近では、間葉系幹細胞は化粧品などにも利用されるようになっているため、興味を持っている方も少なくないはずです。
間葉系幹細胞は、さまざまな可能性を秘めた細胞です。
このブログでは、間葉系幹細胞の培養や期待される効果、培養液と培養上清液の違いなどをご紹介します。
間葉系幹細胞の培養と治療へのステップ
採血を行い検査結果に問題がなければ、骨髄や脂肪から幹細胞を採取します。
採取した幹細胞は約1ヶ月かけて培養センターで培養されます。
培養した間葉系幹細胞は治療に使う前に、形態や増殖能、分化能、細菌が混入していないことなどを確認する必要があります。
間葉系幹細胞の数は体内であまり増えたり減ったりしませんが、培養すれば1ヶ月に数万倍に増やすことができます。
再生医療などで間葉系幹細胞を利用するとき、細胞培養すれば1ヶ月で必要な細胞数を得ることが可能です。
また間葉系幹細胞は冷凍保存できます。
1度冷凍保存した間葉系幹細胞は解凍すれば機能は失われません。
そのため将来必要になったときのために、前もって間葉系幹細胞を冷凍保存しておくことも可能です。
細胞培養の流れとメカニズム
生物から細胞を取り出し、培養に好ましい環境を作りその中で増殖させることを細胞培養といいます。
一般的に細胞を取り出す前の環境に似た環境下で培養すると、増殖しやすいといわれています。
細胞によって培養に好ましい環境は異なりますが、温度や湿度、空気組成を適した条件に整えることが重要です。
多くの施設では、培養器(インキュベーター)の中で細胞培養が行われています。
間葉系幹細胞の培養プロセスは、患者自身の脂肪や骨髄から幹細胞を採取することから始まります。
これらの細胞は培養され、増殖させた後、点滴や局所注射により投与されます。
このステップは、損傷した組織や臓器の修復を目的として行われ、特に脊髄損傷や関節疾患、心疾患などに対して有効とされています。
幹細胞の培養には、安全性と品質管理が厳格に保たれ、再生医療の分野において最先端の治療法として注目されています。
培養上清液と培養液の違い
培養液は、細胞を培養するときに利用する液体で、培養上清液は細胞培養したあとの培養液から細胞と不純物を取り除いた上澄み部分の液体です。
間葉系幹細胞の培養上清液にサイトカインが豊富に含まれていて、炎症調整機能や免疫力強化、損傷を受けた組織や機能が低下した細胞の回復などの効果が期待できます。
幹細胞とは?再生医療という治療法
幹細胞は、さまざまな細胞を作り出す能力(分化能)と、自身と全く同じ能力をもった細胞に分裂出来る能力(自己複製能)を持っている細胞です。
幹細胞は、多能性幹細胞と組織幹細胞に大きく分けられます。
多能性幹細胞はどのような細胞でも作り出すことができ、代表的なものとしてES(胚性幹細胞)やiPS細胞があります。
組織幹細胞は決まった組織や臓器にしかなれず、消えた細胞の代わりを造り続け新しい細胞が補充されています。代表的なものとして間葉系幹細胞があります。
間葉系幹細胞に期待できる効果
間葉系幹細胞は、骨や脂肪、筋肉といった中胚葉系の細胞だけではなく、内臓組織などの内胚葉系、神経などの外胚葉系の細胞にも分化できる能力があることがわかっています。
特に骨髄由来の間葉系幹細胞には外胚葉系幹細胞が3.7%と高率に含まれていることが分かっており、神経再生改善効果として大きな期待が持たれています。
間葉系幹細胞のこのような働きを利用して、脳卒中や脊髄損傷の再生治療に使われています。
例えば、脳卒中で損傷を負ってしまった血管や神経を修復することで、脳卒中の再発予防やリハビリテーション効果の向上が期待できます。
また間葉系幹細胞には肌のハリやツヤを与えているコラーゲンや、ヒアルロン酸を作り出すもととなっている繊維芽細胞を活性化する働きがあるため、美容液やマッサージクリームなどに利用されています。
間葉系幹細胞とES細胞やiPS細胞の違い
ES細胞やiPS細胞は、1つの細胞から全ての細胞や組織を作ることができますが、間葉系幹細胞は分化できる細胞が限定されています。
また間葉系幹細胞は培養すると徐々に増殖能や多分化能が低下しやすいというデメリットがあります。
脂肪由来の間葉系幹細胞は骨髄由来の間葉系幹細胞よりも、増殖能が強く増殖に伴う増殖能低下の影響が小さいことがわかっています。
ES細胞は受精卵からしか得られないので、ES細胞を作るのに受精卵を1個犠牲にしなければいけなくなります。
そのため倫理的な問題を解決しなければES細胞を利用することはできません。
iPS細胞は体細胞から作ることができるため倫理的な問題はありませんが、遺伝子操作をして作り出す細胞であるため、培養に多くの時間と費用がかかります。
また腫瘍化する問題があるため、まだ医療として使うには時間が必要です。
間葉系幹細胞は骨髄や脂肪から採取できるため、ES細胞のように倫理的な問題はありませんし、iPS細胞よりも短時間、低コストで作ることができます。
作りやすさや安全性の高さから間葉系幹細胞は、再生医療や化粧品などさまざまな分野で利用されています。
間葉系幹細胞の治療は多くの人たちの希望となる可能性があります
間葉系幹細胞は、再生医療の未来を切り開く鍵となる存在です。
その主な特徴は、様々な細胞に分化する能力と、安全性が高い点にあります。
現在、間葉系幹細胞を用いた治療は、脊髄損傷や糖尿病、心疾患など、難治性の病気に対して効果が期待されており、治療法の進化が進んでいます。
今後、さらなる研究と治療の実用化が進むことで、より多くの患者がこの技術の恩恵を受けることができるでしょう。
間葉系幹細胞の培養や期待できる効果などについてご紹介しました。
間葉系幹細胞は採取のしやすさや安全性から利用されることが増えていますが、まだ明らかになっていないことも多く更なる研究が必要とされています。
しかし、今は治すことができない病気で苦しんでいる方にとって、希望の細胞となる可能性を秘めています。
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